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【講演1】
まず大切なのは「お口の健康」 口腔ケアを学びましょう
トップページ第21回講演会>【講演1】まず大切なのは「お口の健康」 口腔ケアを学びましょう

豊田: 写真・豊田章宏  それではまずトップバッターをお迎えしたいと思います。中国労災病院の歯科で勤務していらっしゃいます歯科衛生士の住吉瑞穂さんです。
 住吉さんからは、「お口の健康」ということで、口腔ケアに関するお話を伺いたいと思います。毎日の習慣でもありますが、とても大事なことだと思いますので、よく聞いてください。
 それでは拍手をお願いいたします。(拍手)

写真・住吉瑞穂さん 住吉瑞穂 さん
   中国労災病院歯科口腔外科 歯科衛生士



 こんにちは。歯科衛生士の住吉です。今日はよろしくお願いいたします。
 お口から食べているということは、栄養や体力の向上などだけでなく、意欲的に生きていくためにもとても重要です。 話すことや表情を作るなどといったことは、お口の中やまわりの筋肉によって行われています。 このような重要な機能を持ったお口のケアについて、少しばかりお話させて頂きます。
図1:口腔ケアとは?
図1:口腔ケアとは?
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 口腔ケアとは何でしょうか。単に歯磨きというだけではありません。口腔ケアには2種類あります。 お口の中を健康に清潔に保つことを目的とした器質的口腔ケアと、話す、食べる、表情を作るなどの機能を回復することを目的とした機能的口腔ケアがあります。
 器質的口腔ケアには、うがいや歯磨き、義歯の清掃、粘膜・舌の清掃などがあります。 機能的口腔ケアには、口腔周囲筋の運動訓練、摂食嚥下訓練、発音訓練などがあります。 口腔ケアは、口腔清掃から少しずつ入って、定着させてから口腔リハビリに入っていくのが良いと思われます。
図2:口腔ケアが必要な理由
図2:口腔ケアが必要な理由
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 長い間日本人の死亡原因はがんなどの悪性新生物、心疾患、脳血管疾患が三大原因と言われてきましたが、最近では肺炎が第3位に入ってきました。 肺炎による死亡の95%は65歳以上の高齢者です。中でも誤嚥性肺炎が多数を占めています。
図3:誤嚥性肺炎の起炎菌
図3:誤嚥性肺炎の起炎菌
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 こちらは肺炎を引き起こす菌についての調査です。一番多いのが嫌気性菌、41%。この中には、プレボテーラやフゾバクテリウムといった歯周病菌が含まれています。 次いで肺炎球菌、緑膿菌、腸内細菌・その他、黄色ブドウ球菌などがあります。ここで注目すべきことは、腸内細菌・その他を除いた残りの81%が口腔内細菌だということです。 このことからもお口の中を清潔にすることがとても重要だと考えられます。これが肺炎予防につながります。
図4:口腔内細菌はどこにいる?
図4:口腔内細菌はどこにいる?
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 では口腔内細菌はどのあたりにいるのでしょうか。咽頭粘膜や歯周ポケット、舌苔などに1ミリグラム(mg)中1億個もの細菌が生息してます。 また歯の表面には10億個、およそ10倍もの細菌が棲んでいます。さらに唾液中にもいます。つまりお口の中全体に口腔内細菌がいるのです。 このことからも口腔ケアが必要だと考えられます。
図5:口腔ケアが必要な理由
図5:口腔ケアが必要な理由
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 口腔ケアが必要な理由は、誤嚥性肺炎を予防するとともに、いつまでも楽しく、美味しく、安全に食事が食べれるようにするためです。
図6:口腔ケアの対象はだれ
図6:口腔ケアの対象はだれ
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 患者さんやその家族の方から次のような話を聞くことがあります。
 「食事してないから、歯磨きしなくていいわ」とか、「もう歯もないし、お口のケアなんか必要ないわ」とか、 「寝たきりになったし、お口のケアなんかできないわ」とか、「うがいしてもむせるようになったわ、お口のケアなんてできないわ」とか聞くことがあります。 唾液や口腔粘膜にも細菌がいるのですから、口腔ケアはすべての人に必要です。
図7:口腔ケアが特に必要な患者さま
図7:口腔ケアが特に必要な患者さま
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 口腔ケアがとくに必要な患者さんがいらっしゃいます。高齢の方や脳血管障害の方、反射が鈍っていて誤嚥しやすいからです。 経管栄養を行っている方、唾液の分泌が減って自浄作用がおとろえているからです。 糖尿病の方、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化し、歯周病が改善すると糖尿病も改善するという報告があります。 そのほか手術前後の方、気管内挿管を行っている方、がん治療を行っている方はとくに必要とされています。
図8:お口の中を観察してみよう
図8:お口の中を観察してみよう
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 お口の中を観察してみましょう。上あごなどに痰などの汚れが付いていませんか。歯と歯ぐきの間、食べかすがのこっていないでしょうか。 歯に歯垢が付いていませんか。また、虫歯やグラグラした歯はないでしょうか。粘膜に口内炎はありませんか。ネバネバ汚れはないでしょうか。 お口の中全体が乾燥していませんか。義歯が合っていなかったり、汚れたりしていませんか。舌に白い舌苔がついていないでしょうか。よく観察してみてください。
図9:口腔ケアの方法
図9:口腔ケアの方法
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 口腔ケアの方法についてです。ひとつめは歯科医院で行う口腔ケアと、ふたつめ、ご自身で行って頂くセルフケアがあります。 歯科医院では虫歯や歯周病の診査をしてから歯垢・歯石除去を徹底的に行います。セルフケアでは、患者さんご自身が口腔清掃を実施するよう清掃指導し、 歯ブラシによるブラッシングも行います。義歯装着者に対する義歯の清掃指導も行います。
図10:歯ブラシの選び方
図10:歯ブラシの選び方
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 歯ブラシの選び方についてです。口腔粘膜が正常な場合は、通常の硬さの歯ブラシを選んでください。 「かたい」「ふつう」「やわらかい」とあったら「ふつう」を使用するのがよいと思います。 口腔粘膜が口内炎やただれで脆弱している場合は、毛先の極力やわらかいものを使用します。 口腔粘膜が出血しやすい場合は、スポンジブラシ(トゥースエッテやハミングッド)の使用及びうがいを行うとよいでしょう。
図11:歯ブラシの当て方
図11:歯ブラシの当て方
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 歯ブラシの当て方です。歯磨きは歯を2本ずつ磨くような意識で細かく動かして磨きます。 細かく動かすことで、歯と歯の間に毛先が届いて歯垢を除去しやすくなります。磨くときは軽い力で磨きます。それから順番を決めて磨きましょう。 下の奥の下側から反対側の奥まで磨いて内側に入り、反対の奥まで磨く。上の奥の外側から反対の奥まで磨き内側に入り反対の奥まで磨く。 順番を決めて磨くことで磨き残しを防ぐことが出来ます。ポイントは歯を2本ずつ軽い力で順番を決めて磨くことです。
図12:歯ブラシの当て方
図12:歯ブラシの当て方
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 歯ブラシの当て方です。奥歯の外側は毛先を歯に直角に当てて磨きましょう。奥歯の内側は毛先を斜め45度に当てて磨きます。 前歯の裏側は歯ブラシを縦に当て縦方向に掻き出すように磨きます。奥歯の噛み合わせは、噛み合わせの面のくぼみに毛先を水平に当てて磨きましょう。
図13:口腔ケアの方法
図13:口腔ケアの方法
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 ご自分で歯磨きが出来る方は、自分に合った歯ブラシできちんと歯磨きしましょう。また歯間ブラシを使って歯垢を除去するともっといいでしょう。 舌に白いものが付いている場合は、舌ブラシを使って舌もきれいにしましょう。またブクブクうがいをしましょう。毎食後磨くことが望ましいです。
図14:口腔ケアの方法
図14:口腔ケアの方法
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 ご自分で歯磨き出来ない方には介助してあげましょう。小さめの歯ブラシを使い、握る部分は大きいほうが使いやすいでしょう。 また電動歯ブラシを使うのもひとつの方法です。うがいが出来ない方は、ガーゼやトゥースエッテなどを湿らせて口腔内を拭きましょう。
図15:介助する場合
図15:介助する場合
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 介助する場合はこんな感じで行いましょう。ベッドでは可能な限りベッドを起こして右横から、また前から状態に合わせて磨いてください。 椅子での口腔ケアでは、床に足がきちんと付く状態にしておくと踏ん張りがききます。その状態で、後ろから、前から状態に合わせて磨きましょう。 寝たきりの方には、なるべく体を横向きにし、クッションなどを当てて体を安定させて磨きます。
図16:義歯の取り外し
図16:義歯の取り外し
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 義歯の取り外しについてです。義歯の内面は細菌が繁殖しやすく口臭や誤嚥性肺炎を引き起こす原因となります。 また義歯はプラスチックと金具の部分からなり、落とすと破損しやすいです。また熱湯消毒される方がおられますけれども、熱湯では変形しますので避けてください。 夜間など長時間使用しない場合は、水などの入った容器に保管しておくといいと思います。
図17:義歯のケア
図17:義歯のケア
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 義歯の清掃についてです。義歯を清掃するときは、義歯用歯ブラシを使うと良いでしょう。 その際に洗面台に水を張ったり、タオルを敷いたりして落とした時の破損を防ぐことができると思います。 ブラシで入れ歯のプラスチック部分の内側を磨き、外側も磨き、金具部分の細かい部分も磨きましょう。 週に2、3回は義歯用洗浄剤を使用し、化学的に清掃すると良いでしょう。その際、使いう前に水で良く洗い流してください。
図18:まとめ
図18:まとめ
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 まとめです。このように口腔ケアでお口の中が清潔になるとさっぱりします。すると、食欲も増し、食べる楽しみが生まれます。 しっかり食べることで体力がつき、活力がみなぎり、心身ともに積極性が増します。 よく噛んで、よく人と話をする、口の機能をよく使うことで生活の質を高める好循環が生まれます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)

豊田:  住吉さん、ありがとうございました。なんか非常にやさしい口調で分かりやすいお話でしたよね。お口の中きれいにしておかないといけないなあと思いました。 しかし、いろんなところに菌がいるんですね。ポケットに1億円ならいいのですけれど、歯周ポケットに1億個ですか。 相当な数の菌がいるということですので、やっぱりお口をきれいにしておくことが大切なんですね。
 そして、この菌が肺炎の原因になっているということですけれども、肺炎に関する報告とか、論文とか出ているのでしょうか?
住吉: 写真・住吉瑞穂さん  はい、出てます。2001年に米山先生の報告なんですけれど、老人ホームの入居者350人にご自身で行って頂く口腔ケア群と、 介護者による食後の歯磨きと週1回の歯科関係者による口腔ケア群を2年間にわたって調査したところ、 37.8度の発熱日数や肺炎患者数が優位に減少したという報告があります。この論文が発表されてから口腔ケアが注目されるようになりました。
豊田:  そうですね、最近特に口腔ケア、口腔ケアって言いますよね。聞くところによると、肺炎だけじゃなくて、 心筋梗塞とか脳卒中にも関係してるという報告も出ていますので、お口の健康って大事だなとつくづく思いました。
 さて、その口腔ケアがうまくいってるかどうかというのは、具体的にどういったところを観ればいいですか。
住吉:  まずは口臭です。口臭が少しずつ減少してきて、消失してきます。 舌苔も消失してきて、舌の表面の白さも薄らいできます。口腔乾燥感も落ち着いてきます。これらが指標になると思います。
豊田: 写真・豊田章宏  口臭は自分ではなかなか気付きにくいことってありますよね。一緒にいる人が、言いにくくても言ってあげるほうがいいのかも知れないですね。
 もう一点、ご発表の中で歯ブラシがいろいろ出てきましたけれど、みなさんはハミガキ粉ってどれくらい付けられます?たっぷり付けます?  それとも、ちょっとですか? 種類も色々ありますよね。具体的にはどのくらいの量を付けるのがいいんでしょうか?
住吉:  健康な人でしたら5ミリ(mm)ぐらいが…
豊田:  たったの5ミリですか?!
住吉:  はい。多分思っておられるより少ないと思うんですけれども、5ミリぐらい使用して頂ければいいと思います。 また、介助が必要な方は、うがいできませんし、誤嚥を防ぐためにハミガキ粉がなくても十分です。
豊田:  なるほど。ブラシでちゃんと磨くことが基本なんですね。ハミガキ粉のコマーシャルを見ると、 たいていブラシの端から端までギューっとたっぷり付けていますよね(笑)、あれはハミガキ粉の消費量を増やしたいためなんでしょうかね?  では5ミリくらいで十分ってことですね。
 はい、住吉さんありがとうございました。分かりやすいお話でした。(拍手)
講演当時のものです)
 
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