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手始めに 高血圧から 治しましょう
トップページ第20回講演会>手始めに 高血圧から 治しましょう

豊田:
図9:脳卒中予防十ヶ条
図9:脳卒中予防十ヶ条
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 脳卒中の予防十ヶ条という形で脳卒中協会がまとめておられます。これに準じてチェックしていきましょうね。皆さんのお手元にある小さなパンフレットがありますが、是非それを見ながら聞いてください。一緒に復唱してもらうといいですね。
 1番目に「手始めに高血圧から治しましょう」とあります。先ほどから出ていますように高血圧が一番怖い病気です。
 2番目には「糖尿病放っておいたら悔い残る」とあります。その通り!
 3番目は「不整脈見つかり次第すぐ受診」です。さきほど松田先生から説明のあった不整脈ですね。
 4番目は「予防にはタバコを止める意志を持て」、この意志が皆さん難しいのです。
 5番目は「アルコール控えめは薬過ぎれば毒」。昔から「酒は百薬の長」と言われていますね、しかし多少飲むのはいいけれど飲み過ぎはいけません。
 6番目は「高すぎるコレステロールも見逃すな」でも旨いんですよね(笑)
 7番目は「お食事の塩分・脂肪控えめに」
 8番目は「体力に合った運動続けよう」
 9番目に「万病の引き金になる太り過ぎ」。「食べないけど太る体質なんです」なんていう方も多いようです(笑)
 最後に「脳卒中起きたらすぐに病院へ」で十か条ですが、「お薬は勝手にやめないで」というのがプラスになっていますね。この十か条が今日の一番大切な内容ですので、よくよく見ておいてくさいね。
手始めに高血圧から治しましょう
手始めに高血圧から治しましょう
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 では、これから1つ1つ勉強していきましょう。次、お願いします。

 第1条「手始めに高血圧から治しましょう」
 さあ、血圧です。血圧がどれだけ影響しているのかということですけれども、現在の血圧コントロールはどれくらいが目標でしょうか? これは神経内科の杉本先生に伺いましょうか。先生、脳卒中予防のためには血圧はどれくらいにしておけばいいのでしょうか。
杉本:
写真:杉本太路さん
 はい。血圧には収縮期血圧と拡張期血圧という値があって、普段は「上の血圧、下の血圧」などと呼ばれています。 一般的には上が140で下が90と言われていますね。しかし、これを聞いて、140台ならいいなと思うとよくないのです。 130台と思って欲しいですね。もしも糖尿病だとか、タンパク尿が出ているとか、他にリスクがある方はさらに下げるようにします。
豊田:  そうしたらやっぱり上の血圧で130台まで、できれば120台とかの方がよろしいということですか。
杉本:  そうですね。はい。その辺り(120〜130台)から下を考えて欲しいなと思いますね。ただ、高齢者に関しては、少し高めでもいいんじゃないかという風には言われています。
豊田:  あの、血圧を測ったら、上が160とか170ある方がいらっしゃいますよね。そういう方はいきなり薬で下げるとフラフラしたりしますよね。
杉本:  そうですね。注意が必要なことは確かにあります。
豊田:
写真:豊田章宏さん
 会場の皆さんはご自分の血圧ご存知ですか? ある患者さんの話ですが、外来で血圧130ですよって言ったら 「いやあ〜わしの血圧は120じゃ」って言い張る人がおられました。マイナンバーではありませんので、最初に測った血圧がずっと一生続くわけじゃありません。 血圧は日々刻々と変わりますので、定期的に計りましょうね。
 さて、いま上の血圧が130台までというお話をしていただきました。血圧には上と下の値がありますよね、そして、上よりも下が高いのがいけないとか、 いろいろな情報を耳にすることがありますが、このあたりはいかがでしょうか?
杉本:  一般的にあまり下は取り上げないことが多いです。簡単に考えれば、収縮期血圧(上の血圧)を見ればいいかなと思います。
豊田:  とくに脳卒中の予防に関しては、上の血圧を130台までにしとけばいいということですね。循環器科の松田先生、これは心臓については如何でしょうか?
松田:
図10:血圧の影響
図10:血圧の影響
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 そうですね、心臓のほうも同じだと思います。一時期いろいろな学会で血圧は下げれば下げるほどいいと言われていたのですけど、 最近になって逆に下げ過ぎると心臓が悪い人には良くないという事実も出てきて、血圧コントロールのやり方がすごく細かくなったんですよね。 80歳以上の方とか、糖尿病、腎臓病、心臓病のあるなしとか、すごい細かい対応が求められていますので、 やはり一度その主治医の先生に自分の状態での適正血圧を聞いておくのが一番いいのかなと思います。あと、先ほどの下の血圧のことなんですけど、 下の血圧だけを下げる薬自体がありません、さらに年齢と共にだんだん下の血圧は下がってくるんです。動脈が硬くなってくると下がってきます。 なので若い方の高血圧は下が高い場合が多いですが、だんだん年齢が高くなるにつれて下がってきます。このように下の血圧は変動が多い値で信用できないので、 我々は上の血圧だけを指標にする場合が多いわけです。
豊田:  そうですか、やはり心臓の先生方も、上の血圧をちゃんと見とけばよいというお考えなのですね。
松田:
写真:松田圭司さん
 そうですね。上の血圧を見て、だいたい適性の血圧を考えています。
 それから血圧計の話ですが、一応適正な測定値は自宅用と診察室用では少し違います。診察室のほうが 5 高く出ると設定してるので、 適正血圧というのは診察室の場合と、家で測ったのは 5 下がると考えてもらったらいいと思います。ですから診察室で140の90が理想であれば、 自宅血圧であれば135の85が理想ということになると思います。
豊田:  ということは、病院で測ると機械の問題で高くなるということですか?
松田:  そうなのです。平均的になぜか 5 高いと言う設定になっているので、もうこれが設定なので、そういうものなのかなあと思って僕らは従っているのですけど、 一応、家では 5 低いっていう考えで家庭血圧を測って頂いています。
豊田:  それはやっぱり、病院行って計ると緊張するから高くなるとか、そういう理由ですかね?
松田:  そうですね。みなさんだいたい高いので、逆に高すぎて気にする人は測らないという、家だけ測ってくださいという場合もあります。
豊田:  皆さん、病院に行って測ってもらったほうが正しい血圧だと思う方もあると思いますけど、本当は自宅での普段の血圧のほうをちゃんと見たほうがいいということですかね? 
松田:  その通り、普段の血圧のほうが大事です。学会でも診察室の血圧よりも自宅での血圧が一番大事という風に言われています。 逆に診察室で低くて家で高い仮面高血圧の方もおられるので、自宅での血圧がすごく大事という風に言われます。
豊田:  その仮面高血圧ってなんですか?
松田:  朝方の血圧がすごい上がる方はですね、朝起きたときにはすごく上がっているのだけど、朝ご飯の後で薬を飲むので、 昼近くになって診察室では低いっていうことがあります。実は朝こんなに高いんだけれども、診察室では逆に低く出るので、 普段の血圧を表わしていないということになって、仮面高血圧と呼ばれています。
豊田:
 会場の皆さんは血圧をいつ測っておられますか? お家で測っていらっしゃいますか?(会場の半分以上手が挙がる) ほお、皆さん真面目に測っておられますね。測るのは朝ですか?(多数が挙手)朝? 朝・夕両方測っておられる方は?(多数が挙手)おーすごいですね、 2回測っておられますか。朝と夕で値は違いますか? 朝の方が高い人はいらっしゃいますか? あーやっぱり違いますね。(挙手があったり、声に出したり) なるほど様々なご意見が出てきますね。
 看護師さんたちは入院患者さんの血圧を日に何度も測っておられますが、井村看護師長さんから見てどうですか?
井村:  やはり薬を飲まれている方は朝が高い方がいらっしゃるので、そこらへんの変化を主治医に伝えて、薬の調整とかしてコントロールさせてもらっています。
豊田:  まあ、朝夕に薬を飲む方でも、夕食後に薬を飲んで、朝食前が一番お薬が効いていない時間帯ですよね。
井村:  そうですね。
豊田:  血圧を正しく測るために気をつける点とかありますか?
井村:
写真:井村純子さん
 正しい測り方というのは、今日お配りしているパンフレットの7ページにも書いてありますので参照されたらいいと思います。 先ほど皆さんは1日2回測ってるって言われましたけども、やはりあの、1日の中で血圧は変動していますので、理想的な測り方としては、朝起きてトイレを済ませて、 少しリラックスして、椅子にゆっくり腰かけて、血圧を測る。 寝る前も、入浴を済ませて落ち着いたところで測られるというのが一番理想的ではないかと言われています。 あと、測り方ですけれども、よく電化ショップに行ったら、腕で測るタイプと手首で測るタイプがありますけれども、 やはり腕で測るタイプのほうが正確な血圧が測れるそうなので、そちらで測られることをお勧めします。
豊田:  血圧計もいろいろありますよね。指先でも測れたりとか。簡単ですけどやっぱり正確なのは太い血管で測った方がいいでしょうか?
井村:
家庭血圧の測り方(パンフレットより)
家庭血圧の測り方(パンフレットより)
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 そうですね。それときちんと記録に残しておくことが大切ですね。ちょっと最近血圧が高いなと思う時には、次にかかりつけ医の先生にかかられるときに、 その手帳を持って行ってちょっと血圧が高くなっていますって伝えられるのがいいと思います。
豊田:  そうですね、血圧も生ものですからね。何となく血圧が最近だんだん高くなってきたなあってちゃんと主治医の先生に伝えることが大切ですね。 ついつい人間はいい時のことばかり覚えていますので。松田先生、ゴルフと一緒ですね、いいスコアだけ言いたくなる(笑)。
松田:  それともちょっと関連するんですが、血圧を何回も何回も測られて、自分のいい値が出た数字だけ記録される方がおられるので(会場笑い)、 そういう値ではなくて、最近は1回目、少なくとも2回測ってその平均値を書くように言われてますので、いい値だけ書いてもらってもちょっと困るかなと思います。
豊田:
写真:豊田章宏さん
 ありますね、外来でも何度も測って、気の済むまで測っておられる方も確かにいらっしゃいます。 そのうち気に食わないと「この血圧計はおかしい」と血圧計のせいにしてしまうとか(笑)ありますね。
 会場の皆さんも血圧計をお持ちでしたら、同じ機械で毎日測って頂いて、日々の変動はあるでしょうけど、傾向として最近どんどん高くなるとか、 低くなるとかいう場合には、ちゃんと主治医に相談していただくということでよろしいですね。
図11:降圧療法の効果
図11:降圧療法の効果
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 かつて血圧は低ければ低いほどいいって言われていたこともありましたが、そうではなく、120〜130ぐらいを目標にしましょうというお話でした。 皆さんは大丈夫ですか?では次のスライドをお願いします。
 高血圧をちゃんと治療すればいいってことですが、心臓でも脳卒中でも血圧をちゃんとコントロールすれば、 実際に心筋梗塞とか脳卒中になる確率は下がるのですよね? 一体どれくらい有効なものなのでしょうか?
松田:  ちょっと難しい話になるのですが、、、心臓に血液が流れるのは、血圧の上と下の、下のほうの拡張期という時におもに流れています。 逆に脳には収縮期に流れるので、高血圧、糖尿、高脂血症、タバコという危険因子は、脳も心臓も一緒なのですが、 どちらかというと心臓の場合は脂とタバコがおもに関わってきて、脳の場合高血圧が関わってくると言われています。 ですから高血圧を下げたことによっての危険因子の軽減というのは主に脳に対するものだと言われています。
豊田:  同じ血管の病気でも、心臓と脳では、多少違っているようですね。杉本先生、脳に関してはどうでしょう、やっぱり血圧は下げた方がいいですよね。
杉本:  やっぱり下げたほうがいいです。はい。
豊田:  まず血圧はちゃんとコントロールしてくださいねと患者さんには言いたいですか?
杉本:  はい、血圧は下げたほうがいいと、いつも言っています。
豊田:  「わしゃあ、いつも薬を真面目に飲んで、塩も制限しとるのに下がらんのじゃあ」っていう人はどうしましょう? 血圧が下がらないってことはありますか?
杉本:  そういうケースも稀にあるのですが。そこはやっぱり地道に努力をしていきながら、こちらも努力して降圧薬を追加したり変更したりしています。
豊田:  薬もいろんな組み合わせがありますものね。
杉本:  そうですね。たくさん種類がありますので、いろいろ試しながら人に合ったものを使ったりはします。
豊田:  そのためにも普段からきちんと血圧を記録した手帳を持って来てもらって、患者さんと一緒に相談しながら診察できるといいですよね。
杉本:  そうですね、血圧手帳というのが大事になると思います。
豊田:  このスライドを見てもらってもわかるように、脳卒中は血圧下げることで発生率、危険率が下がっていますので、やはり第一に血圧に気を付けましょう。
 次のスライド、お願いします。
図12:家庭血圧の測り方
図12:家庭血圧の測り方
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 これは血圧の測り方ですね。毎日決まった時間測りましょう。さっき皆さんに伺ったら、朝測るとか、寝る前に測るとか様々でした。 その都度バラバラでは条件が違いますのでなるだけ同じ時間帯に測りましょう。そして、ゆっくり落ち着いて測りましょう。さらにきちんと正確に記録しましょう。 記録が大事ですね。測定した時間もちゃんと書いておきましょう。体調変化があるときはメモしておくといいですね。 血圧計は手首や指よりも上腕で測るもののほうがお勧めです。あとは膨らむカフの位置ですよね、肘の関節のやや上のところにちゃんと巻いてください。 それからマークが付いてますよね。動脈のところに合わせるマーク。それが血管のところに来るように測って頂かないと正確に測れないことがありますので、 そのへんをよくよく注意してください。
図13:血圧管理をしっかり
図13:血圧管理をしっかり
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 次のスライド、お願いします。
 さあ、皆さん、血圧をしっかり下げましょうというのがここにも出ています。 さっき説明がありましたけども、高齢者では140も致し方ないけれども、普通は130台を上限として欲しい。これはもうよろしいですかね?
杉本:  ちょっと厳密に言うと、そのスライドは古いですけれども…
豊田:  ええ、このスライド自体が実はちょっと古いんです。今年新しい指針がでましたのでね。
杉本:  そうですね、スライドでは高齢者が65歳になっていますがいまは80歳以上です。
豊田:  確かに、いま65歳で高齢者というと多くの方々から怒られますよね。(笑)
杉本:  そうですね。
豊田:  このスライドは2004年のガイドラインが基になっていますので、この10年間で65歳は若者になったということでしょうかね(笑)

講演当時のものです)
 
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