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【講演】 脳卒中と早期リハビリ
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豊田 医師 豊田 章宏  中国労災病院 リハビリ科医師

 脳卒中になってしまった。どうなるか。脳に障害が残る。手足が不自由になる。言葉が操れなくなる。 それは障害を受けた脳神経細胞が元に戻らないからである。 しかしリハビリの治療を受けるといくらかは機能が戻ってくる。 それは死んでしまった神経細胞の周りの残った細胞が肩代わりをするからである。 ではいつリハビリをはじめるか。
 実はできるだけ早期にはじめたい。 脳卒中で倒れた患者さんは放っておくと寝たきりの状態になる。 診断が確定して治療が始まって安静による廃用(全身が衰えること)はどんどん進行している。 1週間も動かずに横になっていると、体力は落ちるし、循環機能も悪くなる。運動機能も低下し、 麻痺した手足はだんだん硬くなっていく。ひどい場合は手術しなければならないほど硬直してしまう場合もある。 そうなる前、すなわちICU(救急部)に入院している段階からリハビリをはじめることによって廃用は予防され、 機能の回復が早くなる。実際にそうすることによって入院日数が2週間も短くなっている。 そうして早く退院して近くの病院、あるいは診療所でリハビリを続けることができれば、 社会復帰も早くできるようになる。実はこの病院と病院、病院と診療所といった連絡が従来は弱かった。 この会を通してそういった面が強化されることを私は期待している。 またそうならなければならないと考える。一方、最近では町中を車椅子に乗って買い物をしたり、 移動している姿をよく見掛けるようになった。 われわれ一般の側も、それを受け入れられる社会にすることが大切である。 リハビリといっても最終的には社会の中で生活できないと意味がない。 何も訓練するために生きているわけではないからだ。 福祉で有名なデンマークではノーマリゼイションが重要と言われているが、 これは障害を受けた身体を元に戻すことではなく、それまで行っていた正常な生活に戻すことを示し、 それがリハビリの目的という意味である。
 リ・ハビリを辞書で調べると、「再・矯正教育」とある。 それともうひとつ「再・服を着せる」という考え方もある。 服を着て外へ出ましょう…これがリハビリの本当の目標であると私は考えている。 この会が2回、3回と回を重ねるごとに、そういった地域環境の中心になればと願っている。
講演当時の役職です)

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