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【講演】 「薬を正しく飲むために知っておきたいこと」
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豊田章宏さん  さあ、休憩を挟んで後半の一題目です。労災病院の薬剤部の若手のエースであります松田先生からお話を伺いましょう。 彼は脳疾患を主にみている、脳神経外科や神経内科とかがある7階西病棟に勤務していて、普段から脳卒中の患者さんに接し、薬の手配とか管理とかをやってくれています。 今日のタイトルは、「薬を正しく飲むために知っておきたいこと」となっています。お薬の飲み方ってなかなか難しいことがあって、さっきも彼と話をしてたんですけど、たとえば食後飲むとか、 食間に飲むとか区別が難しいですよね。食間て書かれていたら、食事中に飲むと僕等も最初思ってたんですよ。本当は食事と食事の間ですよね。 でも、食間っていったら、ご飯と味噌汁のあいだかな、味噌汁と漬物のあいだかなと悩んでいました。その他には坐薬って座って飲むのかなと、思ってる人も実際にいらしたんですね。 「先生、あの薬は大きくて飲みにくいですよ」って坐薬は座って飲むんだと思い込んで、おしり入れるやつを一生懸命口から飲もうと思っていたという話があります。 そんな冗談みたいな話もありますけども、薬の正しい飲み方を知らないと、せっかくの薬も毒になりかねませんので、専門家の薬剤師の先生からそのへんのことを詳しく聞きたいと思います。 どうぞ拍手でお迎えをお願い致します。(拍手)

松田翔平さんさん 松田翔平
   中国労災病院薬剤部



 先生、ご紹介ありがとうございます。中国労災病院薬剤部の若手のエースの松田です。よろしくお願いします。
− 豊田:「自分で言うなよ」(会場爆笑) −
 ああ、すみません。聞かなかったことにしてくださいね。

 いまから「薬を正しく飲むために知っておきたいこと」についてお話をしたいと思います。今日は何回もお話がありましたが、脳卒中を予防するための基本的な項目ですね。 太りすぎ、運動、塩分、アルコール、タバコといった生活習慣の改善から、不整脈、コレステロール、糖尿病、血圧といった病気、こういったものが脳卒中を引き起こす原因となります。 生活習慣に関しては、ある程度皆様にお任せするところがあるんですけれども、病気になってしまったらどうするかというと、やはり薬でのコントロールが必要になってきます。 薬は脳卒中予防のための大切な要因です。
 今日のお話の内容なんですけれども、先ほど豊田先生のほうからお話がありましたが、正しく服薬するための方法、あと脳卒中の予防に大切なお薬の相互作用や副作用を話したあとに、 より賢くお薬を飲んでいただくために、お薬手帳の活用について最後話をしたいと思います。
図1:薬を正しく服用できていますか
図1:薬を正しく服用できていますか
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 皆さん、薬を正しく服用できていますか?
 坐薬ですね。先ほどお話がありました。一般的には肛門に入れて使用するお薬です。で、間違いの事例としては、さっき豊田先生に言われてしまったんですけれども、 座って飲むお薬だと思って、わざわざ座布団敷いて正座して飲んだとかね、そういうお話もありますし、もっとひどい事例が実はありまして、 おしりに入れてと説明したのに、お汁に入れてと聞き間違えて、ご飯の時に味噌汁に入れて、わざわざ溶かして飲んだ。 別に、多分たいした害はないですけど、せっかく貰って効かなかったら意味ないですよね。で、脂の塊なので味噌汁が脂の汁みたいになりますので、絶対やめてくださいね。 これは笑い話。ウソみたいな本当の話なので、ね。あともうひとつ言うと、薬を1個ずつくるまれているんですけど、坐薬を出さずにそのまんまおしりの中に入れてしまって腸が傷ついたりね、そういった話もあります。
図2:服用した薬はどうなる
図2:服用した薬はどうなる
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 それでは皆さん、お薬を服用したらどうなるんでしょうか。お薬にはいろんな形があると思います。飲み薬、注射、さっきの坐薬。 お薬はどうやって効くかっていうと、血液の中に入ってきてはじめて効果を示します。注射はどういうふうに投与するかといいますと、針を血管の中に刺して、 直接血液の中にお薬を入れますね。なのでとても効果が早いのが特徴です。坐薬も、腸から入れて、割とすぐ血液に溶けますので、割と効果が早い。 飲み薬はどうかというと、口から飲むと、食道を通って胃で一回ばらばらになって、いろんなものに溶けて、小腸で吸収して、肝臓でだいぶ分解されて、 やっと一部分が血液の中に入ることができます。他のに比べて効くまでにだいぶ時間がかかりますし、いろんな影響を受けるのが内服薬の特徴です。 そこでこの内服薬について少し詳しくお話をします。
図3:薬を飲む時間
図3:薬を飲む時間
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 まず薬を飲む時間ですね。これも豊田先生に先に言われてしまったのですが、一般的には食後のお薬が多いでしょうか。食後と言うのはいつ飲むかというと、 ご飯を食べたあと30分して飲むのが正しい食後の意味です。ただ皆さん、食後30分待ってお薬を飲まれてる方っていらっしゃいますか? 私は30分待ってる。 あ〜、いらっしゃいますね。一般的には30分後の飲み方なんですけど、多分これやると忘れたりすることが多いと思います。なので、忘れるぐらいならご飯食べたあとにすぐ飲んで貰ってもとくに構いません。 逆に食前、これは反対に30分前に飲む必要があるんですが、このお薬の場合は、さっきからだの中に入るまでにだいたい30分ぐらい時間がかかります。 なので、この30分前に飲むと、いつ効くかというと、食事の途中にだんだんお薬が効いてきます。なので、食前のお薬はできるだけ30分前にしっかり飲むようにしてください。 あと食直前、糖尿のお薬に多い飲み方ですが、これはご飯を食べる前、いただきますをした後に飲みましょう。食直後、これはごちそうさまをする前ですね。 ご飯の延長、デザート代わりです。…に、お薬を飲む感覚でいいと思います。で、食間ですね。私も実は大学入って薬の勉強をするまでは、食事中に飲むもんだと思ってたんですけど、 先ほどありましたように食事と食事の間に飲みましょう。一般的には2時間ぐらい食事との間隔をあけるように言われていますが、 必ずしも食事と食事の間が4時間空くとは限りませんので、食事と食事のちょうど真ん中ぐらいに時間に飲んでもらったらいいと思います。
図4:薬を正しく服用できていますか
図4:薬を正しく服用できていますか
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図5:薬を飲む時の水の量
図5:薬を飲む時の水の量
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 次に飲み薬を正しく服用できていますか?ということで、お薬貰うときだいたいこういう形で貰いますよね。お薬を服用される皆様へ、お薬はシートから取り出してお飲みください。 わざわざこう書いてまで注意する必要があるのかというと、実際に1個づつにはさみで切ってそのまま飲んじゃう方って結構いらっしゃるんですね。 で、どうなるかというと、食道を尖ったところで傷つけたり、もっと奥に入って、腸に穴が開いたりして緊急手術になることもあります。 なので、ご自分で飲みやすいようにはさみで切って、1回ずつ分けてらっしゃる方もいると思いますが、できれば薬のシートは切らずに、そのまま保管をしてください。 では、いよいよお薬を飲む時間がきました。水の量、皆さんどれくらいで飲まれていますか? 一般的にはコップ1杯、約200mlの水です。…がいいとされています。 多いのは別に構わないのですが、水の量が少なすぎると、流し込めないので、喉や食道に錠剤がひっかかることがあります。 …で、それが原因で強い胸焼けだとか症状が起こることがあります。喉の場合は割りとひかかっても気付くことが多いのですが、食道だとか、 もうちょっと深いところになるとひかかっても症状が出なかったり、しばらく気付かないことがあります。そうするとその薬が詰まってるところで潰瘍ができたりすることもありますので、 とくに病気とかで水を制限されてない方は、コップ1杯の水で飲むようにしてください。
図6:血圧の薬
図6:血圧の薬
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 では、脳卒中予防のために大切なお薬についてひとつずつ詳しく見ていきたいと思います。主に相互作用や副作用についてお話をしていきます。 こちらから血圧の薬、糖尿の薬、コレステロールの薬と不整脈の薬です。これ、血圧の代表的なお薬を上げています。一番右側がこの薬の名前を挙げているところなんですけれども、 皆さんが飲まれているお薬がこの中にありますかね。代表的なものはここにあります、ノルバスクやアムロジン、あとちょっと変わったディオバンやブロプレス、 こういったところが代表的なお薬になります。で、こうした青で示したお薬は血管を広げて血圧を下げるお薬です。ラシックスやアルダクトンといったものに代表されるような、 いわゆる利尿剤。利尿剤って血圧のお薬なんですね、基本的には。利尿剤っていうのは何をするのかと言うと、身体の中の水分の量を減らして心臓の働きを助ける、 楽にしてくれます。で、血圧を下げることが出来ます。なので利尿剤を飲まれている方、「わしはおしっこがたくさん出とるけー、飲まんでも大丈夫じゃ」と言って、 利尿剤をやめてしまわないようにしてください。おしっこが出過ぎて困るときは医師や薬剤師に相談するようにしてください。
図7:Ca拮抗薬とグレープフルーツ
図7:Ca拮抗薬とグレープフルーツ
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図8:Ca拮抗薬とグレープフルーツ
図8:Ca拮抗薬とグレープフルーツ
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 いまから相互作用のお話をするんですが、血圧のお薬でカルシウム拮抗薬といわれるお薬があります。聞いたことありますか。一時期副作用が大々的にニュースで流れたことがあるんですけれども、 グレープフルーツとの相性がすごく悪いお薬です。あるカルシウム拮抗薬のお話しなんですけど、お薬を飲むと、小腸や肝臓へ一部分が分解されて、このお薬の場合だと、 わずか15%だけ血液のなかに入って血圧を下げることが出来ます。では、このとき、一緒にグレープフルーツを飲むとどうなるかというと、小腸の分解をする働きを持った物質が弱くなってしまって、 分解される程度が弱くなります。その結果、血液中に45%お薬が入っていくことになります。もっと簡単に言うと、グレープフルーツを一緒に飲んでしまうと、 3倍の量飲んだことになりますよね。15%から45%、そうするとお薬が効きすぎて血圧が下がり過ぎたり、中毒といった症状が起こることがあります。 なので、カルシウム拮抗約を飲まれている方、グレープフルーツの摂取を避けるようにしてください。もうちょっと詳しく。グレープフルーツと書きましたが、 実はグレープフルーツだけではないんですね。相互作用が報告されている柑橘系です。読めないんですけど、みかんとかそういったものですね。 夏みかんとか伊予柑、最後のはっさくとか、こういったものはさっき言ったように、カルシウム拮抗薬の作用が強くなってくることがあるので、一緒に飲まないようにしてください。 で、このグレープフルーツの影響ですが、飲んだ時だけではなくて、影響が数日間続くこともあります。なので、たとえばカルシウム拮抗薬、 朝飲むから夜なら飲んでも大丈夫だろうということで、グレープフルーツを飲んだとしても、次の日の朝までグレープフルーツの影響は続いてますので、 こういった薬を飲まれている方は、グレープフルーツは摂取しないようにしてください。
図9:ACE阻害剤とARBの副作用
図9:ACE阻害剤とARBの副作用
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 次にちょっと難しい話になるんですが、血圧の薬にエース(ACE)阻害剤といわれるものと、 ARB、良く似たお薬なんですけど、この副作用についてお話ししたいと思います。身体の中には血圧を上げる物質があって、それを作る働きをしているエース(ACE)という、 ちょっとかっこいい名前が付くエース(ACE)という酵素があります。この酵素は血圧を上げる物質を作る働きと同時に、ゴホゴホと咳を出す物質を分解する働きがあるんですね。 血圧を上げる代わりに咳を抑えてくれる物質です。ただ血圧が高いひとっていうのは、やっぱりこの血圧を上げる物質を抑えないといけないので、 この働きを抑制するエース(ACE)阻害剤というのを飲みます。そうすると血圧を上げる物質は下がってくるんですけど、この分解する働きもなくなってきますので、咳を出す物質が方らの中に溜まりやすくなってきます。 松田翔平さんさん そうすることによって副作用、痰のからまない乾いた咳、空咳とよばれるものですが、 咳が副作用として出てきます。どういう方に出てくるかというと、飲み始めてすぐ、2か月後ぐらいまでによく出てくる副作用ですが、逆にいうとちょっと我慢して3ヶ月、4ヶ月飲んでいただくと、 ほとんどの人は咳が治まってきます。なので飲み始めて咳が出るという方、我慢できるようだったら我慢してもいいと思いますし、あまりにもひどいようだったら、 また相談をしてください。そしてもうひとつ、ARB、良く似たお薬なんですけど、これは直接血圧を上げる物質を邪魔しますので、咳を出す物質の分解はしませんので、 咳の副作用は少なくなります。
図10:糖尿病の薬
図10:糖尿病の薬
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図11:糖尿病内服薬の用法
図11:糖尿病内服薬の用法
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図12:糖尿病薬の注意点
図12:糖尿病薬の注意点
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図13:低血糖になったら
図13:低血糖になったら
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 次、糖尿病のお薬についてお話ししましょう。糖尿病の場合、代表的なのはアマリール、新しいお薬としてはジャヌビア、エクア、こういったものは、インスリンの分泌を助けてくれます。 インスリンを出して血糖を下げようとするんですね。ベイスン、ボグリボースというお薬、こういったものは、食事によって血糖が急に上がるのを抑えてくれるお薬です。 それと、メトグルコとか、アクトス、こういったお薬はインスリンの効きをよくしてくれるタイプのお薬です。糖尿病の内服薬で注意して頂きたいのは、用法がそれぞれのお薬によって変わってきます。 食後のお薬も当然あるんですが、アマリールとかは食前に使われることもありますし、食後に使われることもあります。処方する医師が状態を見ながら決めますので、その通り飲んでもらえればいいんですが、 食直前に分類されるお薬があります。これは基本的には食直前しか飲み方がありませんが、飲んですぐインスリンが分泌するようなお薬とご飯による血糖の上昇を抑えてくれるお薬は食直前、 いただきますをした後に飲むお薬になります。いろんな飲み方があるので、万が一、飲むのを忘れていた時、どうしたらいいかというと、食後飲むお薬を忘れた場合は、 「ああ忘れてた」と気づいた時にすぐに飲んでください。ただ、次の食事まであと30分だ、15分だと、そういう時はその分はお休みして、次の分から正しく飲みましょう。 食直前のお薬の場合には、食事の途中で気付いたら飲んでください。食事が終わりかけてたり、終わっていた場合には、その回はお休みしてもらって次の分から正しく飲みましょう。 食前の薬を飲んだあと注意して頂きたいのは、低血糖です。薬を内服後、食事を摂るまでに時間がかかると、低血糖になってしまいます。 たとえば食直前のお薬を飲みました。さあご飯を食べようと思ったら、ピンポンのチャイムが鳴る。出てみたら近所の人だった。で、ついつい長話をしてしまう。 その間にもお薬は効いてますので、どんどんどんどん血糖値が下がってしまうことがあります。気づいたら低血糖とよばれることになることもありますので、 食直前のお薬を飲んだらできるだけ早めにご飯を食べるようにしてください。では、低血糖になってしまったら、どうしたらよいでしょうか? まずは、一番大切なのはここかも知れないですね。 自分が低血糖であることを自覚してください。低血糖の症状としては、生あくびが出る、気分が悪い、身体がだるい、思考力が低下してくる、冷や汗、動悸、顔面蒼白、こういった症状がありますので、 なにか当てはまる、人それぞれ出てくる症状は違いますので、なんかいつもとおかしいなと思ったら、低血糖を疑ってみてください。で、低血糖になったときはどうするかというと、 ブドウ糖の摂取です。ブドウ糖というところが結構大切なところです。糖尿のお薬を飲まれている方は、薬局とかそういったところでブドウ糖がもらえたりすることがあるんですけど、 手持ちにブドウ糖がない場合、どうすればいいかというと、ジュースにはブドウ糖がたくさん含まれているので、こういったものを飲んでください。 コーラやファンタ、オレンジ、普通のオレンジジュース。炭酸は一気に飲めないですよね、多分ね、低血糖の時はね。喉がいたくなっちゃいますので、 こういった普通のジュースを置いてもらってもいいと思います。ただ、飴やチョコレートは、甘くて糖分たくさん入ってるんですが、飴、口の中で溶かすの時間かかりますよね。 チョコレートも時間かかりますよね。なので、こういう緊急時には、飴やチョコレートは適さないので、こういったもので血糖値を上げるのはできるだけやめてください。 ブドウ糖の錠剤とかも売ってますし、こういったジュースを1本冷蔵庫に入れて、万が一に備えておくといいと思います。
図14:高脂血症の薬
図14:高脂血症の薬
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図15:横紋筋融解症
図15:横紋筋融解症
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 次、コレステロールのお薬です。高脂血症のお薬、上林先生のほうから詳しくご説明がありましたが、青い方というのが、LDLコレステロール、悪玉コレステロールを抑えてくれるようなお薬です。 下の方は何を抑えるかというと、中性脂肪を抑えてくれるお薬です。代表的なのはメバロチンとか、クレストールです。高脂血症のお薬を飲まれている方、注意して頂きたい副作用があります。 それは横紋筋融解症という副作用です。名前だけでも怖いような副作用なんですけど、どういう人になりやすいかというと、内服を始めてから、6ヶ月以内、 半年以内が一番出やすい副作用になります。ただし半年以上が経過していても出てくることもありますので、気をつけてください。どういう症状が出るかというと、 尿の色が赤っぽい、手足に力が入らない、筋肉が痛む(筋肉痛)、全身がだるい、手足のしびれ、コレステロールのお薬を飲まれている方で、こういう症状があるかなと思った方は、 すぐに医師や薬剤師に相談してください。怖い病気ですけど、起こる頻度としてはそんなに高くありませんが、重篤化しやすいので症状を自覚したらすぐに相談をしてください。
図16:脳梗塞と不整脈
図16:脳梗塞と不整脈
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図17:抗凝固剤の比較
図17:抗凝固剤の比較
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 最後に不整脈のお薬をお話ししたいと思います。お薬の前に、脳梗塞と不整脈の関係についてお話しさせて頂きます。脳梗塞はおおきく3つに分類されています。 ラクナ梗塞、脳の細い血管が詰まって起こる脳梗塞。アテローム血栓性の脳梗塞、さっきいったコレステロールが原因で動脈硬化を起こして血管が詰まる脳梗塞。 それと心原性脳梗塞、心臓にできた血栓が流れてきて、太い血管が詰まって起こる脳梗塞。この一番上の心原性脳梗塞は、心房細動といわれる不整脈でなることがほとんどです。 心房細動があると、心臓にできた血栓が流れてきて脳を詰まらせてしまいます。なので血栓ができないように、こういったワーファリン、プラザキサ、イグザレルトといわれるような血をサラサラにするお薬で予防することが大切になります。 この3つのお薬の違いについて、簡単ですけどご説明したいと思います。まずはワーファリンですね。これはすごく有名な薬なんですけど、ビタミンKを多く含んだ食べ物と相性が悪いお薬なので、 ビタミンKがたくさん含まれているもの、納豆、青汁、クロレラってのは飲むことができません。食べることができません。 プラザキサとイグザレルトは、食事制限はとくに必要ないと言われております。服用の回数は、ワーファリンやイグザレルトは1日1回ですが、 プラザキサ1日2回飲む必要があります。プラザキサはカプセルです。プラザキサは湿気に弱いという特徴がありますので、カプセルに詰められています。 あと内服できないひと、高度な腎障害があるひと。腎機能が極端に悪い人はお薬を飲むことが出来ません。肝臓が悪い人はワーファリンは飲むことができません。 薬の価格。ワーファリンはとても安いお薬です。プラザキサとイグザレルトは、ワーファリンと比べると、だいぶ高くなります。 15倍とかそれぐらいですかね。それぐらいの値段の差があります。イグザレルトというのはまだ発売されて1年たっていないお薬なので、2013年4月までは1回に2週間分しかお薬をもらうことが出来ない。
図18:ワーファリンとビタミンK
図18:ワーファリンとビタミンK
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図19:ワーファリンと納豆
図19:ワーファリンと納豆
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 では、このワーファリンとビタミンKについて、もう少し詳しくお話をしたいと思います。ワーファリン、さきほども言いましたが、心臓や血管に血栓ができるのを予防するお薬です。 脳梗塞の再発予防にも使われます。ワーファリンのパンフレットには、納豆や青汁、クロレラを食べないでください。と説明が書いてあるんですが、納豆の場合、 納豆菌が腸内でビタミンKを産生する可能性があります。このためワーファリンがまったく効かなくなることがあります。まったくです。効かなくなることがあります。 では、実際、どれくらい効かなくなるのか。ワーファリンを飲み始めるのはここですよね。で、下にいくほど血がサラサラということです。 この50のところにあるぐらいがちょうどいいんですが、ワーファリンを飲み始めて、だんだん量を調節し始めて、いい具合に血がサラサラになったな、 というところで納豆を食べる。そうするとどうでしょう。飲み始めた時と同じぐらいに、血がまたドロドロになっちゃってますね。 で、また、このいい感じのところに戻ってくるまでに、5日間ぐらいかかってます。せっかくワーファリンで血をサラサラにしても納豆を1回食べるだけで、 また血がドロドロになってしまう。で、それが普通の状態になるまでに1週間近くかかってしまうということがあります。なのでワーファリンを内服している方は、 納豆や青汁、クロレラは控えてください。で、どうしても納豆が食べたいひと、どうしても納豆を毎朝食べないと気が済まないというひとは、 自分で勝手に食べずに、医師や薬剤師にその旨を伝えてください。最近は3種類のお薬があるので、別のお薬にする方法もあると思いますし、 何か一緒に対応方法も考えることができると思いますので相談をしてください。
図20:嗜好品との相互作用
図20:嗜好品との相互作用
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図21:健康食品との相互作用
図21:健康食品との相互作用
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図22:相互作用を防ぐために
図22:相互作用を防ぐために
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 ここからは相互作用をもうちょっと詳しくお話ししたいと思います。食品や嗜好品と、薬の相互作用の例として、牛乳、牛乳にはカルシウムが含まれていますので、 ある抗生物質の吸収を抑制してしまいます。なので、抗生物質が出ているときは一緒に牛乳では飲まないようにしてください。 あと喫煙、喘息の薬や心臓の薬の効果を弱めてしまいます。アルコール、薬の効果を増強してしまいます。中毒になりやすい状況になってしまいます。 逆に長期に飲酒する方というのは、薬の効果を減らしてしまう効果もありますので、アルコールの相互作用に十分注意をしてください。 健康食品、飲まれている方も多いと思いますが、イチョウのエキス、血をサラサラにする作用があるんですけど、ワーファリンをはじめとする血をサラサラにする薬と一緒に飲むと、 血がサラサラになり過ぎる、出血傾向、脳出血になるかも知れません。セントジョーンズワート、うつを改善したり、寝不足を改善する健康食品なんですけど、 いろんなお薬に作用して効果を弱めてしまいます。抗うつ薬に対しては効果を強めてしまって、昏睡だとか、意識障害といった相互作用が知られています。 お茶として飲まれることが多い、カモミールティー、これはワーファリンの効果を強くしてしまいますので、出血しやすくなってしまいます。 なので、薬は水か白湯で飲みましょうということです。このほかにも、今挙げたのはほんの一例ですので、健康食品とか、食事、あと薬同士の相互作用も当然あります。 そういう相互作用から身を守るためにはどうすればよいかというと、ひとつはかかりつけ薬局を決めましょう。いまは、ほとんどの病院が院外薬局といって処方箋だけもらって、 薬局でお薬をもらうという形になってると思います。ついつい病院の前の薬局でもらってしまうことが多いと思うんですが、自分がいつもここの薬局に行こうというのをひとつ決めて、 そこでお薬をもらうようにしてください。それとお薬手帳をうまく使いましょうということです。
図23:お薬手帳のメリット
図23:お薬手帳のメリット
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図24:災害時に大変役立つ
図24:災害時に大変役立つ
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図25:常に携行しましょう
図25:常に携行しましょう
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 お薬手帳、どんなメリットがあるかというと、アレルギーや副作用を記入しておけば、それを見て、アレルギーや相互作用を回避できるということ。 あと、同じお薬が出されたり、薬同士の相互作用を回避することができます。2つ以上の病院にかかってるひともいると思いますが、同じお薬でも名前が違ってたりすることがあるんですね。 こういう病院ではこういう名前のお薬、こっちの病院ではこういう名前のお薬というのがありますので、それに気づかず同じお薬を飲まれている例もありますので、 そういったものを防ぐことができる。あと、いままでどういうふうに内服で治療してきたのかわかる。あと、外出時とかで万が一何かあって病院を受診した時に、 どんなお薬を飲んでいるのかがわかる。それと災害時の患者さん自身の名前や服用歴の確認ができる。 これは2011年の3月11日に起こった東日本大震災の時のパンフレットと写真なんですが、私も中国労災病院の医療チームの一員として被災地に行かせてもらったんですが、 お薬、津波で結構流されてる方が多かったんですが、お薬手帳を持って来られた方がいまして、そういう方はお薬手帳を見ながら同じようなお薬をこちらで選んで渡してあげることが出来ました。 お薬手帳、普段だけでなくて、災害時にも役立ちますので、ぜひ有効利用してください。で、上手な使い方、病院や薬局に行くときには必ず持参してください。 あと、気になることを記入とありますが、これは医師や薬剤師がお薬手帳を書くだけではなくて、患者さん自身にも好きなこと書いてもらって構わないです。 今日は体調がこうだったとか、こういうことが気になるんだってことを書いてもらって構いません。それと市販のお薬や健康食品とかもできるだけ書くようにしましょう。 で、1冊にまとめる。中には2冊や3冊、お薬手帳を持って来られる方もいるんですが、それだとお薬手帳を持っている意味ってあんまり半減してしまうんですね。 なので1冊にすべての情報をまとめるようにしてください。常にバッグの中に入れて、携帯をしておいてください。もうそろそろまとめになりますが。
図26:副作用のない薬はない
図26:副作用のない薬はない
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 お薬っていうのは、量が少なければただの異物でしかありません。異物っていうのは、薬としての効果はないんですが、副作用やアレルギーを起こす可能性があります。 意味ないですよね。身体に害があるもの。逆にお薬の量が多すぎると、副作用が出やすくなって毒になってしまう。薬として作用する濃度で薬を飲むことが大切です。 そのためには決められた用法や用量、服用方法を守ることが大切になります。最後のスライドですが、副作用のない薬はありません。 一般的には漢方薬は副作用がないと思われている方がいらしゃいますが、副作用あります。ビタミン剤、アレルギー等の報告あります。 なので副作用のない薬はありません。医師や薬剤師とうまく情報を共有して、有効かつ安全に一緒にお薬を飲んでいきましょう。以上です。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
豊田:  松田先生、ありがとうございました。
 非常に分かりやすくお話をしてくださったと思います。毒にも薬にもなる、ほんとにそういうことだと思いますし…。私、最初に彼のネタを取ったわけじゃないんでお詫び申し上げておきます。 ネタがかぶったところがありました。申し訳ありませんでした。さて薬ですが、お水で飲みましょうという話がありましたけど、実際の食事では、お茶も飲んでいますよね。 そのあとすぐお水で飲んでいればいいのでしょうか? それってお腹の中で混ざったりしないんですか? 薬を飲む時だけ水ならいいんですか?
松田:  えっと、混ざりますが…、お茶は、昔は鉄剤とかと一緒に飲むと、効きが悪くなるって言われてたんですけど、最近は、実はそういうことはなくてですね、 ほとんどお茶と薬の相互作用っていうのはないというふうに言われてますので、食事中に飲んでるお茶とかですね、お薬を飲んでもらう分には、 とくに問題ないと基本的には思いますが、もし、そういう方がいらっしゃったら、お薬をもらう時に、お茶で飲んでもいいですか、とか、というのをちょっと聞いてみてください。
豊田:  飲むときは水のほうがいいでしょうけど、そこはあんまり神経質にならなくてもいいということでしょうか。 気になさる方は、牛乳を朝ごはんのときに飲んで、そのあと効かなくなったらどうしようか、とか悩む方いらっしゃいますが、 そこまでは考えなくていいんでしょうか。
松田:  さっき紹介しましたように、グレープフルーツとかは3日、4日作用が続くことがあるんですが、牛乳は吸収するときだけに影響されますので、 薬と2時間ぐらい間を離してもらったら影響はほとんどないですので…。
豊田:  いろいろと今日のお話の中で、なるほどなっていうところがいっぱいありましたよね。ちょっと意地悪な質問なのですけど、 グレープフルーツ飲んだら薬が効きすぎるのであれば、グレープフルーツをちゃんと食べるから、薬の量を半分にしてくださいということはできないんですかね?
松田:  ん〜、そうですね。グレープフルーツもいろんな種類がありますし、買ったものによって量も大きさも違ってくるし…
豊田:  薬の量の調整が難しくなりますね。
松田:  そうですね。体調によってもお薬がどれくらい分解されるかも変わってきますので、(グレープフルーツは)食べないでください。
豊田:  患者さんの中には結構お薬の量が多い方いらっしゃいます。10種類ぐらい当たり前という方が実際にいらっしゃいますよね。 薬が10種類ある方は、これは1錠ずつコップ1杯の水で飲んでいたら、それだけで2リットル近くになりますから、 ご飯食べるよりお薬のほうが多いんですよって方もいらっしゃいます。手帳の話もありましたけど、やはり一つの薬局できちんと管理してもらえば、 無駄に要らない薬も減らすことが出来るかもしれませんね。毒にも薬にもなるって話もありますけど、 統合的に管理してもらうって大事だと思いますので、ぜひマイ病院であり、マイ薬局ってものを自分でちゃんと持ってですね、 管理してもらったほうがいいですね。
 松田先生、本当にありがとうございました。大きな拍手をお願いします。(拍手)
講演当時のものです)
 
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<−3.「健康管理と臨床検査よもやま話」

5.「詰まらない、切れない血管にする運動のコツ」->

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