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【講演】 脳卒中の予防
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山中 医師 山中 千恵  中国労災病院 脳神経外科医師

「卒中」とは中国の古い言葉で「急に倒れること」を意味する。すなわち脳が原因で急に倒れる病気を「脳卒中」とよんでいる。 この脳卒中はひじょうに恐い病気でできれば予防したい。では、予防するにはどうすればよいか。 それにはまず脳卒中は何が原因で起こるかを知る必要がある。脳卒中で一番多いのは脳の血管の病気、 すなわち脳血管障害である。これを早く見つけて治療すれば脳卒中は予防することができる。 とくに恐いのは動脈硬化で、脳の血管が動脈硬化になっていれば心臓もなっている。 では動脈硬化はなぜ起きるか。ひとつは加齢(年をとること)である。人間の血管もゴムホースと同じで長い間使っていると水垢が溜まったり、 弾力がなくなってひび割れが生じたりする。しかし血管を取り出して水洗いするわけにはいかないし、 「年をとるな」というわけにもいかない。そこで動脈硬化を起こしやすくする危険因子、 すなわち3大成人病と言われている「高血圧症」「糖尿病」「高脂血症」にならないようにする。 都合の悪いことにこれらの成人病は自覚症状がない。だから健康診断を進んで受けて早めに見つけるようにしたい。 そして異常が見つかったら治療を開始することになる。ここで注意したいのは、治療をすると治ったかのように錯覚することで、 薬の服用をやめるとまた元に戻る。否、むしろリバウンド現象といって前よりも悪くなることがある。 ちょうど近眼のひとが眼鏡をかけている間はよく見えるけれども眼鏡を外すと見えにくくなる、それと同じだと考えて頂きたい。
 さて、クモ膜下出血という病気は、動脈瘤という血管のコブがある日突然破裂することで起こる。 これは高血圧とか運動不足には関係がない。不運にも生まれつきそのコブを持っている人が百人中数人いる。 持っていない人には起こらない病気である。このコブがあるかどうかは、脳ドックでしか分からない。 脳ドックで見つかれば未破裂のうちに手術を行える。そうすれば破裂の心配はなくなる。
 脳ドックは脳を集中的に調べる「脳の健康診断」である。対象はあらゆる無症状の脳疾患で、 とくに「未破裂脳動脈瘤」「無症状の脳梗塞」、さらに「無症状の腫瘍」や「痴呆」といったものになる。 また予防医学の見地からも、また医療経済の面からも意義がある。 通常の健康診断と組み合わせれば危険因子も検索でき、心疾患や腎疾患の早期発見にも役立つものである。 できるだけ脳ドックを受けて頂きたいと考えている。
講演当時の役職です)

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