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【講演】 在宅医療:訪問看護の現場から
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吉永 由美子 吉永 由美子  広島県看護協会訪問看護ステーション「そよかぜ」看護師

1. はじめに
 介護保険が始まり「訪問看護」という言葉をよく耳にするようになったと思いますが、実際にどんな事をするのかについては、 よくご存知ない方も多いと思います。そこで今回は脳卒中後遺症のある利用者さんに、訪問看護ではどんなサービスを行っているかについてお話します。

2. 訪問看護の主な内容
 訪問看護とは、在宅で療養されている方のご自宅に看護師がお伺いし、住み慣れたご自宅での療養生活をおひとりおひとりの状況に合わせてサポートすることです。
1)「日常生活の看護」
(1)全身状態の観察。体温や血圧などを測ったりして体の異常の早期発見をします。(2)栄養・食事摂取のケア。 脳卒中後遺症のある方は食事を飲み込みにくいことがあるので、状態に応じて、柔らかいものやドロドロ状のものをお勧めしています。 お茶や水などの液体の飲み物は誤嚥しやすいのでトロミ剤を使ってゼリー状にすると飲み込みやすくなります。 また、食欲がない方には、栄養補助食品を紹介させていただくこともあります。【事例1 】A さんは食事をほとんど摂らず、 毎日点滴をしていましたが、家族の意向により口からの食事を続けることにしました。その間、本人や家族、医師、看護師が何度も話し合いを重ね、 ミキサーを使った料理を工夫したり、栄養補助食品を利用したりする内にA さんは少しずつ食事量が増え、 点滴の必要がなくなりました。今では家の人が「身体を動かすとき前より重く感じる」と喜んでおられます。 (3)排泄のケア。排泄のお手伝いや方法を家の人に教えたりします。便秘や下痢の方の排泄コントロールもします。 (4)清潔のケア。お風呂の介助や身体を拭いたり、髪や手足を洗ったりします。誤嚥性肺炎を起こす危険性のある方には口の中のケアもします。
2)「リハビリテーション」
(1)日常動作の訓練・指導。脳卒中後遺症のある人は身体が思うように動かせないことが多く、生活に不便を感じておられると思います。 そこで、現在動く方の手や足を使って、できるだけご自分の力で生活が行えるように手順や方法を工夫し、練習します。 (2)関節拘縮の予防・訓練。看護師が手を添えて手や足の関節を動かしたり、普段でもご自分でできるリハビリを指導します。 (3)機能訓練・指導。手や足の運動、スムーズに言葉を話すための言語訓練、食事の飲み込みを良くするための嚥下訓練なども行っています。 【事例2 】B さんは初め、家の中を歩く事さえ難しく、杖や人の手を頼りに、もう一方の手で手すりや壁を伝ってやっと部屋の中を移動していましたが、 毎回訪問時にリハビリを行い、ご自分でも毎日手や足を動かして努力され、3 年程かかりましたが、今ではご自分で手すりを持って階段を下りられるようになりました。 最近では以前は嫌がってたデイケアを利用するようになり、外部の人との交流が広がり、表情が明るくなりました。
3)「住宅環境の整備」
(1)療養環境の整備。ご自宅で療養されるのに必要な物を揃えたり、介護に便利なように整頓したりといったことをご本人やご家族の方と相談しながら行います。 (2)福祉機器の選定・相談。ベットやマットレス、歩行器、トイレ入浴関連用具などその方にはどんな物が良いか相談にのります。 (3)住宅改修の相談。危険と思われる段差や手すりの位置などの相談にのります。これらは介護保険制度のケアマネージャーの役割と重複するところもありますが、 看護師としての立場からアドバイスさせていただきます。
4)「医療的処置・管理」
(1)床ずれ・傷の処置。床ずれや傷がある場合には手当てをします。床ずれの予防をするために身体の向きを変えたり、 クッションを使ったり、エアーマットをお勧めすることもあります。(2)その他医師の指示による処置・管理など。 医師の指示により、点滴や注射をしたり、胃ろうの管理指導など医療的な処置をします。
5)「介護者の相談」
(1)介護に関する悩み相談。介護をなさっている方は腰痛、腱鞘炎などに悩まされることが多く、また、一生懸命やっているのにうまくいかない、 といった悩みなどに対して、介護のコツをお教えしたり、介護用品を紹介したりしています。(2)不安やストレスの相談。 この先どうなるかわからない、自分の時間が持てない、といった不安やストレスをかかえたままでは良い介護はできません。 そういった方の訴えに耳を傾け、相談にのります。(3)介護用品の相談。介護を続けていく上で必要と思われる物、 あると便利だと思われる物の紹介をします。場合によってはケアマネージャーと連絡をとり合います。

3. かかりつけ医との連携
 訪問看護はかかりつけ医との密接な連携のもとに、医学的管理に基づいたサービスを提供し、症状や日常生活障害の改善または維持を支援しています。 訪問看護師が医師に利用者さんの状態報告や相談をし、医師からも状態報告や見解、指示があります。また、急変時には直ちに駆けつけ、 処置をしたり、医師に連絡をとったりします。夜間、休日でもかかりつけ医にすぐに連絡がとれるように体制ができています。
 このように訪問看護は、病院を退院された利用者さんがご自宅で安心して療養していただけるよう、活動しています。 そして、今後ますます在宅で過ごされる方が増えると思われますが、皆様の多様なニーズにお答えできるよう、私たちも日々研鑚を積んでいるところです。
講演当時の役職です)

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