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【講演】 「健康管理と臨床検査よもやま話」
トップページ第17回講演会>【講演】「健康管理と臨床検査よもやま話」

豊田章宏さん  それでは続けて「健康管理と臨床検査よもやま話」という演題の準備をしていただこうと思います。私は発表の役割を終えまして、司会のほうに専念をさせていただきます。
 さて、ここからはですね、脳卒中というものを知っていただいた上で、まずさっきの食事のこと、それから今日はですね、 検査のことも知っていただこうと思っています。人間ドックなどでもご存知と思いますが、ひと口に検査といいましても本当にたくさんのものがあります。 検査とはどういうものなのか、どういったことに気をつければいいのか、そういったお話を、実際に検査をやっている検査部のトップの方に伺いましょう。
 検査のよもやま話を聞かせて頂きますのは、中国労災病院の中央検査部部長、今日も検査部からは多くのボランティアの方にいらしていただいていますが、 そこの親分であります。親分の上林さんです。ありがたいお話を今日は期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

上林寛司さん 上林寛司
   中国労災病院中央検査部



 豊田部長、過分なご紹介をありがとうございます。リハビリ診療科の豊田先生のあとに、お話しするのは大変気が引けるのですが、本日は「健康管理と臨床検査よもやま話」というタイトルで、お話をさせていただくことになりました。 豊田先生のように分かりやすい、お話はできませんが、難しいお話は避けて、皆様の理解しやすい、お話をさせていただきますので、よろしくお願い致します。
 なお、リラックスしながら聞いて頂けたらと思います。臨床検査の話もしますが、よもやま話を、たくさんしたいと思いますので、皆様方に楽しんでいただけるスライドを何枚か用意してきました。
写真1:美保の松原から望む富士山
写真1:美保の松原から望む富士山
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 最初の写真は皆様よくご存知のフォーラムの会場の呉市の広公民館の写真になります。 次は富士山の写真になります。私は4月に、静岡県の労災病院から広島県呉市の中国労災病院に転勤と言う形でお世話になりましたので、 富士山と静岡県を紹介したいと思います。この写真は、静岡県の清水というところです。ここに美保の松原という非常に風光明媚な松原があり、その海岸に太平洋の荒波が打ち寄せています。 そこから眺めた富士山になります。8合目から上に雪をかぶっている冬の初めの富士山です。
 冬の空気が澄んだときには、白い富士山頂と裾野の青いコントラストを非常にきれいに見ることができます。 富士山は標高が3776mと非常に高い山ですが、近くに海が続いています。そして、駿河湾は3000mの深い入り江になります。3000m級の山の近くに3000mの深い入り江があり、 世界的にも非常に珍しい地形であると言われています。もうひとつは清水という場所です。非常にサッカーが盛んなところで、Jリーグのサッカーの清水エスパルスの本拠地が、この近くにあります。 今年は広島のサンフレッチェが頑張っていますが、清水エスパルスにも頑張ってもらいたいと思います。
 それでは、豊田先生から、ご依頼のありました、脳卒中フォーラムに関係した臨床検査の話をしてくださいということなので、気楽にお聞きいただければ結構だと思います。 皆様方は、17年間も続いている伝統のあるフォーラムに、ご参加されておられますので、脳卒中について、よくご存じの方が多いかと思いますが、あらためて脳卒中の原因になる動脈硬化と臨床検査、 これに的を絞って、お話をさせていただきたいと思います。
図1:コレステロールと動脈硬化
図1:コレステロールと動脈硬化
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 右側のスライドは、動脈血管のイラストです。水道のホースのような形をしています。縦切りにすると細長く、輪切りにするとドーナツの形をしています。 水道のホースの中は水が流れていますが、動脈の場合は血液が流れています。そして、血液の中にはコレステロールや脂、塩分など、いろいろなものが溶け込んでいます。 そして、余分なコレステロールなどが血管の内側の壁に付きますと、汚れが進んでまいります。スライドでは、黄色で示したところが汚れになります。 この汚れが、さらに進みますと、柔らかい血管の壁が硬くなり、いわゆる動脈硬化という状態になります。なお、血管の一番内側に被膜がありますが専門用語では血管内皮細胞、内側の皮膚の細胞という構造があります。 これは、サランラップのような薄い細胞の膜になっております。この一部が剥がれ落ちますと、その場所で血液の塊が出来ます。 血液の塊が大きくなりますと病態が進み、最終的には血液が通るところが塞がれてしまう状態になります。これは非常に危ない状態で、先ほど豊田先生がおっしゃられたように、脳梗塞。 心臓の血管であれば心筋梗塞といった恐ろしい病気を引き起こすことになります。
 さて、動脈硬化とコレステロールについては深い関係があります。そこで、イラストを利用して皆様方に提示させていただきたいと思います。 コレステロールには、大きく分けて2種類が知られています。ひとつは、LDLというコレステロールです。LDLコレステロールは、ゴミをまき散らすように、血管の壁に余分なコレステロールを溜めてしまい、 いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれているものです。テレビの健康番組でLDLコレステロールという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、LDLコレステロールが高い方は病気に気をつけてくださいねということは、 こういう状況がひとつあります。その反対に、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールがあります。皆様の体の中にも、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの両方が含まれています。 善玉コレステロールのHDLコレステロールは、血管の汚れの原因である余分なコレステロールを、お掃除してくれる働きがあります。 悪玉コレステロールや善玉コレステロールについて心配の方は、豊田先生の外来にかかっていただければ、血液を調べることによって、その数値を知ることができます。
図2:動脈硬化の臨床検査
図2:動脈硬化の臨床検査
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 次に、動脈硬化について検査室では、どのように検査をしているのか、お話をさせていただきたいと思います。首の付け根には、頸動脈と呼ばれる太い血管があります。 そして、心臓はポンプのような働きがあり血液を全身に送っていますが、その血液を頭のほう、つまり脳に送り込んでいる、血液の通り道が頸動脈になります。 この写真は、頸動脈を検査しているところになります。実際の検査は、ベッドに仰向けに休んで頂いて、首のところに、ぬるりとしたゼリーを付けます。 そして、超音波プローブと呼ばれる、10センチくらいの軽いプラスチックの器具を当てて検査が行われます。ぬるぬるしたゼリーを付けてプラスチックのプローブを当てますので、 痛みは、まったくありません。だいたい20分ぐらいで検査は終わってしまいます。お食事の制限もありませんので、ご飯を食べたあとでも十分に検査ができる状況です。 超音波の検査では、機械のモニター画面を見ながら頸動脈の様子を観察して、動脈硬化になっていないかを判断していきます。 では、実際の検査では、どのように判断するのかということを、お示しします。スライドに、頸動脈が映し出されています。さきほどの水道のホースのような形をしております。 頸動脈の中に、青い色が付いています。これは、血液の流れているところを超音波の機械のモニター画面に青く色を付けることができるからです。 そして、よくご覧になって頂きますと、青い色が付いてない黒いところがあるのを、確認して頂けると思います。 この場所は、血液が流れていない、つまり黄色い汚れが溜まった、頸動脈の動脈硬化の部位になります。さらに、別の場所に、明るくキラリと光ったものがありますが、これを石灰化といいます。 石灰化は血液中のカルシウム成分が血管の壁に蓄積した状態です。このように、超音波の検査は、動脈硬化の様子を、ミリ単位の精度で詳細に観察することができます。
図3:コレステロールと動脈硬化
図3:コレステロールと動脈硬化
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図4:調査結果
図4:調査結果
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 次のスライドは、去年の正月から5月まで、静岡県の労災病院で、男性53名、女性41名、合計して94名の方を超音波の検査をさせて頂きました。 年齢は、16歳から84歳までになります。そして、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比率を求め、頸動脈の動脈硬化と、どのような関係があるのか調べさせて頂きました。 超音波検査では、頸動脈の内側のサランラップのような薄い膜、内膜中膜複合体が超音波医学会の基準の1.1mmより厚みがあるか計測しました。
 次のスライドは、集計結果です。善玉コレステロールよりも悪玉コレステロール、つまりお掃除をしてくださる人よりも、ゴミを撒き散らす人が血液の中に何倍あると、 頸動脈に動脈硬化の所見があるのかということの一覧表になります。善玉コレステロールより悪玉コレステロールが2.5倍以上あると、80%ぐらいの確率で、頸動脈が厚くなるということが分かりました。 2.5倍という数字は覚えにくいので、3倍を目安にして頂ければ、よいと思います。善玉コレステロールと悪玉コレステロールの比率が、3倍を超えていると動脈硬化の可能性があるとうことになります。 ただし、全員の方の頸動脈が完全に塞がれている状態ではありません。超音波検査は、1mm程度の薄い膜を識別できる能力を備えていますので、多くの方は2mmとか3mmぐらいの程度です。 そして、これ以上、病態が進行しないように、治療をしていただくことが大切であると思います。
 いろいろと、お話をさせて頂きましたが、動脈硬化の予防には、どうしたらいいのかということですが、豊田先生から、お話がありましたように、 いろいろな生活習慣を改善して頂くということが大切になります。まずひとつは、バランスのよい食生活です。お肉ばかり食べている方、脂っこいものが非常に好きな方は、 気をつけていただくとか、あるいは塩分が高いもの、おしょうゆをかけすぎたりしないということ。そういった形で毎日の食生活に気をつけていただくことが何より大切ではないかと思います。
上林寛司さん  次に、適度な運動です。オリンピックやスポーツ選手のような運動をする必要は、ありませんが、HDLの善玉コレステロールを増やすことになりますので、非常に大切なことであります。
 最後に禁煙を書かせていただきました。タバコの煙は、呼吸器や喉、肺に悪い影響を与えることは、感覚的に分かると思うのですが、肺の組織は、 気管支から細気管支に枝分かれして、最終的に肺胞という非常に微細な、ぶどうの粒の様な構造まで、たどり着きます。タバコを吸う方は、朝、昼、夜も吸って、 ほとんど毎日、習慣的に繰り返していると思います。習慣的にタバコを吸っていますので、タバコの煙が肺胞に送られて、慢性の炎症を発生する可能性が高くなります。 慢性の炎症が起きますと、マクロファージと呼ばれる特殊な白血球が体の中で活性化されます。すると、マクロファージが、悪玉コレステロールを食べ込みながら血管の内側の内皮細胞に付着して、 血管の壁の厚みを増やすという状態を招きます。そのため、動脈硬化を気にされる方は、タバコを控えたほうがよいと思います。
 いろいろ、お話をさせて頂きましたが、要は、動脈硬化については、まず、検査を受けていただくということ。 そして、日常の生活に関して、食生活であるとか、運動であるとか、そういった健康管理に気をつけていただくということが重要になると思います。
写真2:朝霧高原から望む富士山
写真2:朝霧高原から望む富士山
写真3:田貫湖から望む富士山
写真3:田貫湖から望む富士山
写真4:ダイヤモンド富士山
写真4:ダイヤモンド富士山
写真5:御殿場から望む富士山
写真5:御殿場から望む富士山
写真6:御殿場の夜景
写真6:御殿場の夜景
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 さて、病気の話をしていますと、気分が暗くなってまいりますので、よもやま話をしたいと思います。気分転換も健康には非常に大切ですので、旅行気分を兼ねて、 私のふるさとの富士山の写真を、ご覧になっていただければと思います。
 この写真は、朝霧高原と呼ばれる場所で、西側から眺めた富士山になります。朝の早い時間に朝靄が立ち込めて、東の空がピンク色に染まっているときの富士山です。 朝霧高原は、標高600mの高原で朝霧牧場があります。そして、北海道のような雄大な景色の場所であります。朝霧高原は富士山に近いため、天気のよい日は、 このように、富士山を非常に大きく見ることができます。
 次の写真は、田貫湖から眺めた富士山です。田貫湖は、さきほどの朝霧高原の近くにあります。そして、田んぼを貫く湖という文字になります。 その意味は、農業用水の灌漑のために人工的に作られた湖に由来します。天気がよい日には、鏡のような水面に富士山が映り出されます。 これは、逆さ富士山と呼ばれています。なお、田貫湖の周囲は、キャンプ場が整備されていて、私の子供が小学生の頃は、よくここで、キャンプ生活を楽しみました。 快適なキャンプ生活を楽しむことができる場所が富士山の近くに整備されております。
 次の写真は、先ほどの田貫湖から眺めた富士山ですが、これを、ダイヤモンド富士山と呼びます。これは貴重な写真です。田貫湖から東の方向に富士山がそびえています。 そして、富士山の頂上から、朝日の太陽が昇っている瞬間の写真です。ダイヤモンド富士山は、夏と冬のお天気の素晴らしくいいとき、年に2回しか見ることができません。 本日、この会場にお集まりになられた皆様は、きれいなダイヤモンド富士山を見ることができて、大変に運のいい方です。ぜひ宝くじも当たっていただきたいと思います。 なお、5月に皆既日食がありましたが、お日様の天体ショーといったものは、とても印象に残ります。
 次の写真は、南東方面から眺めた富士山になります。この場所は御殿場プレミアムアウトレットという場所です。広い敷地にブランドショップが200店舗ぐらい並んでいます。 ゆっくりと半日ぐらい、お買い物を楽しむことができる場所です。箱根温泉にも近く、休日には、東京方面から多くのお客さんが訪れます。 私も、静岡県に住んでいたときには、年に2回ほど、嫁さんと娘を連れて、出かけていました。富士山は、日本の山ですが、不思議なことに西洋風の建物の町並みにも、まったく違和感がなく自然に溶け込んでいます。
 さて、富士山の最後の写真になります。先ほどの御殿場から、夕闇の時間帯に眺めた富士山です。呉市にも、夕日や夜景が非常に有名なところがあるようです。 富士山は非常に高い山のため、てっぺんに北風の偏西風が吹きますと、こういうふうに雲がかぶって、だんだん頂上が見えなくなってきます。 富士山のふもとの御殿場の市街地に明かりがキラキラ輝いて、宝石箱のようにきれいな夜景を見ることができます。様々な表情を見せる富士山を紹介させていただきました。
 私の話はこれで終わりますので、皆様方は健康管理に気をつけながら、元気にお過ごし頂ければと思います。どうも、ご静聴ありがとうございました。(拍手)
豊田:  上林部長ありがとうございました。さっき親分と申し上げましたが、当たってましたね。清水の親分ですね。(上林「違う違う」の素振り)  上林さんは浜松から転勤されたのでしたね。沢山の富士山のきれいな写真は部長がご自分で写真撮られたんですか?
上林:  私が撮りました。
豊田:  素晴らしい写真ですよね。スライドの中の悪玉コレステロールは悪そうな顔をしてましたね。
上林:  (客席のほうに向かって)悪玉コレステロールは、すぐに調べることが出来ますので、ご心配の方は、豊田先生のところに受診して頂き、 血液検査をオーダーして頂ければ、いつでも、いたしますので、よろしくお願い致します。
豊田:  あのう、皆様方、多分、健康診断とかですね、採血をして血液の結果をポンッと貰われてもなかなかどう見ればいいか、分からないことがあると思うんですよね。 今日はそういったお話も分かりやすく伺えました。病院の診察ですと、お忙しい先生が多くて「ハイ」って結果だけ渡されて、その時に説明されるのだろうけど、 後でよく覚えてないよということがあると思いますね。HDLとか、LDLとか、いわゆる善玉、悪玉。そういったデータの見方の解説パンフレットなどがあれば、 またあとでじっくり見て分かりやすいと思います。できたら面白おかしく書いたパンフレットでも検査部で頂ければ皆さん喜ぶかもしれません。 また企画をして頂ければと思います。
上林:  分かりました。検討してみたいと思います。
豊田:  いろいろありますが、自分の健康ですからね。理解をするということが大事でしょう。本当に今日はお忙しい中、お話ありがとうございました。 もう一度大きな拍手をお願い致します。(拍手)
講演当時のものです)
 
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