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【講演】 脳卒中治療の最前線
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島 健 島 健  中国労災病院副院長 脳神経外科

 脳卒中の危険因子、つまり高血圧、糖尿病、高脂血漿などの有所見率が年々増加しているということがいわれています。 頭の血管の病気と心臓の病気は非常によく似ています。当院のデータでみても頭の病気のうちに危険因子を持っている割合は、かなり高い。 脳血管障害の人で、心疾患など心臓の方も調子が悪い方が約20%、逆に心臓を患っている方のうちに頭の病気を持つ方もほぼ同率でした。 どちらも同じ血管系ということで同じ既往歴をもっていますし、危険因子を共有していることも多いことがわかりました。 我々は勤労者医療をメインとして診療を行っていますが、このような基礎データが突然死や過労死を防ぐためにも非常に重要なデータになるわけです。
 脳卒中は脳出血と脳梗塞に大きく分けられます。脳出血にもいろいろなタイプがありますが、成人に多いくも膜下出血はいまだに致命的になる病気です。 動脈瘤が3cm以上の大きさですと、高率に破裂し出血をおこします。致命的になるということで未破裂の動脈瘤を出来るだけ早く発見し、 クリップをかけるという脳外科手術を行うことが重要になってきます。 破裂した動脈瘤は一生懸命われわれが治療しても4割くらいしか助からないという厳しい現実があります。
 脳梗塞には時々手がしびれる、箸が落ちるといった一過性の虚血から、大きな脳血栓、それから最近非常に増えてきている、 心臓が悪い人で塞栓が頭に飛んで突然発症する重篤な脳塞栓症があります。 TIA という一過性の虚血も何回も起こしていると、完全な完成型の脳梗塞になるということです。 手がしびれるといった一過性の脱力発作でもMRIなどの精密検査をうけると、意外に大きな血管が狭くなっていたり、 非常に微細な血管の病変も察知できますので、早い時期に診断を受けることが大切です。 早期発見、早期治療のためにも脳ドックの重要性がさけばれています。
 診断には各疾患に何が威力を発揮するか?出血に関してはCTスキャンをとると白く描出され、一目瞭然ですし、 閉塞に関してはMRIやDSA(血管撮影のことで、手術を対象とした人が入院後にやる検査のこと)ですが、 まずはスクリーニングとして必須である頸動脈の超音波検査が必要です。脳血流検査もありますがどちらも痛くない検査です。
 では、いかに早く治療するか?今やっと厚生労働省も取り組みつつあります。脳塞栓であれば3時間、脳血栓であれば、 できるだけ早く患者さまを専門病院に搬送すること。当院でも今年4月からヘリコプターによる搬送を積極的に行っており、 運ばれてくる患者数も年々増えています。また、脳外科の専門の先生がいらっしゃらない病院と電話回線をつないで、 治療を助ける画像の電送システムも行っています。
 ストロークユニットという言葉があります。これは、医者だけでなく看護師、コメデイカルの人達が一体となって脳卒中を治療することで、 この数年、チーム医療として取り組んでいます。当院の特色としては、中枢神経の分る専門の脳外科医がリハビリテーションを行い、 早期リハビリを開始することなどでいろいろな面において脳卒中治療の成績が上がっています。
 この会のように、地元の皆様と共に啓蒙活動を行い勉強会をすることも必要ですが、やはり私自身、最前線の知識を習得し、 またそれを地域の皆様に還元できればと思い、日夜努力しているつもりです。
講演当時の役職です)

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