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【講演】 この先どうなる?日本の介護
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菅田耕一 先生 菅田 耕一  呉医師会 総合介護センター担当理事

 介護保険制度が始まって5年が経過しました。5年毎に見直す制度ですので、来年4月には、大幅な改訂が予定されています。 まだ決まっていない事も沢山ありますが、私が知っている限りで、来年の介護保険制度改定についてお話しさせていただきます。

 介護保険制度は、高齢化の進展こよる要介護高齢者の増加や、核家族化などの家族の状況の変化などを理由に、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして、2000年4月から創設されました。 自立支援、利用者主権などがこの制度の特徴です。

 しかしこの5年間でさまざまな状況の変化が起こってきました。まず要介護認定者数は5年間で、218万人から424万人へとほぼ倍増いたしました。 施設利用者数には限度がありますので、その大部分は在宅サービス利用者です。人数が増えれば費用も増加します。5年間で介護保険の総費用は、3.6兆円から6.7兆円へと増加し、1号保険料も月額2911円から4300円に増える予定です。

 では、これからの高齢者像はどうなるのかというと、2015年には団塊の世代が高齢期に到達し、2025年には高齢者人口はピークになります。 高齢者の独居世帯、高齢者夫婦のみの世帯は増加し、認知症高齢者も増加すると言われております。そこで、今回10年後、20年後を見据えた未来志向の改革が行われようとしている訳です。 その手始めとして今年10月から、介護施設利用者の食費・居住費が利用者負担になりました。厚生労働省は、欧米では、以前から有料であると言っていますが、低所得者への対応には差があると思います。

 さらにいくつか、介護保険施行後見えてきた課題が上げられています。まず課題の1は、死亡の原因疾患と生活機能低下の原因疾患は異なるということです。 65歳以上の死亡原因では悪性新生物が第1位ですが、要介護の原因の第1位は脳血管疾患です。

 課題の2は、軽度の要介護者が急増していることです。要介護2〜5の認定者が45〜62%しか増加していないのに比べ、要支援が122%、要介護1が137%と、軽度の認定者が急増しています。

 課題の3は、介護予防の効果が上がっていないことです。つくられた歩行不能、つくられた家事不能を予防することが重要と言われています。現在、要支援者に要介護者と同じメニューの給付がなされていることが、問題とされております。

 課題の4は、高齢者の状態像に応じた適切なアプローチが必要であるということです。ここで、国は3つのモデルに応じた対策が必要と言っています。

 1つは急性に生活横能が低下する脳卒中モデル、1つは徐々に生活機能が低下する廃用症候群モデル、もう1つが認知症モデルです。 脳卒中モデルでは、発症前から健康増進、生活機能低下予防に努め、発症後も継続したリハビリを行うことにより、生活機能の低下がかなり抑えられるだろうということです。 廃用症候群でも持続したリハビリにより、生活機能の改善が望めると考えられています。

 それでは、今回の改定で具体的にどのような見直しが行われるのかについてご説明いたします。 給付の重点化・効率化、新たなサービス体系の確立、サービスの質の確保・向上、負担の在り方の見直し、制度運営の見直しなどが予定されております。 介護予防への転換が図られようとしておりますが、特に強化すべき分野とされているのが、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能向上、認知症予防、うつ予防、閉じこもり予防の6点です。

 まず制度自体がどのように改定されるかですが、予防重視型システムヘの転換が行われ、従来の介護給付だけでなく、新予防給付が新しく創設されます。 この新予防給付では介護予防ケアマネジメント、現行サービスの見直しと、新たなサービスの導入が行われる予定です。新予防給付を受ける高齢者は、認定審査会で認定されます。 従来の介護保険では要支援と要介護1〜5の6段階でしたが、要介護1の方が要介護1(従来の介護給付を受ける)と要支援2に分けられ、従来の要支援が要支援1に変わり、この要支援1と2の方が新予防給付を受けることになります。 6段階が7段階になる訳です。

 介護予防のメニューとしては、従来のサービスも受けられますが、その内容・提供方法が見直され、筋力向上、栄養改善、口腔機能向上の目的で新たなメニューが加わります。 ケアマネジャーが作成するケアプランなどのケアマネジメントにも、問題点が指摘されています。要支援の方の約8割が家事援助、通所介護、福祉用具貸与などの単品サービスしか受給しておらず、 下肢機能が悪化しやすいにもかかわらず、リハビリ系サービスが入っておらず、高齢者の機能低下の実態とサービス給付内容にミスマッチが生じているのではないかという問題です。 そこでケアマネジャーを支援するために、ケアマネの資質・専門性の向上、中立性・独立性の確保、地域ネットワークによる支援などが考えられています。

 次の大きな変更として、従来の介護保険制度の窓口であった在宅介護支援センターが廃止され、地域包括支援センターが創設されます。 現在この地域包括支援センターは、人口15000〜30000人に一カ所作られ、職員は保健師等1名、社会福祉士1名、主任ケアマネ1名の3名で構成される予定です。 このセンターの役割は、介護予防ケアマネジメント以外にも、他職種協働の支援などの包括的・継続的ケアマネジメント事業や多面的(制度横断的)支援の展開などの業務も含んでおり、各市区町村に設置される地域包括支援センター運営協議会で評価・指導される予定です。

 さらにこの新予防給付では、将来、介護保険制度や新予防給付の対象になる可能性のある特定高齢者を対象とした地域支援事業というものが考えられており、この管理も地域包括支援センターが行うことになる予定です。

 まとめますと全体的な概要としては、特定高齢者を対象とした地域支援事業と、要支援1、2の方を対象とした新予防給付と、従来同様居宅介護支援事業所がケアマネジメントする介護給付の3本の柱に分けられることになります。

 その他の新しいサービスとして、小規模介護老人福祉施設、小規模で介護専用型の特定施設、認知症高齢者グループホーム、認知症高齢者対応型デイサービス、小規模多機能型居宅介護、 夜間対応型訪問介護などが考えられておりますが、これから施設を作らなければならないものも多く、サービスが提供されるのはまだまだ先になると思います。

 いろいろ今回の介護保険改定についてお話しさせていただきましたが、これらは、現在私が把握している情報からのお話しであり、詳細はこれから決定されます。 変更される部分もあると思いますが、ご了承下さい。以上です。

講演当時の役職です)

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