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【講演】 脳卒中と「ことば」の障害
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杉原 療法士 杉原 康義  中国労災病院 言語療法士

 私たちは毎日なにげなく、話し、文字を読み生活しています。  ”もし私が、もしあなたが突然ことばを話せなくなったらどうでしょう?” 話すことのできるありがたさは、失ったとき初めてわかるのかも知れません。
 ことばには、聞く・話すの口頭言語と、読む・書くの文字言語の4つの様式があります。 さらにことばは話を聞くこと・文字を読むことの理解面と、 話しをすること・文字を書くことの表出面の2つの要素があります。 ではこれらは私たちの脳のどの部分で行われているのでしょう?耳や目は単なる受容器で、 口や手は単に実行器にすぎません。では本当にことばの意味を理解し、 生成しているのはどこなのでしょうか。
 私たちの大脳には、理解面の働きを行うウェルニッケ中枢(感覚性言語野)と、 表出面の働きを行うブローカー中枢(運動性言語野)という場所があります。 これらは、言語中枢と言われていますが、この言語中枢の存在が脳卒中後のことばの障害に特徴を与えています。
 脳卒中後の言語障害は、大きく3つに分けられます。@失語症、A麻痺性構音障害、 B全般的精神活動の低下に伴うコミニュケーション障害の3つです。
@失語症は、脳卒中により言語中枢がダメージを受けたときにでる症状です。 感覚性言語野がダメージを受けたときの感覚性失語症は、 ことばの理解が難しくなり何か話をしても口数が多いにも関わらず相手にうまく伝わらない状態になります。 運動性言語野がダメージを受けたときの運動性失語症は、相手の話すことばは比較的よく理解しているけれど、 何かはなそうとしてもことばがでてこない状態になります。 このほかにもいろいろな種類の失語症があります。
A麻痺性構音障害は、脳卒中によるダメージが言語中枢ではなくほかの場所にでて、 口・舌・喉などに麻痺が起こったとき、ことばの明瞭度が落ちる症状でいわゆる呂律困難が起きる状態です。
B精神活動の低下に伴うコミニュケーション障害は、失語症でも麻痺性構音障害でもないのに、 相手が話しをしても聞いていない、何か話そうとしてもうわごとのように話す症状で、 物事に無関心で、生活全般も無気力な状態です。
 脳卒中による言語障害が出た場合、言語療法士による診断・症状に応じた訓練を受けられればいいのですが、 言語療法士の数が足りないのが現状です。
 後遺症を残したとき、家庭に戻ってリハビリばかりでは息が詰まってきます。 生活の中で何か息の抜けることを見つけられればいいと思います。 当院のリハビリ棟には”夢ロード”と名付けた廊下があり、 リハビリ患者さんによる絵画や書などの作品を展示しています。このような趣味を持つことは、 生活の質の向上に役立っていると思います。
 最後に、もし失語症になっても決して一人で・家族だけで悩まないことが大切です。 この脳卒中フォーラムには、医師・保健婦・看護婦・リハビリスタッフなどいろんな相談相手がいます。 このような会を利用して、スタッフの方と知り合いになり気軽に相談できるようになればいいと思います。
講演当時の役職です)
実際にやってみましょう…、はい手を上げて…
すると…一斉に手が上がりました。 これには杉原先生も一瞬のけぞりましたが…
それだけ皆さん真剣に聴いていらっしゃるんです。
はい手を上げて…

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