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【講演】 地域リハビリテーションについて
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豊田 章宏 豊田 章宏  中国労災病院リハビリテーション科

 これは平成11 年度のデータですが、わが国では年間約23 万4000 の人が脳卒中に罹っておられます。 その方たちが1 年後にどうなっているかと申しますと、約20% の方はほとんど元の状態にまで回復され、 30% の方は日常生活レベルでは何とか自立されています。残りの約30% の方は障害のために何らかの支障を生じており、 20% の方は亡くなっておられます。ほとんど元通りに回復または死亡以外の方々、 つまり脳卒中の1 年後には約60% の方々が何らかの支援なり介護を必要としていることになります。 すなわち介護保険の対象となるところです。
 これに対して、地域リハビリテーション広域支援センター事業というものがあります。 皆さんも健康21 とかヤングオールドとかいう、要は健康で長生きしましょうという、国のキャンペーンを耳にされたことがあると思います。 その一環として、都道府県が事業主体となり、疾病の予防から介護まで地域のリハビリテーションレベルの向上を支援しようという事業です。 まず、都道府県毎に事業内容を総括検討する協議会があり、その中心となるセンターが設置されています。 広島県の場合、本来は広島県立のリハビリテーションセンターが行なうべきとも思いますが、公立みつぎ総合病院がそのセンターになっております。 そしてこの下部組織として広島県では8 つある二次医療圏毎に広域支援センターが設置されているわけです。 われわれの呉医療圏には呉市および東側は安芸津町、北側は郷原町、南は江能三町を含む島諸部が含まれますが、 この地域に関しては中国労災病院がセンターになっています。
 では、このセンターは一体どういったことをするのでしょうか。その地域において医療や福祉に携わる人達のリハビリに関するレベルを向上させ、 住民の皆さまに何らかの形で還元しようという事業です。現在、厚生労働省が思い描いている老人医療および福祉の式図を説明いたします。 まず、元気な方は健康を維持してもらうように健康増進事業の対象となります。しかし、例えば脳卒中を発症したとしますと、 まずは病院で治療を受けることになります。病院は急性期、回復期それから慢性期を受け持つ病院に分けられ、 医療保険で対応する治療が済んだら、今度は在宅で介護保険というシステムに移行します。 そして、さらに元気になったら、今度は健康を維持することが中心となりますので、全く病気になっていない健康なお年寄りも含めて健康増進事業の対象となるわけです。 しかし、現実問題として、このへんの区別自体が皆さまにも分かりにくいところだと思います。保険の区別だけでなく、 一体どこでそれを受ければ良いのかが全くわかりません。病院なのか、市町村の保健センターなのか、老人保健施設なのか、 皆さんも分かりにくいと思います。実はわれわれにも非常に分かりにくいのが現状なのです。しかし、 誰がやるべきなのかという議論を言い出しますと、さきほどあった、県の事業であれば県立でやるべきだとか、 きりがありません。もう誰がやるべきという議論はやめて、地域でみんなで出来るところで分担していこうという話をしていかないとこの事業は進まないだろうと思います。 介護保険という複雑なシステムもあります。世の中はどんどん在宅医療の方向に流れていっています。 是非皆さん自身が賢い利用者さんになって頂いて、どういったサービスがあって、自分の病気がどういう状況にあるのか、 それをしっかり理解したうえで、どこと相談すればいいのか考えていくべき時期に来たのではないでしょうか。
 使う人が使わなければ施設は増えていきません。利用者があってこそサービスの提供も厚くなっていきますので、 是非皆さまご自身も今日のような機会を通して、脳卒中や医療制度についてよく知り、いかにしてこれと戦っていくかを考えてみて下さい。 なってしまってからでは遅いと思いますが、一方ではなってからでも未来はあると思います。そこをどう考えるか、 これからのわれわれみんなの課題であると思っております。
 この会がどうかそういったことで意義を持って続いていきますように、皆さんにもご支援をいただきたいと思っております。今日は本当にありがとうございました。
講演当時の役職です)

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