【講演】 呉市民脳卒中知識アンケート |
トップページ> 第11回講演会>【講演】呉市民脳卒中知識アンケート |
宮松 直美 滋賀医科大学医学部 成人看護学研究室教授* 【はじめに】 日本の脳卒中死亡率は昭和40年以降急速に低下してきました。しかしながら、近年の高齢化に伴って患者数は減少どころか増加しており、寝たきりの約4割、要介護状態の約3割は脳卒中が原因であるなど、人々の生活の質や日常生活動作能力の低下をもたらす主要な疾患となっています。 脳卒中とその後遺症からくる要介護状態を防ぐには、脳卒中危険因子(病気の原因と考えられることがら)を改善して発症予防に取り組むこと(=1次予防)、発症早期に適切な治療と看護を提供すること(=2次予防)、早期より適切なリハビリテーションと社会復帰をめざすこと(=3次予防)という段階的な対策が重要です。 日本では発症3時間以内の脳梗塞患者を対象とするt-PAという血栓を溶かす薬による経静脈的血栓溶解療法が2006年8月に保険診療へ導入され、脳卒中発症予防に加えて、発症早期の適切な対処の重要性がより増しています。 このような中で、広く脳卒中予防を推進していくためには、脳卒中の危険因子、発作時の症状と適切な対処行動を市民の方々に十分理解していただくことが重要です。 しかしながら、日本ではこれまで市民の方々の脳卒中知識の現状や効果的な知識提供の手段についての大規模調査は行われていません。 そこでこの度、社団法人日本脳卒中協会の活動の一環として、呉・静岡・秋田の方々を対象に脳卒中の危険因子、発症時の症状、救急時の対処法などに関する知識の向上を目指したキャンペーンを実施し、その効果を検証することとしました。 今回はキャンペーン前の呉市民の脳卒中知識の現状についてご報告いたします。 【呉市の脳卒中知識調査の結果概要】
こうした脳卒中の知識に関する情報源については、テレビ(75%)、新聞(46%)などの「マスコミ」を挙げる方が最も多く、次いで、知人や親戚(40%)などのいわゆる「口コミ」がそれに続きました。 医師(28%)、看護師・保健師(9%)など医療従事者を選択した回答者は少なく、これは患者さんではなく、地域の一般市民を対象とした調査の特徴と考えられました。 したがって、テレビや新聞などのマスメディアを介した知識の普及が効果的であると予想されます。 脳卒中発作時の症状に関しては、突然の片側麻痺(85%)や言語障害(88%)、突然の激しい頭痛(73%)、など重症度が高い症状に関する知識は普及しているものの、突然のふらつき(63%)や視野障害(39%)といった比較的軽度の症状についての理解が不十分であることが明らかとなりました(図3)。 また、回答者の43%が「両側の手指の痺れ」を脳卒中発作時の症状と理解しており、「突然生じる」、「片側で生じる」という発作時の症状の最大の特徴が十分に理解されていないことが示されました。 また、脳卒中の発作時の受診行動に関する質問では、78%が「すぐに救急車を呼ぶ」、それ以外の殆どが「すぐに医療機関を受診(あるいは連絡をとる)」と回答していました。 しかし、少数ながら(1%)「診察時間まで待つ」「数日様子を見る」と回答した方もおられました。したがって、自分自身(あるいはご家族)が「脳卒中だ」と気づくことができれば救急車による搬送が可能であり、その後の脳卒中専門医・専門病院へ搬送するようなt-PA適応を前提とした搬送システムの構築を検討することが必要と考えられます。 【おわりに】 今後は、脳卒中協会が2年間のブレインアタック・キャンペーン(市町村広報、新聞告知、講演会など)行い、終了後に今回と同様の質問紙調査を実施して、キャンペーンによる知識普及の効果を検証する予定です。 こうした調査の結果から取り組まれる正しい知識の効果的普及により、呉市の皆様がひとりでも多く、脳卒中やその後遺症に悩まされずにすむよう願っております。 (*講演当時の役職です)
|
Copyright(c) 2007 Stroke Forum All Rights reserved |