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【講演】 糖尿病と脳卒中の危ない関係
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江草 玄士 江草 玄士  中国労災病院 代謝内分泌科

 糖尿病患者は現在日本人の10人に1人で、40歳を過ぎると増加してきます。女性よりも男性の方が糖尿病が多く、60歳を過ぎると男性は5人に1人の割合になります。
 日本人は欧米人に比べインスリン(血糖を下げるホルモン)を分泌する力が弱いにもかかわらず、食生活が西欧化し、運動量は低下したため糖尿病が増加しました。
 糖尿病の恐いところは、合併症(目、腎臓、神経、動脈硬化)を引き起こすことです。日本人の目が見えなくなる原因の第1位は、糖尿病による糖尿病網膜症です。年間6000人位が失明しています。糖尿病のために腎臓が悪くなると、体の中の老廃物を外に出すことが出来なくなり、透析を受けないといけなくなります。1998年には透析患者の割合の1位を糖尿病の患者さんが占めるようになりました。糖尿病になると神経も侵されてしまい、しびれ、痛み、立ちくらみなどがおこってきます。
江草 玄士  糖尿病による合併症の原因は血糖が高いということです。よく言われている三大合併症はすぐに生命が危険にさらされる事はありません。むしろ、糖尿病による動脈硬化が心臓や脳におきた場合、生命に影響を与えます。糖尿病になると、この動脈硬化のスピードが早くなります。そのため糖尿病の患者さんの寿命は短くなります。
糖尿病が原因でおこる脳の病気として主なものは脳梗塞です。糖尿病になると脳卒中になる危険性が男性で3倍、女性で2倍になります。脳卒中を発症しても医療の発達により死亡者は減りましたが、運動障害(半身麻痺など)や、知的傷害(痴呆)をもつ患者さんが増えています。
 糖尿病患者の死亡原因の第1位は癌です。第2位は心臓発作、第3位が脳卒中です。糖尿病が原因で起こる脳卒中の特徴は、脳出血が少なく脳梗塞が多いことです。脳梗塞も死に至るほどではなく小さな血管が詰まる小さな梗塞が多いのです。小さな梗塞のため、運動障害をおこすほどではなく、知的傷害をおこすことが多いのです。
糖尿病になると、肥満、高血圧、高コレステロール、高血糖など動脈硬化を進行させる原因を重ねて持ちやすくなります。最近では肥満の脂肪から血を固まらせる物質が作られている事が解ってきました。
 糖尿病による脳卒中にならないためには、まず糖尿病のコントロールをすることです。これは血糖だけを下げる事ではなく、血圧、コレステロール、中性脂肪、体重全てをコントロールしないといけません。また、水分を取り塩分を控え魚中心の食事にし、血液を固まりにくくすることです。煙草やお酒も適量にすることです。
感謝状授与  脳卒中の再発防止のためには、糖尿病のコントロールを厳しく行う事と、定期的に通院することが必要です。 具体的には、HbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)が7.5%以下。空腹時血糖が120mg/dl以下。コレステロールが200mg/dl以下。中性脂肪が150mg/dl以下。善玉コレステロールが40mg/dl以上が目標です。血圧は上が130mmHg下が85mmHgをまず目指します。体重は身長(m)×身長(m)×22が理想です。
 糖尿病で一番大切な事は、血糖値のみに目をとらわれず、体重、血圧、脂質全てをコントロールして動脈硬化を防ぐ事なのです。
講演当時の役職です)

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