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【講演】 脳卒中の豆知識
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山根冠児 山根 冠児  中国労災病院 脳神経外科医師

1、脳卒中とは
脳卒中とは言葉通り考えますと脳の「卒中」ということです。卒中の「卒」とは突然何かが起こるということ、 「中」とはあたると読み、何かに当たるというとを意味します。昔の人は、 我々の周りには「邪気」という目には見えない悪いものがあり、 この邪気にあたって突然半身不随になる病気を卒中気(そっちゅうき)あるいは卒中風(そっちゅうふう)と呼んでいました。 これが現在まで脳卒中の医学用語として残ったと思われます。
2、 病気の歴史(江戸末期まで)
 ここで、日本では病気をどのように考えてきたかについてお話したいと思います。 大昔では、病気は神の為し給う事として恐れられ、祈りとおまじないが主要なものでした。奈良時代になりますと、 中国から仏教と共にインドの「鬼」の概念が伝わり、この鬼にとりつかれると病気になると考えられました。 平安時代になりますと、丹波康頼が、中国から伝わった 「病源候論」 という病気の原因について書かれた本を 「医心方」としてまとめました。この本がその後江戸時代末期まで、わが国の医学の教科書として君臨しました。 すなわち、日本の医学は、幕末まで中国の医学が900年以上も行われていたことになります。 したがって、幕末までのわが国の医学は、中国の医学をみれば、どのようなものであったかが分かると考えられます。 中国の医学は紀元前700年頃、周の時代につくられた「易」から始まります。 易は哲学的な考え方で、宇宙における真の実在はただ一つで、それを「気」と名づけています。 気は常に活動して変化するものとし、この気が変化して陰と陽ができて、陽気の集まるところが天、陰気の集まるところが地とし、 天地の間で、陰陽の二つの気が互いに結合する事により万物が出来上がるという考えです。 易の考えを発展させ、後漢の時代に「傷寒論」、隋の時代に「病原候論」が書かれ、ほぼ中国の医学が確立されました。 それによりますと、病気は、外の気、これには、「寒、風、湿」などの邪悪なる気があり、これが体の中に入り込み、 五臓六腑という重要な臓器に留まることでそれぞれの臓器の病気を引き起こすとしております。 また、体の気が弱ったりしますと、邪気が入り込みやすくなり病気になり易いという事になります。 五臓六腑は「経脈」で繋がり、この経脈の所々に「孔穴」(つぼ)という目には見えない穴があって、 この孔穴から邪気が入り込むと考えられていました。治療としては、孔穴を刺激することにより、 邪気を外に出すことで治そうとする鍼(針)、また、つぼにお灸をして体の気を豊かにすることで病気を治そうとする 「灸」が主流で、その他に、あんま、呼吸療法(気功)などがあったようです。
3、西洋医学の導入
 このように、すべての病は五臓六腑に原因があって、脳に原因がある病気という概念はありませんでした。 しかし、江戸時代末期に蘭学が日本に伝わって、病気の概念が大きく変わってきました。 蘭学の大家である緒方洪庵が「病学通論」を著し、脳に障害を受けると反対側に障害が残る「半身病」という記述をしており、 日本での初めて、脳に原因があって病気を起こす事を記載しております。その後明治時代になると、 急速に西洋の医学が導入され、現在に至っております。西洋医学の特徴は、 目に見えるものを信じるという考えをもとにしたもので、解剖の知識と、科学技術の発展による診断機器の開発によっています。 現在脳外科などで活躍しているCT(シーティー)、MRI(エムアールアイ)などの診断機器は病気の原因を、 あたかも眼に見えるかのように原因を突き止めたいという要求から発展したものです。
4、展望
 将来は今まで眼に見えなかったものを、見えるようにする新しい診断機器が開発されてゆくと考えられます。 また、弱った筋肉を人工筋肉に置き換えたり、脳に障害があっても人工的に手足を動かす研究が進行しています。 また、東洋の医学とのかかわりも考えて行かなくてはならないと思われます。 日本の医療の特色はこの西洋医学と東洋医学の責めぎあいの中にあるのかもしれません。 いずれにしても医療はどんどん発達していきますので、 皆さんもいい「気」を養って長生きをしていただきたければいい事があるに違いないと思います。
講演当時の役職です)

質 疑 応 答
質問回答
会場会場
頭痛を始め色々な自覚症状があるのにCT、MRI、脳波などとってもらいましたが異常なしと言われるのは何故ですか
山根先生山根先生
現在の医療は西洋医学が主流ですので、医者はCTなどの検査で異常がなければ、 たちまちは大丈夫ですとお話することになります。頭痛などはストレス、疲労などが原因でなることがあり、 診断機械などではわからないことが多く、西洋医学の一つの限界と考えられます。


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