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【特別講演】 脳卒中は防げる、治せる
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山口武典 先生
山口 武典
  日本脳卒中協会理事長
  国立循環器病センター名誉総長


 「日本脳卒中協会」は、研究発表などを主な目的とした「学会」と異なり、患者さんあるいは周りの人々をいかにして救うかということを主題にした団体で、最後に挨拶されます中山先生と一緒に1997年にたちあげました。 それ以来、日本脳卒中協会では毎年一回全国いずれかの土地で講演会を主催してきました。さまざまな地域に支部を作り、脳卒中に関する啓発あるいは支援をやっていくことにしています。
 本日のお話のタイトルは、「脳卒中は防げる、治せる」です。以前は一回脳卒中になったら「どうしようもない」とほとんど見捨てられたような状態でした。 しかし、最近ではいろいろな危険因子をコントロールする薬、血栓ができるのを予防する薬、血栓を溶かすなどで、今や予防も治療もできるようになったのです。

高齢化社会と老化 −人は血管とともに老いるー
 日本人の平均寿命は男性は78.6歳、女性は85.6歳です。女性の平均寿命は世界第1位ですし、男性は第2位ということです。2003年の時点で100歳以上の方が20,561人おられます。15年前は2,300人でしたので10倍に伸びています。 このように高齢者が多くなればなるほど、脳卒中の方も多くなります。
 “生まれてからあと何年生きるか”というのが寿命ですが、余命とは、“それぞれの年齢まで生きた方が、あと何年生きられるか”ということです。 例えば先ほどの男性の平均寿命は79歳でしたが、余命を考えると現在60歳の方であれば、男性はあと22年、60歳に22年足すと82歳になります。 女性の場合は60歳の方であればあと27年、つまり87歳まで生きられることになります。70歳の男性の平均余命はあと14.5年、女性は18.9年で、現在まで元気にしておられる方は平均寿命よりも長く生きることになります。
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図1:加齢と老化の関係
図1:加齢と老化の関係
 すべての生物には生まれてから成長して、生殖を営んで、年をとって、死んでしまうという一定のプログラムが組み込まれています。このスライド(図1)に示すように、横軸に加齢を、縦軸に老化をとりますと、だいたいこのような一定の直線関係になります。 遺伝的な要因が働いてこの直線の角度は変わります。人によっては、平均よりも早く老化する方もいます。場合によっては平均よりも老化が遅いこともあります。 この最も典型的なのが早老症です。これは遺伝的な病気で、テレビにもとりあげられていたと思いますが、非常に早く老化してしまう病気です。 このような病気は例外で一般的には普通に年をとっていくのですが、後ほどお話するいわゆる生活習慣病があると老化を早めます。そのためライフスタイルを改善していくと、長く生きることになります。
 誰でも長生きして元気でいたいと考えますが、人の世話になりながら長く寝たきりでいたいとは誰も思いません。そういうことから最近では健康年齢ということが言われています。 つまり、健康年齢とは平均寿命から重病期間(介護を受けるような状態)を引いたもので、日本人では平均で約75歳です。では健康年齢を伸ばすにはどうしたらいいかということになります。
 例えば悪い生活習慣があると、高血圧や糖尿病になったりコレステロールなどが高くなります(脂質異常症)。遺伝的な部分もありますから、すべてを生活習慣病の責任にするわけにはいきませんが、生活習慣が非常に大きな影響を及ぼしてきます。 このような生活習慣病が続きますと、動脈硬化が起きます。高血圧の場合には血管の内面が傷つき、段々コレステロールなどが染み込んで動脈硬化が進行して、ついに脳卒中が起こるのです。

脳卒中とは
 脳卒中という言葉は、脳が卒然としてわるい風(邪風)に当たる(中る)という言葉からきています。突然意識がなくなって倒れる病気を昔から総称していました。 昔は脳卒中を起こして片麻痺になっている方は、「あの人は中風病みだ」と言われていました。「風に中った」ということです。脳卒中には脳の血管が破れるタイプと詰まるタイプがあります。 破れるタイプの代表的が脳出血で、次がくも膜下出血です。くも膜下出血は脳の血管にできたこぶが突然破れる病気で50−60歳に最も多いのですが、1回目の発作で亡くなる方が多い病気です。一方で脳の血管がつまる病気を脳梗塞と総称されています。 昔は脳軟化症、あるいは脳血栓とひとまとめにしていわれていました。
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図2:脳卒中の種類
図2:脳卒中の種類
 これは脳を真横に切ったところです(図2)。このスライドに示したように、脳卒中には脳出血・脳梗塞・くも膜下出血があり、脳梗塞にはいくつか種類があります。大きな動脈に動脈硬化が起こって詰まるのがアテローム血栓性梗塞で、細い動脈が詰まるのがラクナ梗塞です。 いずれにしても血管の動脈硬化によって起こります。これらとは別に心原性塞栓症というタイプがあります。心臓に原因があり、脳に心臓から血栓が流れてきて詰まる病気です。ですから若い方でも心臓病がある方は時々脳卒中を起こすことがあります。
 では、脳卒中はどうしてそんなに多いのかということです。動脈硬化があったらどこの動脈でも詰まる筈です。内臓でも詰まるということはあります。同じように詰まっても脳の場合は症状が強く出ます。 なぜかというと脳は体全体のすべての働きを司っている臓器だからです。特に問題なのは、脳は非常にたくさんの酸素を必要とします。重さは体重の2%で、もし60キロの方だとしたら脳の重さは約1200〜1500gです。 ところが血液は全身の14%が流れていますし、全身が使う酸素の24%、4分の1を脳が使っているのです。逆に言いますと、酸素不足に非常に弱い臓器ですから、ちょっとした血の流れの悪さなどで脳組織は駄目になって症状が出ます。

日本の脳卒中は変わってきている
 ここで簡単に日本の脳卒中はどのように変わってきたかを示しますと、1981年までは脳卒中は死因の第一位でした。戦争前の死因の第一位は結核です。しかし、終戦後にストレプトマイシンなどの薬がでて、突然結核による死亡が少なくなりました。 それ以来ずっと脳卒中は死因の一位でしたが、徐々に減少し、81年にがんに抜かれて85年に心臓病に抜かれて現在第三位です。これは脳卒中を予防する手段、治療する手段が出てきたからです。
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図3:脳卒中死亡の内訳の変化
図3:脳卒中死亡の内訳の変化
 例えば1960年(昭和35年)の統計を見ると、脳卒中で亡くなられた方は人口10万対160.7人でした。対1000人では1.6人です。この内訳を脳出血と脳梗塞で見ると、脳出血が圧倒的に多く、脳梗塞はそれほど多くありませんでした。 ところが1999年の統計を見ると、死亡率は約3分の2となり、脳出血が3分の1に減って脳梗塞が4〜5倍に増えています(図3)。昔から日本人には脳出血が多いと言われてきましたが、生活習慣の変化によって現在は脳梗塞が日本人の脳卒中の死因の大部分を占めるようになっています。
 現在、死因としては癌、心臓病に次いで第3位です。厚生省の統計によると130−150万人ほどの脳卒中の患者さんが全国におられます。発症率を見ると、地域によって様々ですが10万対100−200つまり、1000人に1人か2人は毎年脳卒中を起こしていることになります。 最近問題になっている医療費をみると、1.8兆−1.9兆円ほどで第3位です。また、最も問題なのが要介護になる原因の第1位ということです。全体の3割を占めているためなんとか脳卒中を防ぎ、もし不幸にして起こったらなんとか早く回復するような手段をとらなければなりません。
 脳梗塞を起こすと、ほぼ完全によくなるのは18%で2割にも満たないのです。何とか自立できるのは6割近く、残りの4割は介助が必要かあるいは脳卒中を起こしたときに亡くなってしまうように非常に悲惨な病気なのです。

予防が最も大切
 脳卒中を克服するにはまず予防することが最も大事です。そういう意味では先ほども出てきた生活習慣を正すということ、そしていわゆる危険因子である高血圧・高脂血症・糖尿病その他を排除していくことが大切です。 そしてもし前触れがあったらそれを知ってその段階で治療をし、もし起こったら一刻も早く病院に行きましょう。近所迷惑だから・恥ずかしいから救急車を呼ぶのはやめようということだけはないようにしてください。
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図4:危険因子とは?
図4:危険因子とは?
 危険因子の中には治せるものと治せないものがあります(図4)。まず治せる危険因子の中で一番大事なのは高血圧で、次が糖尿病、それから心房細動があります。 心房細動というのは心原性脳塞栓症の原因となります。それから高脂血症も治すことができます。これらの危険因子を招く生活習慣の最も大きな原因となるのが喫煙と多量飲酒です。
 また、修正できない危険因子は、年齢や遺伝的素因です。こういう風に危険因子はたくさんありますが、少なくとも生活習慣を直すことによって危険因子がなくなるようにすることが非常に大事です。
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図5:脳卒中発症までのプロセス
図5:脳卒中発症までのプロセス
 もう一回おさらいします。「食べ過ぎ・飲みすぎ・働きすぎ・なまけすぎ・吸いすぎ」という5つの過ぎと言われる悪い生活習慣が続くと、生活習慣病になりやすいのです。 生活習慣病とは、高血圧・高脂血症・糖尿病その他です。これらがありますと動脈硬化を起こします。 そして前触れなしに脳卒中を起こす方もいるし、前触れ発作があって起こす方もいるし、あるいは知らないうちに起こっていてたまたま検診で脳梗塞が発見されることもあります(図5)。 脳卒中を招く原因となる生活習慣、あるいは生活習慣病をきっちりコントロールすることがまず大事です。
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図6:血圧の分類
図6:血圧の分類
 高血圧を治療しますと、脳卒中は40〜50%は抑えられます。以前は上が160、下が95mmHg以上を高血圧といっていました。140〜160、90〜95の間は境界域高血圧と呼んでいました。 最近では血圧は低ければ低いほどいいということから、上が140以上、下が90以上はすべて高血圧で、治療の対象となります。そして、120〜140の間は前高血圧と呼び、正常範囲ではありますが注意を喚起しています。 ですから理想的なのは上が120、下が80以下です(図6)。
 血圧が高い場合にはまず食生活を改善することです。塩気を減らすこと、食べ過ぎないこと、そして運動することです。しかし必ずしもこれだけではうまくいかないことが多いのです。 うまくいかないときには、やはり薬を飲んで治療しなければいけません。血圧の薬は勝手にやめないことが原則です。また、どこで血圧を測るかが重要です。 例えば家で測った時は120だけど、病院にいって測ったら160あったという方もいますし、逆に家では150くらいあるのに、診察室では130くらいという方もいるでしょう。最も大事なのは、家で朝起きてから1時間位して座って、測る血圧です。 朝だけ血圧が高い早朝高血圧は、脳卒中や心筋梗塞を起こしやすいと言われています。また、仮面高血圧というのは病院では低いけれど家では高い、というものです。それから白衣高血圧というのは、白衣の人を見ると緊張して血圧が高くなるというものです。 例えば、病院の自動血圧計で測ったときは正常だが、主治医の前で測ると血圧が高いという方もいます。正常な方と比べると仮面高血圧や白衣高血圧は少し危険とは言われますが、一番大事なことは家で朝の血圧を測って主治医に見てもらうことです。
 次は糖尿病です。糖尿病の人は、正常な人に比べて脳梗塞が約3倍起こりやすく、心筋梗塞も約3倍起こりやすいということが言われています。 糖尿病の「気(け)」がある程度では大丈夫と思われるかもしれませんが、血糖値が糖尿病の診断基準より少しは低いけれども正常ではない方でも、正常な人よりも約1.5倍脳卒中・心筋梗塞を起こしやすいのです。 ですから、きちんと治療することが必要です。
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図7:危険因子と心血管病に進展する確率
図7:危険因子と心血管病に進展する確率
 昔のデータになりますが、例えば40歳の男の人を18年間フォローアップした場合どうなるかという大変重要なデータがあります(図7)。 まったく危険因子のない人であれば、18年間でも脳卒中はほとんど起こりません。ただ血圧が高く195mmHgあったとすると、4.6%の確率で起こります。同時にコレステロールも高いとなると、21%の確率になります。 それにタバコを吸って糖尿病があってそれに心臓が大きくなると、70.8%の確率で起こることになります。ですから、リスクの重なり合いは非常に危ないということにご注意下さい。
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図8:メタボリックシンドローム
図8:メタボリックシンドローム
 メタボリックシンドロームという言葉をお聞きになったことがあると思います。先程の話とは異なり、この場合はきっちり異常だと言われないような危険因子でも危ないということを言っています。 高血圧・糖尿病・高脂血症(脂質異常症)、それに肥満が重なったものを昔から「死の四重奏」と言われていました。 そしてここに示している三つの病気になる前の段階、例えば血圧は130/80 mmHg 以上、それから空腹時の血糖が110mg/dl以上(糖尿病の気がある程度)のような場合でも、 このいずれかの二つとお腹のまわりが男で85cm以上、女で90cm以上あると、やはり脳卒中とか心筋梗塞を起こしやすいということで注意が喚起されています(図8)。  不整脈の中でも心房細動というタイプの不整脈のある方は年間約4%が脳卒中を起こしています。逆に脳梗塞の2〜3割は心臓が原因であるため、心房細動のある方は積極的な予防が必要です。 治療にはワーファリンという薬を使いますが、現在もし飲んでいないのであれば主治医に相談して飲むべきかどうか検討して下さい。
 今お話した危険因子について市民の皆さんがどのくらいご存知か数年前に日本脳卒中協会が調べました。これは、何が危険と思うか自由に記述する方法で行いました。 その結果、最低1つ正答した方は全体の半分もおられませんでした。2つ以上正答した方は12%のみ、という惨憺たる結果でした。しかしこれが項目選択式にしますと、かなり成績があがってきます。

脳卒中の前触れは?
 次が前触れについての話です。前触れとなるものを一過性脳虚血発作(TIA)といい、一時的に脳の一部の血流が悪くなることをいいます。症状が起こっても数分から数時間以内によくなりますが、もし危険因子のある方で治療をしていたにも関わらず、前触れを起こしてしまった場合は、またここで予防しなければなりません。 現れる症状は、脳梗塞とほとんど同じです。片方の手と足の力が抜ける、手足がしびれる、ふらふらしてまっすぐ歩けない、めまいがする、物が二重に見える、言葉が出てこない、呂律がまわらない、他人の言うことが理解できない、片方の目にカーテンがかかったように見えなくなる、などの症状があります。 こういうことがあってもすぐ良くなると、血圧が高いからだろうとか、調子が悪いからだろうと放置される方がありますが、絶対にそのままにしてはなりません。
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図9:一過性脳虚血発作
図9:一過性脳虚血発作
 これは脳血管撮影の写真で、頚のあたりの動脈が写っています(図9)。この矢印の部位がでこぼこしています。ここの表面に血栓がくっついて、それが剥がれて脳に行ってひっかかると麻痺が起こります。しかし小さな血栓だとこれが自然に溶けて流れ去ってしまい、症状がなくなります。 しかし動脈に病変がありますので、次に大きな血栓がはがれると、本物の脳梗塞が起こります。ですから脳梗塞の準備状態にあると思ってください。
 そういう場合には、すぐに心臓と動脈の検査をしなければなりません。そして動脈硬化の程度によって例えば血液をサラサラにする薬(アスピリンを代表とする血小板の働きを抑える薬)を使います。それから場合によっては(頚動脈が70%以上狭くなっている場合など)頚動脈の手術とか、風船療法とかを行うこともあります。 ですから一時的な脳梗塞のような症状があったら必ず検査をして、必要に応じた検査と治療をしてもらうことが大事です。

もし発作が起こったら
 もし発作が起こったらどうするか、とにかく一刻も早く専門家のいる病院に行くことが大事です。理想的には脳卒中の専用病棟(ストローク・ケアユニット)で専門家チームによって総合的な治療をすることです。 それによって死亡や寝たきりが3割減り、家庭復帰が3割増えると言われています。
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図10:血栓溶解薬(rt-PA)
図10:血栓溶解薬(rt-PA)
 もう一つ、約1年前に日本でも認可されましたが、詰まった血管を再開通させるアルテプラーゼという血栓溶解薬があります(図10)。これを3時間以内に点滴静注するのです。 3時間以内に治療を開始するためには、起こってから2時間以内に病院に着いておかなければいけません。そのためには「こういう症状は脳卒中ではないか」ということを知っておいて頂きたいのです。
 この血栓溶解薬というのは、例えば血栓で詰まった箇所に薬が到達すると血栓を溶かしてさっと流してくれるのです。しかし、詰まってから3時間以上過ぎてから血管が開通すると、かえって出血が起こって大変なことになりかねません。 患者さんが到着してから治療を開始するまでに少なくとも1時間はかかりますので病院には絶対に2時間以内に行かなければいけません。
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図11:血栓溶解薬の効果
図11:血栓溶解薬の効果
図12:発症2時間目のMRI像
図12:発症2時間目のMRI像
 では、本当にこの薬は効くのでしょうか。スライドの左側が発症1時間後の血管撮影で、矢印で示した所が切れています(図11)。これが詰まった部分です。ところがこれに血栓溶解薬を1時間かけて投与したら、右側のように完全に通った形になりました。こういう方はほとんど正常近くまで良くなって帰っていかれます。
 例えばこの患者さんについて見てみましょう(図12)。向かって左の画像の右の部分は白くなっていて血液の流れが非常に悪くなっていることを示しています。 ところがそこが既に脳梗塞になっているかどうかを示す画像では(右図)、ごくわずかしか梗塞になっていない。つまり血の流れの悪い部分は左図のようにかなり広いのですが、完全にやられているのは右図のようにごくわずかな部分です。 その残りの広い範囲を救うために血栓溶解療法というのが役に立つわけです。
 実際のデータを示します。発症して3時間以内の脳梗塞患者さんにアルテプラーゼを使うと、100人中31人がほぼ完全に良くなったのに対し、偽薬を使った場合20人しか良くならなかった、つまり非常に良くなる患者がほぼ5割増しになるという画期的な薬です。
 では、患者さんはどれくらい早く病院に来ているでしょうか。これは6年前のデータですが、1万7千人くらいの脳梗塞の患者さん(発症14日以内)のうち、3時間以内に来られたのは、36.8%でした。 これが100%になるように我々は努力していかなければなりません。患者さんも100%になるように来てもらわなければいけません。
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図13:このような症状が出たら…
図13:このような症状が出たら…
 ではどういう時に一刻も早く病院へ行くべきかというと、先ほどお話した一過性脳虚血発作と同様に、一番多いのは運動麻痺あるいは半身の感覚障害です。これを理解しておいてください。 次が言葉の問題の構音障害で、呂律がまわらず、酒を飲んだときのようなしゃべり方になります。それから失語という、言葉が出ない、あるいは人の言うことが理解できない症状です。 それから、物が二つに見えるとか視野が欠けるといった目に関する症状。それから体幹・四肢失調という状態で、めまいやふらふら、力はあるのにうまく立てない、歩けないという症状。そして、最後は突然経験したこともないような頭の痛みにおそわれる。 これは脳出血かくも膜下出血の場合です。ですから、このような症状があったら必ずすぐ病院に行くことを考えていただくことが大事です(図13)。
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図14:日本脳卒中協会
図14:日本脳卒中協会
図15:脳卒中週間
図15:脳卒中週間
図16:坂上二郎さん(新聞広告)
図16:坂上二郎さん(新聞広告)
図17:脳卒中予防十選
図17:脳卒中予防十選
 これも先ほどの日本脳卒中協会が行ったアンケート調査ですが、脳卒中の症状を正確に答えた方は3割近く、2つ知っていた方は全体の4%しかいませんでした。これは自分で書いていただいた形式で、後ほどお話しがありますが、マルティプルチョイス(多項目選択式)で行うとかなり正解率は上がります。 やはり自分で書けるくらい理解しておいていただけるといいと思います。
 おさらいします。まず予防です。予防には危険因子の排除。前触れを知るということ。そしてもし起こったら一刻も早く病院へ行くことです。
 そのお手伝いをするのが日本脳卒中協会で、年に4回小冊子(JSAニュース)を出しています。それから講演会の記録集を出したり、リーフレットなどを作っています。 ホームページはhttps://www.jsa-web.org/ですので興味がある方はごらんになってください。事務局の電話番号は06-6629-7378です。
 日本脳卒中協会の支部はどんどん増えていて、31都道府県、2政令都市に合計33支部があります(2007年5月現在)(図14)。 広島を始めとしてこの中国四国地方には多くの支部があります。関東から東北は少ないので、これを全国すべての都道府県に広めていこうと努力しています。
 そして我々は毎年5月25〜31日までを脳卒中週間と定め、ポスターを作って全国の郵便局に張り出しています。 これまでは予防のことに力を入れておりましたが、昨年脳梗塞に対するt-PAという薬が認可されたので今年は「とにかく脳卒中が起こったらすぐに、こういう症状があったらすぐに病院へいって下さい」ということを掲げています(図15)。 こちらは公共広告機構にお願いした新聞広告で、モデルは坂上二郎さんです。彼はたまたま主治医と一緒にゴルフしていたので、「これは危ないからすぐ病院へ行こう」といわれて入院し、血のにじむようなリハビリテーションを続けて、非常に良くなったと本人は言っています。 坂上二郎さんが広告に出てくれて、少しでも早く治療を受けられる方が増えればと思います(図16)。
 これは脳卒中協会で作った脳卒中の予防十か条です(図17)。お手元のリーフレットを読んで予防を心がけてください。そして最後にあります、「脳卒中 なったらすぐに 病院へ」ということを忘れないようにしてください。

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写真:国際脳卒中学会
写真:国際脳卒中学会
図18:百寿者の特徴
図18:百寿者の特徴
終わりに
 これは今年の10月26日から南アフリカのケープタウンで開催された国際脳卒中学会の時のスライドです。そこで国際脳卒中学会としても世界脳卒中デーを宣言しようという催しがあり、現地の人たちが歌を歌いながら会場を巡り歩いて、「脳卒中の日」を宣言するという儀式がありました。 このように、漸く国際的にも脳卒中は注目されるようになりました。
 これは最後のスライドです。百寿者の特徴をNHKの番組で放映していたものを書き写しました。自分で決めたことは最後までやり通す、他人の意見をあまり気にしない、社交的で良く笑う、意外と神経質なところがある、今の自分に自信があり、ある程度の我を持って生活している方が長生きしているのではないかと思います。 大事なことは、一番下に書いてある百寿者の平均血圧、130/70mmHgという血圧に保つことです(図18)。ご清聴ありがとうございました。
講演当時の役職です)

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