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【講演】 脳卒中の診断と治療
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西田正博 西田 正博  中国労災病院脳神経外科 医師

 1950〜1995年までの45年間、人口の死亡原因の中で昔は脳卒中が多かったが、 最近では癌や心臓病が増加し脳卒中は第2、第3位の状況である。脳卒中が減少したのは、 情報の発達や高血圧の治療など様々な治療が発達し、 急性期に亡くなる人が少なくなったことが一つにある。 しかし脳や心臓の病気を考えると7割以上の人が脳卒中など血管の病気(障害)で死亡しており、 血管の寿命が人間の寿命に近いといえる。
 脳卒中は血液が脳に流出する脳出血と血管が詰まる脳梗塞に大別され、 各々全く逆の病態が起こることがある。また脳出血は脳内出血とくも膜下出血に、 脳梗塞は動脈硬化によって血管がつまる脳血栓と、心臓からの血栓が脳でつまる脳塞栓に分けられる。
 脳梗塞は小さい毛細血管がつまるラクナ梗塞、動脈硬化によって起こる脳血栓、 心臓からの血栓によって起こる脳塞栓が同じ頻度で起こる。脳梗塞、 脳出血は前ぶれなく発症するが、ごく稀に、一時的に力が入らなくなった、 しびれがあったなど一過性の虚血発作を起こした程度の人なら治療に関して予防的治療が出来る。
 脳卒中の診断に関して以前は脳血管撮影しかなく、手足が動かなくなった、 頭が痛いなど臨床症状で診断をしていた。その為、脳出血と脳梗塞では症状がよく似ていると どちらが起こったかわからない状況で、本来ならば脳出血と脳梗塞とでは 逆の治療を行わなければならないのに、以前は逆になったこともあった。 しかしCT検査の出現により急性期の脳卒中は確実に診断出来るようになり、 最近ではMR検査が発達し、脳の血管撮影をしなくても脳のある程度の血管の病態まで わかるようになってきた。しかしながらCT検査、MR検査は現在何か起こってないかどうか 調べる為の検査で、過去に起こった出血や梗塞のことしかわからない。 その為検査がいくら発達したからといって将来起こりうることを検査する方法は現状ではない。
 脳出血は実際に出血しない限り予め見つけることは出来ない、 その為脳出血の原因である高血圧など基礎的な病気を治療していくことが 脳出血の予防的治療法になる。脳出血の外科手術による治療はあくまでも救命的なものであり 機能の働きまで戻すことは出来ない。
 くも膜下出血は脳の動脈瘤が破れて起こるもので、外科的治療としては 動脈瘤にクリップをかけて破れないように治療を行う。最近ではくも膜下出血の原因である 脳動脈瘤はMR血管検査などで侵襲なく見つけることができ脳血管撮影などにより確定検査を行い 予防的治療(手術)を行うようになってきた。
 脳梗塞は現在CT検査、MR検査などでよく見つかる、 その治療として一部の人は自然に副側血行路を作り脳の血流を保っているが、 それ以外のほとんどの人は手術により人工的に血液を流し脳の血流を保つことが必要になる。
 今後脳卒中の診断と治療にはより非侵襲的な方法が期待される。
講演当時の役職です)

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