変形性膝関節症を患っている方の治療法は、大きく分けると、手術による治療と、手術以外の治療とに分けられます。手術による治療は、人工関節と関節鏡視下手術と高位脛骨骨切り術があります。
人工関節(全置換)
人工膝関節は、変形性膝関節症で軟骨がなくなった方に使用します。
具体的には、骨の表面を切り金属をはめ込み(打ち込み)、軟骨のかわりにプラスチック(ポリエチレン)を間に入れる、ことです。
脚はまっすぐになり、歩いてもゴリゴリ音はしなくなり、痛みもなくなります。
切開:1cm程度の創が2ヵ所
ひざの中にカメラ(内視鏡)を入れて行う手術で、関節内を観察しながら、変性した半月板や軟骨、増生した滑膜や骨棘の処理を行います。創(キズ)も小さく、手術後数日で歩行は可能で、早期に社会復帰ができます。ただし、効果の持続性が短い場合もあります。
O脚:術前
O脚:術後2年
骨(脛骨)の形を変えて、O脚を矯正し、内側にかかる負担を軽くする手術。
矯正した骨の部分がくっつくまで2~3ヶ月を必要としますが、重労働やスポーツを含めて活動できるまで回復します。ひざの変形が中等度で内側にとどまっており、40~60才代の方で、日常活動性の比較的高い方が治療の対象となります。
人工関節置換の手術は、骨を切る手術なので、かなり出血(失血)します。しかし、当院では現在(4年間)ひざ関節の人工関節の手術では、輸血や貯血はしません(していません)。
2008年までは、貯血していましたが、トラネキサム酸を使用することにより、術後の出血量が減り、輸血が必要となる貧血は起きなくなりました。
なお術前、貧血のある患者さまでも、輸血が必要になったことはありません。
人工膝関節の手術で皆さんが期待されることは、
1.痛みがなくなる
2.歩けるようになる
3.脚がまっすぐになる
が大切と思っておられますが、もうひとつ、
日常生活で困らないくらいにひざが曲がることも、大切であると考えています。
正座やしゃがみこみはできなくても、自転車に乗ったり、椅子から立ち上がったりするのに、120度余りのひざの曲がりが必要です。皆様に無駄な痛みを感じることなく、120度余りひざが曲がるように、いろいろ工夫しています。
具体的には、ひざを曲げても内側がつっかえたりしないよう、人工関節の置き方に気を配っています。
『gap-balance 法』と言う『靭帯のバランスが取れるように人工関節を置く方法』を取っていますので、曲がらないひざを無理して使うような、無駄な努力は不要です。
また、当院のリハビリテーション科は、長い歴史といろいろなノウハウがあります。
みなさまの期待に応えられるよう、努力してゆきたいと思っています。
入浴はマットを敷くなどして、すべらないようにしてください。浴槽の出入りも、手術をしていない方の足を先にしてください。
トイレは洋式トイレを使ってください。外出先などで和式トイレしかない場合は、人工関節に負担をかけないよう十分注意してください。