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【講演】 脳卒中と高血圧
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藤井秀昭 中国労災病院循環器科 藤井秀昭

 日本では、約3000万人が高血圧と言われています。高血圧は自覚症状のほとんどない病気で、 静かなる殺し屋(サイレント・キラー)とも呼ばれ、高血圧の状態を放っておくと、心臓、血管に負担がかかり、 知らない間に脳卒中や心臓病(虚血性心疾患)が忍び寄ってくるのです。
 実際に血圧レベルが、高くなればなるほど、脳卒中や虚血性心疾患など致命的な心血管系疾患になる率が高くなります。 収縮期高血圧(上の血圧が高いこと)があると、その危険性は正常血圧に比べ脳出血で3.3倍、脳梗塞2.1倍、心筋梗塞4.4倍。 拡張期高血圧(下の血圧が高いこと)では、脳出血9倍、脳梗塞4.8倍になると言われています。
 高血圧と脳卒中・心臓病を結びつけているのは動脈硬化です。血管の壁は本来弾力性があるのですが、 高血圧の状態が続くと血管はいつも張りつめた状態におかれ、次第に厚ぼったく、しかも硬くなります。
そして、一部では脂肪やカルシウムが付着し、血液の流れを悪くします。これが高血圧による動脈硬化で、大血管にも、小血管にも起こり、 心血管系疾患の原因となります。したがって、こうした合併症を予防するためには、高血圧にならないように注意し、 既に高血圧の人は血圧を正常化することが必要なのです。
 動脈硬化を進行させる危険因子には、高血圧だけでなく、様々なものがあります。 加齢、男性や遺伝などはコントロール不可能な危険因子ですが、修正が可能な可変因子として、高血圧症、高脂血症、喫煙、 肥満それに糖尿病などがあります。喫煙は血管を収縮させ、一時的に血圧が上がるばかりでなく、血液の流れを悪くし、 血液が凝固しやすくなり、動脈硬化の原因となるわけです。これらの危険因子の重なりは動脈硬化の進展をますます加速させます。 ですから、高血圧の人は喫煙や肥満の是正などが望ましいのです。
 血圧は時々刻々変動しているものであり、1日のうちでも昼間に高く、夜間に低いという血圧変動があります。 そのほかに、精神的な緊張や運動・入浴・排便・食事などの身体的活動により短期的に絶えず血圧は変動しています。 診察室での血圧が高く、診察室以外の日常生活では正常血圧を示す病態を白衣高血圧(診察室高血圧)といいます。 最近では我々は診察室での血圧だけでなく、携帯型自動血圧計を使った24時間血圧や家庭血圧などを参考に高血圧患者の診療を行っています。 家庭血圧は同じ時間帯に、5〜10分位安静にし、リラックスした状態で測ることが望ましいです。
 高血圧の治療では、薬物治療だけでなく生活習慣の修正が非常に大事になります。 下記に示す生活習慣の修正はそれ自体で血圧を下げる効果が認められるだけでなく、降圧薬の作用を増強させる効果があります。

1) 食塩制限7g/日以下。
2) 適正体重の維持。
3) アルコール制限:エタノール20から30g/日(日本酒1合)以下、女性は10から20g/日以下。
4) コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。
5) 運動療法(有酸素運動)。
6) 禁煙。

 高血圧の人で、脳卒中にならないために、また不幸にも脳卒中になった人で再発しないために、 薬物治療とともにこのような生活習慣の修正を根気よくやっていくことが必要と考えます。
講演当時の役職です)

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