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【講演】 脳卒中と地域保健
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香川治子 香川 治子  呉市保健所 所長

 “保健所は、どんなことをしているとイメージされますか?”
 10年前、同じ質問をすると多くの方が“犬の予防接種”という答えでした。 それも保健所の仕事の一部ですが、大きな意味で“市民のみなさまの健康づくりのお手伝い” を行っています。呉市長期基本構想が作成され、4つの柱の1つとして “いきいき健康福祉都市を目指します”とあります。これは10年前では考えられなかったことで、 いまや呉市も健康・福祉を抜きにして行政を行えない状況にあります。 呉市は高齢化率が20%になり、地域により23〜24%と4人に1人は高齢者に なりつつあります。私たちは少子高齢化時代をふまえ、地域保健の目標を “健康な個人と社会の創造”とし、単に寿命が延びただけでなくその生活の質が問われる時代だと 考えています。皆様の健康づくりのお手伝いをするのが保健所ですが、 その健康とは単に病気がない状態ではなく、脳卒中になられて、 もし障害が残ってもその人がその人らしくいきいきと自立した生活ができれば それは大きく健康であるととらえています。そして私たちは死ぬまで健康でいることが できるような地域づくりを目指しています。では保健所が脳卒中に対してどのように 関わっているかをお話しします。
 脳卒中になった場合、医療機関から本人・家族の同意のもと、退院時に保健所に連絡が入ります。 連絡を受けると、保健婦がみなさんのお宅に訪問し、介護方法や保健・福祉サービス等について 説明します。そして、どんなサービスを受ければ、在宅で自立した生活がおくられるかを 本人・家族の方と共に考えます。
 医療機関で治療・急性期のリハビリ・回復期のリハビリがすまれて退院された方には、 地域の機能訓練教室を紹介します。機能訓練教室というのは、40歳以上で脳卒中などの病気により 障害が残り、家庭での生活が難しい方に6ヶ月通っていただき生活の自立のための訓練を 行うところです。内容は、生活に必要な動作の訓練・介護機器の相談・健康についての 学習・レクレーション・座談会などです。5ヶ月を過ぎる頃からは今後どう過ごすのか、 また地域のリハビリ教室にどうつなげていくのかなど相談します。 担当は、保健婦・理学療法士・作業療法士ですが、そのほかにも多くのボランティアの方が 関わっています。このボランティアの方々・地域の人たちの支えが、 脳卒中などの病気で障害が残った方が社会参加をするための大きな力になっています。
 呉市には、リハビリ教室が14カ所あります。このリハビリ教室でも障害のある方と 地域の方々との多くの出会いがあり、そこでふれあいが生まれ、そこから地域での 支え合いが生まれます。この14カ所のリハビリ教室はそれぞれ地区の方々の 力添え・支え合いにより特色のあるものになっています。 その他健康教室などで、砂袋の付いたチョッキ・手が動かしにくくしてある手袋・ 見えにくくした眼鏡などをつけてもらい、高齢者の方の疑似体験をしてもらっています。 そして高齢者の方や障害のある方に対してどのようにつきあえばよいのか、 ということを学習してもらっています。
 現在、在宅医療というのは大きな流れであり、誰でも住み慣れた地域で最期を 迎えたいのではないでしょうか。しかし、家族だけの力ではそれは難しい問題です。 地域の人々が障害のある方・高齢者の方とどう共に生きていくかを一人一人が 自分自身のこととして考えられたら、住みよい町になるのではないでしょうか。 そして、保健・医療・福祉・そして地域の連携のもとに、その輪が大きく広がっていけば、 障害を持つこと・年をとることがマイナスイメージではなくなるのではないでしょうか。 保健所ではそれぞれの町がずっと住み続けたいわが町になるように、 これからも地域の皆様に働きかけていきたいと思います。
講演当時の役職です)

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