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【講演3】 呉市脳卒中再発予防事業について
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豊田: 豊田章宏  休憩時間の間に外で体操コーナーとか、保健室コーナーとかに行ってもらったと思いますけど、そろそろご着席いただいてよろしいでしょうか。 どうか焦らずに席にお戻りください。ゆっくりでいいですよ。ここで転んじゃ仕方ないですからね。
 さて、本日の後半の演題を始めたいと思います。まずは、呉市が行っておられる様々な健康事業の中から、脳卒中の再発予防に関する事業を紹介していただきます。 全国でも自治体がこういった事業を積極的に行っているのは珍しいと思います。 呉市がこういうことを一生懸命やっているのは、もちろん根本には医療費を下げたいという財政的な思惑もあるかも知れないですけど、市民が健康であって欲しいと願う優しい行政という風に前向きに捉えたいと思います(笑)。 行政が一緒に健康づくりをやってくれるのは素晴らしいと、実は国から呉市は表彰もされています。 今日は呉市が行っている脳卒中再発予防事業について、呉市福祉保健部保険年金課の管理栄養士であります前野尚子さんにお話いただきます。 それではよろしくお願いいたします。

写真・前野尚子さん 前野尚子 さん
   呉市福祉保健部 保険年金課 管理栄養士



 はい。みなさんこんにちは。私は、呉市の保険年金課で管理栄養士として勤務しております前野と申します。今日は朝から天候も良く、豊田先生もおっしゃいましたけど、実は今日は呉市ウォーキング大会の日でした。午前中は歩かれましたか?(会場から反応が…) あ、ありがとうございます。私は歩いてないんですけど(笑い)、はい。
 今日は呉市が今年度から取り組みを始めました、呉市脳卒中再発防止事業についてご紹介していきたいと思います。その前に、どうしてこういった事業を呉市がするようになったかを簡単に説明していきたいんですが、まず呉市について振り返ってみたいと思います。
図1:呉市について
図1:呉市について
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 みなさん呉市にお住まいの方だと思いますので、もう十分にご存知だと思うんですけど、まずは人口、現在23万6千人程度です。 かつては、軍港があったりして非常に栄えた街でした。一番多い時には40万人いたそうです。私は昭和47年生まれなんですけど、子供の頃、呉のレンガ通りに父親に肩車をしてもらって歩いた記憶があります。 見渡す限り遠くまで人の頭だらけだった記憶があります。それぐらい呉の街ってのは昭和50年代ぐらいは、とても栄えていたなあっていう、なんとなくですが記憶があります。
 私、保険年金課に所属しておりまして、どんなことをするかといいますと、国民健康保険の運営をしているわけなんです。 その国保に加入して頂いている方が、いま5万4千人ぐらいです。人口の約23%。高齢化率ですけれど、さきほど包括支援センターのほうから説明がありましたが、 実は日本全体では65歳以上の高齢化率、3人に1人が高齢者になるのが、約10年後2025年なんですけど、実際呉はすでになっています。 ご覧のように高齢化率は32%、3人に1人が高齢者。同規模の人口の都市では、なんと全国では1位となっております。 ちなみに、国保に入られている5万4千人のうちの高齢化率でいうと、47%の方が65歳以上。ほぼ半数の方が65歳以上という現状です。
図2:呉市国民健康保険の医療費等の状況
図2:呉市国民健康保険の医療費等の状況
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 そして、その呉の医療環境ですが、国保の医療費は1人当たり42万5千円。これは国や県より高いレベルとなっています。 また、医療施設の環境ですけど、施設数、それからベッド数も、国や県の水準からいきますと非常にいい、高い水準です。 その背景には、先ほど言いましたように、旧軍港の歴史を持った、充実した医療環境がそのまま残っているというような街でございます。 これは1人当たりの医療費ですけど、青い棒グラフが呉市、真ん中の赤い棒グラフが県、黄色い棒グラフが国、全国の1人当たりの医療費です。 ご覧のように年々増えています。しかも呉市の水準は非常に高い、医療費がとてもかかっている街でございます。
図3:脳卒中とは?
図3:脳卒中とは?
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 今日のテーマであります、脳卒中のおさらいをしてみます。脳卒中は血管が破れたり、詰まったりして起こる病気です。 この図のように血管が脳の中で破れると脳内出血ですとか、くも膜下出血。血管の中が詰まってそれ以降血液が行かなくなってしまうと脳梗塞となります。 よく脳卒中になられた患者さんの中には、脳卒中ていうのは脳の何か異常の病気でしょう?というふうに思ってらっしゃる患者さんも中にはいらっしゃるんですが、 実は、脳卒中は脳の血管の病気です。血管の病気が動脈硬化からくるものであれば、同時に心臓の狭心症ですとか心筋梗塞、 または腎不全などにも注意することが大事な病気です。
図4:脳卒中の状況(全国)
図4:脳卒中の状況(全国)
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 それから脳卒中の状況、これ全国なんですけれど、日本人の死亡原因です。現在ではですね、悪性新生物が1位。癌ですね。癌で亡くなられる方が一番多い。 続いて心疾患。それから肺炎。4番目に脳血管疾患、脳卒中となってます。
 今日のテーマの脳血管疾患、脳卒中は、かつては日本人が亡くなる原因の第1位でした。 しかし医療の進歩のおかげでなんとか急性期、発症してすぐの時期は乗り切れるようになってきたというのが死亡原因として下がってきたと言われております。 しかし、食事をはじめとした生活習慣の欧米化ですとか、高齢化によって脳卒中の中でも、実は脳梗塞は以前より増えているという状況にあります。
図5:脳卒中の状況(呉市)
図5:脳卒中の状況(呉市)
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 そして、先ほどは全国でしたけど、これは呉市の状況です。呉市の住民の方の死亡原因は、ご覧のように癌、心疾患、肺炎、脳血管というふうに順位は同じです。 ただしグラフを見ていただきたいんですけれども、人口10万人当たりに換算しますと、やはり県ですとか、全国よりも高いレベルで脳卒中で亡くなられている状況です。
図6:脳卒中と介護(1)
図6:脳卒中と介護(1)
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それから包括支援センターの方からもお話がありましたが、脳卒中と介護の関係ですけど、これちょっと古いデータですけど、 65歳以上で要介護になった原因疾患はご覧のように脳血管疾患がもっとも多く、続いて高齢による衰弱、転倒・骨折、痴呆、関節系の疾患、などとなっております。 ご覧のように介護が必要となる原因というのは、この脳血管疾患がもっとも多いということが分かります。
図7:脳卒中と介護(2)
図7:脳卒中と介護(2)
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 またさらに、介護度別の原因疾患ですけど、こちらから介護度の軽いほう、それから介護度1、介護度2とこちらのほうが重症化してくるものなんですが、 それが原因疾患の多い順に並べたものです。比較的軽い程度の要介護者には、高血圧とか関節症などといった原因疾患なんですが、 重度になればなるほど脳梗塞が上位になっていきます。つまり脳梗塞と言うのは、介護の原因ともっともなりやすい病気で、 しかも重度の介護を必要とする病気だといえます。
 ではなぜ、脳卒中はいまだ死亡原因の上位で、しかも介護を必要とする状態となる病気なんでしょうか。 その1つは、実は再発ということがキーワードとしてあります。実は、脳卒中というのは再発しやすい病気なんです。年間の再発率は約5%。 つまり発症後1年間で20人に1人の方が再発する。10年間では半数の方が再発するというデータもあります。これが癌ですと、年々、歳をとればとるほど、 再発ですとか、転移というのは少なくなるというイメージがあって、同じようなイメージを持たれている場合があるんですけど、 脳卒中のほうは逆でして、歳をとればとるほど、再発しやすいというのが特徴のひとつとしてあります。
図8:脳卒中の危険因子
図8:脳卒中の危険因子
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 脳卒中の危険因子、脳卒中になりやすいファクター、危険因子というのがオレンジ色の部分でして、高血圧ですとか糖尿病、メタボリック症候群、慢性腎臓病=CKDなどです。 あと睡眠時無呼吸症候群、心房細動、脂質異常症、というような危険因子というのがあります。 この危険因子を複数持てば持つほど再発の危険性も増加すると言われています。 逆に言うと、こういった様々な慢性疾患、危険因子をコントロールすることによって、再発を予防していくことが可能ということです。 そのコントロールするためには、ご覧のような生活習慣、もちろんその前に、継続的に治療に通っていただくことが大前提で、それプラス生活習慣の改善というのが非常に大事になってきます。 具体的にはですね、食事、タバコ、それから水分を適切に摂ること、それからアルコールを適切に摂る、またはストレスの管理ですとか、運動といったような生活習慣を改善していくことがカギになります。 さきほど脳卒中の種類別の絵で、脳の血管の病気と申し上げましたけど、まさにこれらの食事ですとか運動、ストレス、お酒、水分の摂取、タバコなどを、 適切に日常生活の中でしていくということは、身体の中の血管の状態を良くしていく、つまり脳や心臓の血管の病気を防ぐということになります。
図9:呉市脳卒中再発予防事業について
図9:呉市脳卒中再発予防事業について
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 私たち国民健康保険では、今年度から脳卒中再発予防事業というのを始めました。これを今日、具体的にお話していこうと思います。
 まず、この事業の目的なんですけれど、呉市の国民健康保健に加入していただいて脳卒中の退院後、自宅に帰られて生活されている方で、 定期的に通院されている方へ、脳卒中の再発予防、重症化予防のための保健指導プログラムを提供すること。 それから市民の誰もが身近に生活習慣の改善等を図ることが出来る場を、豊田先生率いる脳卒中のワーキンググループとの連携によって整備してその再発を予防し、 患者や家族の生活の維持・向上を図ること。または市全体の健康寿命の延伸を目標としてやっております。 取り組みの内容ですけど、脳卒中の再発予防プログラムの実施、それから地域連携パス、これは豊田先生がおっしゃられた地域連携パスとは別のもので、 どちらかというと自己管理手帳ですけれど、そういったものを作成すること、それから市民の誰もが身近に生活習慣の改善を図ることができる場を整備すること、 などが取り組み内容です。
図10:呉市脳卒中再発予防事業イメージ
図10:呉市脳卒中再発予防事業イメージ
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 脳卒中再発予防事業のイメージですが、まず脳卒中を発症されますと、救急車で病院に運ばれます。 急性期の病院に運ばれてそのまま自宅へ帰られる場合、または急性期病院から回復期のリハビリ病院のほうに転院されて、そこから自宅に帰られる場合、 そういった場合に、各病院から本人さんの同意を取っていただいて、呉市に連絡をいただきます。 そして呉市のほうは、その方の生活期のかかりつけの先生と連携をしながら患者さんへですね、看護師さんですとか、薬剤師さん、 それから歯科医師と連携を取りながら保健指導を提供していくというものです。
図11:脳卒中再発予防プログラム
図11:脳卒中再発予防プログラム
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 で、実際プログラムというものがどういうものかと言いますと、おおまかに言うとこの三者が関わります。 まず患者さん、参加される方ですね。国保の加入者で脳卒中を一度発症されて、自宅でいま生活されている方。それから、そのかかりつけの主治医の先生。 それから私ども市役所の保険年金課、国民健康保険から派遣します看護師さん。ここでは疾病管理ナースと言ってるんですけど、専門の看護師さんを派遣します。 で、何をするかと言いますと、患者さんは、これまで通りかかりつけの先生のところへ通っていただいて治療を受けていただくというのは変わらずにやっていただきます。 そして私どものほうから、先生のほうに患者さんに対する生活指導の指示をいただいて、それを保健指導として看護師さんが、患者さんに分かりやすく説明して、 取り組んでいただきます。患者さんは生活習慣の改善に取り組んでいただく、そしてその取り組み内容、指導した内容を先生にもきちんと報告をさせていただいて、 この循環がうまく回るようにやっていくというものです。
図12:脳卒中再発予防プログラム
図12:脳卒中再発予防プログラム
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 脳卒中の再発予防にまず一番大事なことは、この3つと言われております。 まず高血圧の治療、それから脂質異常症の治療、糖尿病の治療、この3つの基礎疾患をコントロールしていくこと。 それに加えまして、様々な要因もコントロールしていかなくてはいけません。 不整脈の治療や、肥満を是正すること、アルコールの摂取量を適正化していくこと、または禁煙すること、CKD(慢性腎臓病)、腎臓の機能を保っていくこと、 または睡眠時無呼吸症候群の対処をしていくことです。しかしこうした生活習慣の改善には、様々な誘惑を断ち切る勇気ですとか、アルコールやタバコ、 お菓子などの依存性の強いものから脱却する強い意志ですとか、またはまったく今まで聞いたことがないような病気、CKD(慢性腎臓病)ですとか、 睡眠時無呼吸症候群ですとか、あまりよく分からない病気への対処法を知って実践する行動力が必要となってきます。 これをひとりの患者さん、その家族の方たちだけで実践していくというのは非常に難しいことです。しかし、私たちが提供するプログラムは、 実は、広島大学の保健学の森山教授によって開発されて、その効果も実証されているものです。さきほど主治医から指示をいただくと言いましたが、 その主治医の指示のもと疾病管理ナースと検査結果などを確認して、その参加者の方に合った食事や運動などの取り組みの方針を決めます。 方法としては面談と電話。6ヶ月の個別指導です。とくに強調したいことなんですけど、ご本人さんだけでももちろん結構なんですけど、 できればご家族の方もご一緒に面談に立ち会っていただきますと、効果が出やすかったり、取り組みが続きやすかったりします。 それからこのプログラムの本人さんの参加費は無料です。 教材はテキストと健康管理手帳をお渡しします。参加者の方は自分の取り組みを主治医や疾病管理ナースに知ってもらうことによって、 さらにモチベーションが継続できる、その取り組みを習慣化できる、というような流れになっています。
図13:脳卒中再発予防プログラム・概要
図13:脳卒中再発予防プログラム・概要
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 これは実際の面談指導の時の写真なんですけど、こういった感じの看護師さんを呉市から派遣させていただきまして、じっくりと、1時間から1時間半程度、 その方の生活状況をお聞きしながら、今後の方針、どのようにしたらいいのかという話し合いをしていきます。 ちなみにこの男性の方は参加者、患者さんになられるんですけど、この日はちょうど奥さんも来られて、ご家族で面談を受けられてる風景です。
図14:地域総合チーム医療
図14:地域総合チーム医療
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 そして今年度から本格的に取り組んでますのが、この地域総合チーム医療というものです。 さきほどの患者さん、それから疾病管理ナース、それから主治医の先生、という三者が基本的にこれまでやってきたものに、 今年度から薬剤師さんによるお薬相談を受けられるようにしたり、歯周病ケアのために歯科医師の先生に入っていただいて、 歯周疾患の検診を無料で受けていただけるように整えております。こういった患者さんに対して看護師であるとか、主治医の先生はもちろんですけど、 薬剤師さん、歯科医師さんが関わることによって、その方の健康を維持していただくというような仕組みを今年度から始めております。 それを今、地域総合チーム医療として進めているところです。
図15:健康管理手帳について
図15:健康管理手帳について
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 そして教材のひとつとしてお渡しする健康管理手帳なんですけれど、ご覧のようなピンク色のこれコッピーちゃんと言って、私たち国保のキャラクターなんです。 これが印刷されたピンク色の手帳をお渡しします。どんなものかといいますと、参加者の方が日々の記録を取ってもらうものです。体重ですとか血圧、脈とか服薬、 お薬飲んだかというようなもの、むくみがあったか、息切れがあったか、なんかを出来る範囲内で、もちろん毎日がベストですけど、 難しいようでしたら週に1回とか、2週に1回ですとか、そうした形で記録していくこと、それからその日の出来事ですとか、気が付いたこと、 昨日よく食べ過ぎたですとか、ちょっとしんどかった、というような気づきを、ちょっとしたメモとして書いていただくような手帳です。 それを、面談のときに看護師と一緒に見て、確認し合ったりですとか、定期受診の際にかかりつけの先生に見ていただいて、 確認をしていただくことによって、より治療の参考になるものです。ちなみにこれは糖尿の方へのページですけど、足裏の感覚、 糖尿病の合併症のひとつとして神経障害というのがありまして、末端の神経が感じなくなるものなんですけど、 こういうように足裏をチェックしてこの部分の感覚があるかどうかというのを、またどこに傷があったか定期的に自分でチェックして記録していくものです。 こういった手帳を、呉の地域対策協議会で作製しまして、参加者の方にお渡しをしております。
図16:地域に根ざす健康づくり事業
図16:地域に根ざす健康づくり事業
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 そして再発予防といいますと、一度発症した人だけが対象となってしまう事業なんですが、呉市としては発症を防ぐ事業も行っております。 こちらの地域に根ざす健康づくり事業というんですが、これはみなさんお住まいの地域の自治会と、または運動普及推進員さんですとか、食推さんですとか、 様々な地域団体があると思うんですが、そういった方々と私どもがお手伝いをさせていただいて、地域ぐるみの独自の健康づくり活動をしていただいております。 メニューとしましては、健康診断を受けようという声掛けをしていただいたりですとか、様々なこういったウォーキングですとか、健康教室、 地域独自の健康づくり事業をしていただくというような事業をしておりまして、目指すところは元気な市民、元気な地域、 それから元気な呉市というのを目指してこういった事業を実施しております。
図17:呉市は表彰されました
図17:呉市は表彰されました
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 そして、さきほど豊田先生からもお話がありましたが、このような取り組みというのは実は呉市は国ほうから表彰を昨年度受けました。 この第2回健康寿命をのばそう!アワードというので、自治体部門としては一番いい賞であります優秀賞をいただいております。 ちなみにこれ表彰式の写真なんですけど、こちらが歌手の平原綾香さんと、こちらが呉市の副市長が表彰式に行って表彰状を頂いております。
図18:糖尿病性腎症等重症化予防事業
図18:糖尿病性腎症等重症化予防事業
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この表彰を受けた事業といいますのが、今日説明いたしました脳卒中の再発予防事業の前段階にありました糖尿病性腎症の重症化予防事業でして、 この糖尿病性腎症というのが糖尿病合併症のひとつで、重症化しますと人工透析を必要とする病気となります。それを、その手前の方、糖尿病性腎症の3期とか、 4期の方、またはもっと軽い方に、保健指導プログラムを提供することによって、人工透析にいかないように関わっていくという事業でございます。

図19:糖尿病性腎症等重症化予防事業の結果
図19:糖尿病性腎症等重症化予防事業の結果
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 そして、さきほどの脳のときと同じようなプログラム、看護師さんを派遣して生活習慣の改善をしていくというようなプログラムですけど、 この糖尿病性腎症もすでに5年目でして、ある程度の成果が出ております。その一部なんですけど、こちら血糖値ですが、6か月間プログラムをするんですが、 その最初の時点ですね、血糖値、HbA1cですけれど、低いほどいいものなんですが、8.0以上の悪い方15人ほどいたりですとか、 7%台の方で合併症が起こりやすいような方19人いたりですとか、そういう状態だったんですが、プログラムをされて6か月後にですね、 この白い列はそのまま数値は維持しました方で、グリーンのところが良くなった人です。赤い方が、少し悪くなられた方。 トータルしますとだいたい9割以上の方が血糖値のほうは維持・改善をされております。
写真・前野尚子さん  それから同じくこのeGFRというのは腎臓の機能を示すものですけれど、このG1からG4までありますが、開始時にはこのような分布です。 これ4になるほど悪い、腎臓の機能が落ちているというものなんですが、なんと4の方でも6か月後には1つステージがよくなっている。 この腎機能は、悪くなった方はいなくって、どのステージの方も100%の維持・改善という結果を得ています。いうようなことが、ひとつは評価され、 また、主治医の先生ですとか、様々な関係者の方々と連携をさせていただいたことが評価されて受賞をさせていただいております。
図20:人工透析者数年次推移
図20:人工透析者数年次推移
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 そして人工透析、これ国保の方だけで集計をしてるんですけど、全体では150人ぐらいいましたのが、事業を始めました平成22年度以降は、 徐々に減っております。この濃いブルーの部分が毎年新規に人工透析を開始された方なんですけど、こちらのほうも減少傾向にあるいうふうに結果を得ております。
図21:特定健診・がん検診
図21:特定健診・がん検診
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 そして、そろそろ最後ですが、何度も言いますが、脳卒中再発予防事業ですけれど、脳卒中を起こした人ばかりではなく、脳卒中を起こさないようにしていただくためにも呉市のほうは、健診といった行政サービスをおこなっております。
 まず1つは特定健診です。これは40歳以上の方が対象で、それぞれ医療保険者にすることが義務付けられています。 我々国保でしたら国保に加入していただいてる方、社会保険ならその加入者へしなくてはいけないというもので、生活習慣病とか、 メタボリック症候群の予防改善のための健診です。またがん検診のほうは、呉市にお住まいの方で、それぞれの疾患ごとの年齢対象の方が対象となります。 がんの検査をして、早期発見、早期治療を目的としている検診です。
図22:特定健診
図22:特定健診
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 で、特定健診のほうはご覧のような項目をするようになっておりますが、呉市は、ここへ呉市独自の項目を追加しておりまして、赤字なんですけど、 今日ぜひみなさんにお伝えしたいのはこちらです。尿検査で推定食塩摂取量というのをしております。これ何かといいますと、 尿検査をすれば要は1日摂った塩分量が何グラムか分かるというものです。実は脳卒中予防もなんですけど、呉市は減塩をいま強く進めておりまして、 その一環としてじゃあ実際どれくらいみなさんが塩分を摂ってらっしゃるのかというのを手軽に分かる方法として尿中の推定食塩摂取量という検査をやっております。 これ呉市独自のもので、特定健診を受けていただくともれなく検査できますので、ご自分の摂ってる塩分を知るためにも、ぜひ受けていただきたいものです。
図23:保健指導事業
図23:保健指導事業
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 それから、私ども健診を受けてもらうだけで終わりではなく、その後、様々な保健指導を行っております。 特定保健指導、メタボに関する指導ですとか、それぞれ病態別ですね、血圧とか血糖とか、脂質異常が気になる方へ教室形式で健康教室をしたり、 メタボではないんだけど、特定の検査項目、たとえば血糖値が異常に高いですとか、肝機能が悪いっていうような方に、訪問などで指導させていただいております。 またはさきほどの糖尿病性腎症などへの、ハイリスクな方への保健事業。それからこれ「しおヘルス」と読むんですけど、 塩減ルス教室といって、先ほどの尿の検査で少〜し塩を摂り過ぎてるかな、なおかつ血圧が高いかな、ちょっとこのままでは危ないかもって方に、 実際にどうやって塩を減らしたらいいのかていうのを、お伝えする教室なども行っております。
図24:コッピー
図24:コッピー
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 ざっと説明させていただきましたが、呉市では住民の方々へ、その健康を願って様々な保健事業を実施しています。 実はこのコッピーというキャラクターですけど、広島の国保連合会が作ったもので、ちょっと許可を得まして、呉市バージョンとさせていただいてます。 どのあたりが呉市バージョンかといいますとここです。このローマ字部分を勝手に書き込みました。 ケー(K)、ユー(U)、アール(R)、イー(E)、エス(S)、エイチ(H)、アイ(I)、呉市(KURESHI)なんですけど、私の職場の同僚が作ったものなんですが、 実はここに私どもの願いが込められています。このKは「健康」のK、それからUreshi、 これこのままローマ字読みしますと「うれし」、「健康嬉しい」「呉市」という願いを込めて、この呉市版のコッピーを作っております。
 どうか私どもが保健事業ですとか、健康診断、お声掛けすることがみなさんあると思いますが、 その際はぜひご理解いただいて積極的にご参加をいただきますようにお願いいたします。今日はどうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

豊田:  前野さん、どうもありがとうございました。トレードマークはコッピー、国保のコッピーなんですね。
前野:  はい、そうです。
豊田:  形をみるとコッペパンに似ていますけど、コッペパンのコッピーじゃないしなあ、何だろうなって思って拝見していたのですが、「K-うれしい」ということで、呉市の皆が嬉しくなればいいですね。
 さて、血圧とか、糖尿とか、肥満とか、これらに関しては、誰もがキチンとやらなきゃいけないことは理解しているし、やれば確実によくなることもわかっているのだけれども、 同時になかなか自分ではできないのもよくお分かりで、そんな時に看護師さんとか保健師さんがサポートしてくれる、つまり家庭教師役というか指南役をしてくださるというプロジェクトと理解していいですか。
前野:  はい。
豊田:  この事業への参加申込は、まだ間に合うのでしょうか?
前野:  脳卒中に関してはまだ受付をしている状態。病院から連絡をお待ちしている状態。
豊田:  かかりつけの病院を通して申し込むのですね? 患者さんが直接申し込むことはできないのですね?
前野:  できれば病院からのご連絡で…
豊田: 写真・豊田章宏  分かりました。では、そういう機会がありましたら、みなさん是非ご参加頂いて再発予防に成功していただきたいですね。 なかなか自分一人ではできないですからね。
 前野さんの話もそうですけど、だんだん行政も交えて,医療も福祉も地域ぐるみで一緒にやろうっていう雰囲気になってきています。 そういう意味では、呉は幸せな環境にありますから、あとは住民のみなさんも一緒になってですね、より積極的に予防とか、再発防止ができればいいと思います。
 それでは、前野さん、どうもありがとうございました。
前野:  ありがとうございました。(拍手)
講演当時のものです)
 
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