【講演】
脳卒中の予防と対処法 〜地域住民と看護学生によるショート・ドラマから得られたこと〜 |
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松井 英俊 呉大学看護学部 今回、はじめて脳卒中フォーラムに参加させていただきました。呉大学看護学部で成人看護学を教えている松井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 さて、私が脳卒中に関わるようになったのは13年前に遡ります。県立広島病院で看護師として勤務したのが脳神経外科でした。当時は、脳卒中や交通事故による脳の外傷や脳腫瘍など脳神経疾患に関しての看護を実践していました。 患者さんが、救急車で運ばれた緊急を要する時から病気によって起こってしまった機能を回復させるためのリハビリ、そして退院までのトータルな関わりについて患者さん御本人や家族の方々とともに脳の病気と闘ってきました。 そうした脳疾患全般にわたる経験から現在の仕事についているわけですが、私が常に思っているのが、もうこれ以上、脳卒中を増やしてはいけない。たとえ脳卒中に罷ったとしても後遺症に悩まされないようにしていくにはどうしたらいいのかを考えていくと、 次の3点が重要なポイントだと考えています。まず、〔予防すること〕次に、〔脳卒中かな?と思うような症状を知っておくこと〕さらには〔脳卒中のような症状が起こったらどうしたらいい〕という対処法。この3点が重要なポイントだと思っています。 以下は、その3点について述べていきたいと思います。さらに、地域住民の方々のための生涯教育としての呉エクステンション(呉大学阿賀キャンパス主催)に参加された方からの住民アンケートによる脳卒中に関するアンケート調査結果を述べたいと思います。 T.脳卒中の予防法: (1)飲酒、タバコ、塩分、動物性タンパク質の摂取 (2)糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満 お酒は、出血性の脳卒中の場合は飲酒量との関係があるといわれてます。また、一方では虚血性の脳梗塞はお酒を飲まない人に比べると、少量の飲酒者は低くなり、大量の飲酒者は高くなっており、お酒は危険因子であるといわれています。 次に、タバコですが、日本では男性の一日に吸う20本以上の喫煙が脳梗塞の危険因子であるといわれています。喫煙本数が多いと危険率も高くなり、禁煙すると危険率も低下するとされています。 塩分については、生活習慣病である高血圧の予防が最も大切で、日本人の食塩摂取量は13〜14g/日ですが7g/日を目標とするのが良いといわれています。そうした生活習慣病の改善が必要となる疾患には糖尿病、高脂血症の発症を予防することです。 食事療法では、三大栄養素の配分を適切に保ちながら摂取するカロリーをコントロールしていくこと、さらには運動療法も加えて肥満を防ぐことで生活習慣病の予防を推進して脳卒中の危険因子を取り除いていきましょう。 U.とっさのときの対処法: (1)おかしいな?と思ったらすぐ119番 脳卒中が起こる前にはなんらかの前ぶれがあります。脳卒中はまず、「脳卒中じゃないか?」と疑うことが重要で、米国の脳卒中協会などでは、次の5つの症状が早期発見の鍵であるといわれています。
このような、「脳卒中を予防すること」「脳卒中を早期に発見すること」「迅速な対応をすること」この3つの柱がブレインアタックキャンペーンとも呼ばれ「脳卒中を制圧しよう」と強調されています。 皆さんはいかがですか?次のような症状がありませんでしたか?
(2)日頃から気になる人は、 “そうなったとき連絡表”を作っておく もし、脳卒中と思われる症状がでたら、
V.脳卒中について「知っている」ことを一般の人に聞きました。 (1)呉大学で救命救急講習会を受ける前の一般の方に聞きました。男女合わせて18名 (2)呉大学で行われている2級ヘルパー講習会の終了後の方に聞きました。男女合わせて20名 合計で38名の方にアンケート調査を実施しました。
W.脳卒中が起こったときのシミュレーションをショートドラマ化しての体験。 救命救急講習会で地域住民と看護学生によるショートドラマを行いました。それにより受講者からは、「脳卒中の救急対応の演習はわかりやすかった」という意見がありました。 わかりやすかった理由として「実際に演じて印象に残った」「自分たちが演じることで実感が持てた」「身近にありえる場面設定だった」「グループでの話し合いや発表の場が持てて楽しかった」という感想が聞かれました。 実際の場面を設定して体験することで、本当にこうなったらどうしようとか、なったときにこうすればいいのかなど、「脳卒中救急対応で学んだことは、 今後の生活に役に立つと思う」「一度考えたから、いざというときに思い出しそう!」という現実に直視した感想が述べられていました。 さらに、「ショートドラマの発表が特徴的な事例でよくわかった!」「シミュレーションができていると落ち着いて行動できそう!」 「脳卒中の知識が身についた!」「家族や近所の人が倒れたときにも応用できそう!」という積極的な意見も聞かれ関心の高さが伺えました。 このような実際に起こった体験を自分の身体で表現してみることで、脳卒中になった人の気持ちやとっさのときの対応について考えることが出来たようでした。 今後の課題としては、ショートドラマでの体験を活かすことがあったのか、その結果はどうだったのかを追跡調査を行う価値があると考えます。 脳卒中は、「まず予防から!」を合言葉に、日本脳卒中協会は脳卒中に関する1。か条を謳っています。いま一度、声に出して読んでみて下さい。 そして、徐々に10か条がクリアできるようにして“さらば脳卒中!来たれ健康!”をめざして脳卒中制圧に一緒に取り組んでいきましょう。 脳卒中予防10か条(社団法人 日本脳卒中協会)
脳卒中は、さまざまな危険因子が組み合わさって発症します。発症する前に 危険因子をいかに早く見つけるかが重要です。日常生活の生活習慣を見直すことも重要です。 脳卒中の危険因子が見つかったら、なるべく遠ざけましょう。脳卒中を制圧しましょう。ブレインアタック! お知らせ 阿賀地区では現在、脳卒中予防と対処法について出前講座を行っております。ご要望があれば脳卒中予防ビデオと脳卒中にならないための講座、 そして、呉大学看護学部の学生による“脳卒中緊急時の対処法”について実演とショートドラマを行っています。阿賀地区以外でも、依頼があれば日程調整をして出かけていきます。 |
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