トップページへ
【講演】 くすりの話
トップページ第8回講演会>【講演】くすりの話

面田 恵 面田 恵  中国労災病院 薬剤部

 現在、医療の進歩とともに、多種多様のくすりが開発され繁用されています。また、その使用方法も複雑化し、 注意を必要とする薬剤も少なくありません。そこで今回、薬剤師の立場から、病気の治療・予防に必要なくすりを、 より理解し効果的に服用していただくために、簡単にくすりの説明をします。

くすりの一生
 くすりがひとの体に入ったあとどうなるかを、みなさんはご存知でしょうか。一番なじみのある、飲み薬を例にとり簡単に説明します。 服用したくすりは、胃の中でばらばらに溶けます。( ここで注意していただきたいのが、コップ一杯の水です。 十分な水がありませんと、くすりは溶けません。また水の量がすくないと、消化管・胃壁にくっついて、消化管障害、 消化管のただれ等を引き起こします。必ず、コップ一杯の水で服用して下さい)。胃でばらばらに溶けたくすりは、 ほとんどが十二指腸で体の中に吸収されます。吸収されたくすりは、肝臓に運ばれ、そのほとんどが肝臓で分解し、 くすりとしての効果を発揮できる状態に変わります。次に分解されたくすりは血液中に運ばれ、くすりとしての力を発揮し、 全身をめぐります。やがて、病気の治療・予防の役目を果たしたくすりは、腎臓に集まり、尿の中にまじり体の外へでます。 またあるものは肝臓を経由して、便の中にまじり体の外へ出ます。
 以上、くすりの一生を説明しました。

薬効( くすりのききめ) に変動をもたらす諸要因
 まず、患者様の病態、腎臓・肝臓のはたらきに違いがあります。また、食事形態の違い等があります。 さらに剤形(くすりの種類)・投与方法・併用薬剤等様々です。これらの要因により、体の中でのくすりの動き、 濃度の変化等により、くすりの効果がまったく違ってきます。ひとそれぞれに違いがあるということです。
 ここで薬剤師からの提言です。
★ 絶対に「良く効いたから」といって他の人とくすりのやりとりはしないで下さい。

脳神経外科でよく使われるくすり
(1) けいれんを予防するくすり
 一般的にこのくすりは、けいれんを起こしそうな、あるいは起こした患者様に予防目的で処方されます。 また脳神経外科での手術後には、予防目的に加え、脳神経細胞保護目的で処方されておりますので、手術後「私はけいれんが起こるんだ」との心配はいりません。 しかし、予防薬だからといえ、大変重要なくすりですので処方の際には、かならず継続的な服用をお願いします。 またけいれんを予防するくすりに限らず、すべてのくすりには「治療効果を発揮できない無効域」、「安全で、効果的に治療を継続する有効域」、 「くすりの効果が必要量をこえた中毒域」が存在します。くすりの用法・用量をかならず守って有効域を維持しましょう。
(2) 血液に作用するくすり
 まず血液の流れを減少、または止めてしまう血栓のできるしくみを簡単に説明します。血液の成分には、赤血球や血小板等があります。 血管の内側に傷ができますと、そこに血小板がくっつきます。さらに赤血球がくっつき、血栓ができます。 これが原因で、血液の流れが悪くなったり、血管がつまってしまうことがあります。このようなことが起こらないように処方されるのが、 血液に作用するくすりです。
 ここで、血液に作用する代表的なくすりについて簡単に説明します。
 まず抗血小板薬( パナルジン・バファリン81等)、このくすりは血小板の働きを抑えて血栓をできにくくします。 つぎに抗凝固薬( ワーファリン等)、このくすりは、血小板の塊を作る成分の働きを抑えて血液を固まりにくくします。 それでは血液に作用するくすりの、代表的な、注意する症状・食事の影響・服用にあたる注意点を説明します。
 はじめにパナルジンの服用にあたって注意する症状を説明します。
 まず熱がでる・のどが痛む、といったかぜのような症状。つぎに強い疲労感を感じる・意識が低下するといった気分の悪い症状。 また尿が茶色っぽくなる、尿に血液が混じる、鼻や歯茎から出血するといった症状。さらに皮膚や眼が黄色くなる・あざができるといった症状に注意してください。 このような症状は、くすりを服用している皆さんすべてに現れるものではありませんが症状が出た場合にはできるだけはやく医師に相談して下さい。 また、主治医が定期的に血液検査等を行い、患者様の症状を観察していますのでご安心ください。さらに、説明した症状は服用開始2 ・3 ヶ月で現れることが多く、 半年をすぎれば問題はないと思います。
 つぎに、ワーファリンの服用にあたって注意する食事について説明します。
 ワーファリンを飲まれている患者様は、多少食事を制限して頂く必要があります。納豆やクロレラ・青汁にはこのくすりの働きを弱めるビタミンK が多くふくまれています。 さらに納豆の場合、納豆菌がおなかの中でビタミンK をつくる可能性がありますので、納豆やクロレラ・青汁は食べたり飲んだりしないでください。 また、緑黄色野菜は一時的に大量の摂取はしないで下さい。
 ワンポイントアドバイスとしまして、緑黄色野菜をまったく食べないことは栄養上よくありませんので、緑色の野菜などは毎日一定量食べるようにし、 一時的にたくさん食べることは避けてください。
 つづいて、バファリン81 の服用にあたって注意する点について説明します。
 商品名バファリン81 の成分名はアスピリンです。また皆さんもご存じかと思いますが、解熱鎮痛剤: 商品名バファリンの成分もアスピリンです。 しかし、バファリン81 は一錠中81 r。一方、バファリンは一錠中330 rと、入っている成分の量がまったく違います。ここでアスピリンの血液に対する働きについてお話します。 アスピリンは少量では、血小板凝集抑制( 血液の流れを改善) に働き、量が多くなると血小板凝集作用を示します。 このように同じくすりでもまったく逆の効果を示します。みなさんには血液の流れを改善する目的で処方されていますので、 その治療の目的を理解され、一般の薬局等で購入されるくすりの成分にはご注意下さい。薬局でくすりを購入の際には薬局の薬剤師に相談していただければよいかと思います。
 以上、血液に作用するくすりに限らず、くすりには様々な注意点が存在します。注意点を正しく理解し、病気の再発を予防しましょう。
(3) 血圧を調節するくすり
 ひとの血圧調整をつかさどる生理機能は多様に存在します。これにより、現在、多種多様のくすりが開発され、 患者様の症状にあわせたくすりが処方され治療が行われています。血圧を下げるくすりには、AU 受容体拮抗薬・ACE 阻害薬・利尿薬・β遮断薬・Ca 拮抗薬・α遮断薬、 とその作用機序によって大きく6 つに分けることが出来ます。またくすりの種類はCa 拮抗薬を例にとりますと、商品名アダラート、 皆様もご存じの方がいらっしゃると思います。しかし、アダラートの中で自分が服用されている剤形を正確に覚えていらっしゃる方となると、 少なくなると思います。まず1 日3 回の服用を必要とするアダラートカプセル5 r・10 r、中間型のアダラートL錠10 r・20 r、 1 日1 回の服用でよい、持続型のアダラートCR 錠10 r・20 r・40 r、アダラートだけでも7 種類になります。 さらに現在日本で服用されているCa 拮抗薬は成分名6 品目、商品名で49 品目、商品数では121 品目にのぼります。 くすりには同じ成分でも商品名・くすりの量の違うものがたくさんありますので、自己防衛のためにも、 現在服用中のくすりの名前だけでなく、規格も確認し、覚えていただくのが良いと思います。 血圧を調節するくすりに限らず、多種多様のくすりが開発され処方されています。複数の病院におかかりの方は特に、 現在服用中のくすりを医師・薬剤師に遠慮なくご相談下さい。
 以上、くすりの継続的な服用の必要性と、くすりの注意点のご理解、また、服用中のくすりに関する相談の必要性を説明しました。 確かで有効な治療を受けるためにも、患者様ご自身正しい理解をもって、治療に参加して頂くことが大切かと思います。
 最後に、くすりに関する不安・ご心配等ございましたら、なんなりと、医師・薬剤師に御相談下さい。
講演当時の役職です)

Copyright(c) 2005 Stroke Forum All Rights reserved