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【講演5】
地域包括ケアシステム
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豊田: 豊田章宏  いろんな地域のお付き合いとかがある中で、やっぱり最終的にそれを支えてくれる行政の力は大きいところであります。 今日の最後の講演になりますが、地域包括ケアシステムのお話を伺いたいと思います。住み慣れた地域で生活していくためには、医療や福祉だけでなく行政を含めてどういう風に対処していくのか。介護保険だけでカバーできないところも、地域の仲間同士でどうやって支えあっていくのか、課題もあろうかと思います。
 そういった様々な問題点も含めて、呉市福祉保険部介護保健課の保健師さんであります矢村さんからお話を伺いたいと思います。それでは矢村さんよろしくお願い致します。


写真・矢村里美さん 矢村 里美 さん
呉市 福祉保健部 介護保険課 保健師



 ご紹介頂き、ありがとうございます。呉市介護保険課の保健師で矢村と言います。最後まで残って話を聞いて頂けるという事で、ありがとうございます。 最後になりましたので、ちょっとだけ気分転換を先にさせて頂いてから私の話に入りたいと思います。
 皆さんやられた事があるかと思うのですが、浦島太郎。もしもし亀よ。亀さんよ。知っていますね。見本を見せますのでみんなで、後でやっていこうと思います。良いでしょうか。
写真・矢村里美さん  「♪もしもし亀よ。亀さんよ。」わかりますか。(両手を叩き、その後、右手が左耳、左手が右耳)次に、手をたたいた後に手を交互に入れ替えます。歌を歌いますのでやっていきますよ。 せーの。「♪もしもし亀よ。亀さんよ。」ついてきています?よく見ていると、「♪もしもし亀よ。亀さんよ(両手とも耳を持っている)」になっています。もう一回やってみます。 「♪もしもし亀よ。亀さんよ〜。世界のうちでお前ほど。」あらあら、皆どうしましょう。こうなっています(両手を交差せずに、右手が右耳、左手が左耳)。 はい。一つだけヒントを言います。交互に鼻を持つという事だけを考えてするとかなり出来る人が増えます。あと残った手が耳です。良いですか。交互に鼻を持ちます。 残った手が耳ですよ。せーの「♪もしもし亀よ。亀さんよ。世界のうちでお前ほど。」出来ましたか。皆さんさっきよりだいぶ出来るようになりました。 ちょっと笑い声が聞こえて気分転換が出来たところで私の話を聞いて頂けたらなと思います。よろしくお願いします。
図1:呉市の人口
図1:呉市の人口
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 地域包括ケアシステムと地域で取り組む介護予防という事でお話をさせて頂きます。呉市の人口が9月末現在で22万5千人ですね。 そのうち高齢者の占める割合ですけれど、だいたい7万8千人が高齢者です。高齢化率が34.6%。高齢者の方が3人に1人って言っていましたが、それよりさらに増えています。 呉では、この東部地域が1番若くて27%ぐらいなのですが、島嶼部に行きますともう70%近い高齢化率を迎えています。
図2:人口減少
図2:人口減少
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 呉市は昭和50年に31万人という事でしたが、それをピークにどんどん人口というものが減ってきています。先ほど22万人と言いましたが、31万人からずいぶん減っています。 どんどん人口が減っていくのですが、その中の高齢者の占める割合というもがどんどん増えている現状があります。
図3:高齢者のいる世帯の割合
図3:高齢者のいる世帯の割合
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 そして呉市は、よその市町と比較しますと一人暮らしの高齢者の方がとっても多いのが特徴です。そして高齢者の夫婦世帯が多い事がこの表で解って頂けるかと思います。
図4:少子高齢化と担い手不足
図4:少子高齢化と担い手不足
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 何が言いたいかと申しますと、高齢者が増えるとやはり介護が必要な人、人からお世話をされながら生活する人が増えてくるという事になります。 家族の方と過ごしておられる方は、家族の方が支えてくれるのですが、一人暮らしや夫婦世帯は、他者からのお手伝いをして頂く割合が早く訪れるという事です。 2005年には6人で1人の75歳以上の高齢者を支えていましたが、2025年には3人で1人の高齢者を支えるという事になります。
図5:地域包括ケアシステム
図5:地域包括ケアシステム
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 そこで、先程から皆さんの地域で、地域づくり、地域でリハビリ、地域で支えあって様々な皆さんが地域で支える事を伝えてきたかと思います。 高齢者がたくさんの中で、支える人達が少なくなった。こうした課題に対して、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らしていける事が出来るように、 地域包括ケアシステムの構築が求められています。
図6:地域包括ケアシステムの姿
図6:地域包括ケアシステムの姿
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 一人一人の暮らし方に合った、住まいを中心に、自宅、家を中心に医療とか、介護、生活支援、介護予防などがいろいろ組み合わさって、 地域におられる皆さんをチームで支えていく体制を目指しています。これまでも、医療は一生懸命医療で、介護は一生懸命介護で、 私たち地域で仕事をしている人も地域で一生懸命仕事をしてきました。でも、やはり、それぞれの専門分野が中心になってしまって自宅に帰った姿は思い浮かべる事が出来なかった。 これからは、地域に帰ってくださる高齢者の皆さまを医療の現場にいても、介護の現場にいてもこれからは地域に帰っていく人だという事目指して、いろいろな取り組みを進めています。
図7:現状の課題とこれから
図7:現状の課題とこれから
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 さあ、みなさんこれまで一緒に遊んでいた人、一緒にサロンに来ていた人たちが急に来なくなってしまった。よくよく話を聞いていると、 あの人はちょっと足が不自由になってデイサービスに行き始めた。「良かった。良かった。デイサービスに行っとるなら安心じゃ」って思われてきました。 でも、地域の集りにその人はいなくなりました。それで上手くいったのでしょうか。週に1回デイサービスに行きました、週に1回ヘルパーさんに来てもらいました。 でも、残りの5日、6日は地域で過ごしておられます。そうすると地域の皆で支えていかないといけないという事になります。
図8:自助・互助・公助・共助
図8:自助・互助・公助・共助
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 自助、互助、公助、共助、先程から説明しました介護保険に代表される共助、ボランティアであったり、生活保護であったり一般の介護予防であったりする公助。 そして家族やサロンの仲間、そうですねゲートボールの仲間、そういったお互いの団体の中でお互いの問題を一緒に解決していく互助。そして自助、 自分自身が頑張って自分の事を元気に、そして周りも元気に。自ら健康管理をして、どんどん元気になって頂きたい。今日はその中で自助、互助に関係する部分を説明いたします。
 先ほどもマッターホルンの吉田先生の方からも紹介がありましたが、呉市で今、進めている事を紹介させて頂きます。
図9:10年後の自分
図9:10年後の自分
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 皆さんにお聞きします。5年後、10年後、どんな自分でいたいですか。
 畑を頑張りたい人。何でも自分でしたい。そうだ!旅行に行こう。孫と一緒に遊びたい。
図10:いつまでも元気で自立した…
図10:いつまでも元気で自立した…
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 自分の足で歩いていたい。ここが1番多く手が上がったかのように思います。自分の足で歩いていたい。そうです、いつまでも元気で自立した生活を送りたい。それが皆さんの願いです。
図11:日本の平均寿命
図11:日本の平均寿命
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 日本の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳になりました。75歳を超えると身体が弱ってきて介護保険や医療のサービスを使う事が増えてきています。 高齢になればなるほど、そういった率が高くなる可能性が出てくるという事です。
図12:日本の健康寿命
図12:日本の健康寿命
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 そしてそれに比較するものとして健康寿命というものがあります。これは誰からのお世話も受けずに自立した生活を送ることができる年齢と言われています。
図13:誰かの世話になる期間
図13:誰かの世話になる期間
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 男性が約72歳、女性が約75歳です。という事は、男性は約10年、女性は約14年、誰かに世話をされながら、受けながら生活をするという事になります。長いですね。ピンピンコロリを目指したいですね。
図14:介護が必要になった理由
図14:介護が必要になった理由
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 ここで、介護が必要になった理由を出してみました。1番多いのは認知症、約2割です。2番目に先ほどから出てきています脳血管疾患16%。いずれにしても脳の病気です。 3番目見て下さい。高齢による衰弱が入っています。これは病気でしょうか。高齢によって弱ってきたっていう事を表しています。 がんも、脳梗塞も注意はするのだけれども、なかなか防げない所ではありますが、3番の高齢による衰弱は自分達の努力で防ぐことが出来ます。
図15:要支援の人の原因
図15:要支援の人の原因
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 先ほどは要支援、要介護を表しましたが、要支援の人のみの原因は、1つ目に関節疾患、2つ目に高齢による衰弱です。また出てきました。3番目に骨折転倒というのが出てきます。
 介護保険の認定を先ほど1万2人が受けておられると言いましたが、そのうちの34%も支援の人がいるのです。その半分はなんと筋力が低下することによって要支援の状態になっています。 ここは防げる事が出来るという事をよく知っておいて頂いたらと思います。
図16:次の質問
図16:次の質問
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 では、次の質問です。若い頃と比べて歩くのが遅くなった。長く歩けなくなった。階段のぼると息切れがする。何か持たないと上がれなくなった。杖も欲しい。 体力が不安で旅行にも行けなくなった。この頃、人と会うのが辛い。嫌だな。こんな人が少しずつ増えてきています。
図17:高齢による衰弱
図17:高齢による衰弱
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 高齢による衰弱、先程から出てきていますが、筋力の低下、そして腰の痛みや膝の痛み、年を取る事による不安、そういったところから気分が沈むと、どんどん動かなくなってしまい、 どんどんまた悪くなって、そして、介護保険の申請に繋がってしまいます。悪循環の始まりはほんの些細な事なのですが、そうして皆少しずつ弱っている現状があります。
図18:ねたきりのきっかけ
図18:ねたきりのきっかけ
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 そして、寝たきりのきっかけは身近にあって、ちょっとこの頃、身体を動かすのが辛いな。人と関わり合いたくないな。この頃よくつまずく。運動量がどんどん減り、転んだ。 骨が折れた。寝たきりになった。とってもよく聞く話です。
 先程から高齢による衰弱は自分達で守れるのだよって言っていましたが、私たちに出来る事は何でしょうか。解決の糸口は何でしょう。
図19:健康寿命を延ばすには
図19:健康寿命を延ばすには
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 健康寿命を延ばすためには先ほどから出てきました脳の病気、そして、高齢による衰弱の予防。 認知症の予防、どれも必要になってきますが、これを予防するために、どれにも共通して言える事は、定期的な外出、そして適度な運動が必要になってきます。
図20:本当に96歳?
図20:本当に96歳?
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 ここからは、先程、吉田先生からも説明がありました、96歳の女性を紹介したいと思います。
図21:96歳女性5m歩行
図21:96歳女性5m歩行
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 この1番奥。真ん中の1番奥にたっているのが96歳のおばあちゃんです。そして右側にはですね。ピンクの服を着た女性の方、おばあちゃんの杖を持っています。 10m歩いてもらいましょう。96歳のおばあちゃんが杖持って、ころばないように、ふらついていますが自分であるいて頑張っておられますよね。
図22:96歳女性5m歩行(3ヶ月後)
図22:96歳女性5m歩行(3ヶ月後)
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 この人がある体操をした3か月後、同じおばあちゃんです(小走りで検査をする姿)。 最初は10m歩くのに9.2秒かかっていたおばあちゃんですが、3か月後には3.3秒で歩けるようになりました。
図23:いきいき百歳体操
図23:いきいき百歳体操
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 このおばあちゃんは何をしたのでしょうか。。
 そうです。このおばあちゃんは先ほど吉田先生が紹介してくれました、いきいき百歳体操を3か月間実施しました。そして、継続してやられています。
図24:おもりを使った体操
図24:おもりを使った体操
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 いきいき百歳体操はみんなで集まって体操のDVDを見ながら重りを付けた体操をします。準備運動から始まって、筋力運動、整理体操で終わります。
図25:運動パターンは6個
図25:運動パターンは6個
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 運動のパターンはたったの6個、とっても簡単です。腕につけた重りを使って、筋力運動をやっています。次は、立ち上がりの筋力運動です。そして、足に重りをつけた体操です。最後に整理体操で終わります。
図26:準備運動
図26:準備運動
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 準備運動。
図27:筋力運動
図27:筋力運動
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 筋力運動。
図28:体操風景
図28:体操風景
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 前にテレビがあって皆で掛け声を掛けながらやっています。
 地域の集まれる場所で、皆さんでDVDを見ながら体操をやっているのです。
図29:整理体操
図29:整理体操
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 整理体操。
図30:なぜ良いの
図30:なぜ良いの
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 いきいき百歳体操は何で良いのか。簡単な体操である事。さっき言ったように6個のパターンの体操しかないので簡単です。覚えやすい。椅子と重りがあれば出来る。 そして、ゆっくり動作を行うので膝が痛い人も出来ますし、関節を痛めにくいといわれます。時間は週に1回から2回、理想は2回なのですが、1回でも筋肉をつけることが出来ます。 それもたったの30分です。
図31:いきいき百歳体操の効果
図31:いきいき百歳体操の効果
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写真・矢村里美さん  いきいき百歳体操の効果としては週に1回から2回の体操で、地域の皆で交流が出来ることや、筋力がついてつまずかなくなった、足が上がるようになった。おしゃべりが楽しい。 そして皆が今1番気にしている認知症予防にとても効果的だと言われています。椅子からの立ち上がりが楽になり、膝の痛みも減ってきて、杖がとれたよ。 気持ちが明るくなって前向きになった。そして体操を続けて心も体も元気になれば介護がいらない。皆で体操して閉じこもりゼロの元気な地域にしていこうという事です。
図32:やりたいことを目指そう
図32:やりたいことを目指そう
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 先程、皆さんに聞きました、やりたい事を目指して頂きたいと思います。そのために簡単な筋力アップが出来る体操をみんなで集まって、週1回以上継続した体操をして頂けたらと思っています。
図33:行政がサポート
図33:行政がサポート
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 元気になれる体操があるならやってみたい。でも、一人で続けるのは難しそうだな。 でも、仲間と一緒なら出来るかもしれない。そんな皆さんの思いを地域包括支援センターや行政はサポートしていきます。
図34:やりたいと思ったら
図34:やりたいと思ったら
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 やりたいって思った人がこの中におられましたら、自宅でも構いません、集会所でもかまいません、そうですねスーパーの待合室みたいな所でも良いそうです。 いろいろやろうと思う人が集まって、DVDを見ることができて、そして椅子があれば、講師はいりません。DVDを見ながら自分達でする事ができます。
図35:私達のお手伝い
図35:私達のお手伝い
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 行政としてお手伝いをさせて頂く時に、病院や施設におられますリハビリテーション専門職の皆さんのお力を借りて、最初に体操の指導をさせて頂きます。 体力測定のお手伝いもさせて頂いています。そして、先ほど見ましたDVDはやろうというグループにはプレゼントをさせて頂きます。重りは3か月間、呉市から貸し出しを致します。 その3か月間の間に自分達で重りの準備をしてください。
図36:お問い合わせ
図36:お問い合わせ
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 やってみたいと思われる方は最寄りの地域包括支援センターか呉市役所介護保険課にご相談下さい。ご清聴ありがとうございました。

豊田:  ありがとうございました。前も一回見せて頂いた96歳のおばあさんですが、すごいですよね。変身したんじゃないかと思うくらい走っていましたね。 実際今呉では、こういった集いの場、集まりの場ってどれぐらいあるのですか?
矢村:  運動をせずに地域で集まるサロン、参加された方もおられるかと思うのですが、そういったサロンはですね200か所以上あります。
豊田:  そんなにあるのですね。
矢村:  筋力をアップするために運動を中心とした、こういった集まりは今24か所ぐらいしかありません。
豊田:  しかといっても24か所もあるのですね。
矢村:  皆さんに知られていませんね。
豊田:  今からまだまだ増えていくところということですね。この近くでも増えたところもあるようですね。最近。
矢村:  そうですね。この東部地域では今週、6日ぐらいですかね。長浜の方で一つグループが出来ました。そこが毎週1回頑張るよって言ってくださっています。
豊田:  ありがとうございます。
豊田章宏  我々は小さいころは和式便所で育ってきましたから、下半身は鍛えられていたはずです。頑張れば体力も付くはずですので、また取り戻せるように頑張りたいと思います。
 皆さんあっという間に本日のプログラムは終了になります。今日も中国労災病院のスタッフ、それから呉地域のリハビリテーションスタッフにボランティアとして手伝って頂きました。 もし良かったらスタッフの皆さんにも労いの拍手をお願い致します。それから呉市医師会、呉市保健所などのご後援も頂いて、20年間この講演会をやっております。改めて感謝申上げます。
 さて、今日の外は本当に寒うございますので十分気を付けてお帰り下さい。ご参加ありがとうございました。
講演当時のものです)
 
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