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院長挨拶
皆さん、こんにちは。院長の栗栖 薫です。令和6年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。新型コロナ感染症(COVID-19)が5類に移行し、何とか日常の生活が戻りかけていた矢先、令和6年(2024年)元旦に能登半島地震が発生し、甚大なる被害を受けました。改めまして、被災されました方々に心からお見舞いを申し上げます、と共に一日も早い復興復旧を祈念致します。また犠牲になられました方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。翌、2日には羽田空港の滑走路において日本航空機と海上保安庁機が衝突し、炎上する事故が発生しました。日本航空機の乗客乗員の皆様は、乗員の的確な避難指示に従い、全員無事に機外に脱出することができました。一方で、海上保安庁機はパイロット以外の方々が犠牲になられました。こちらも犠牲になられました隊員の皆様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
近年私達が置かれている状況を年始の2日間で経験する年になりました。起こりうると言われていた自然災害が発災し、防ぎうるヒューマンエラーによる人災で始まった甲辰(きのえ・たつ)の年になりました。平成30年(2018年)7月に発生した西日本豪雨災害は非常に広範囲に及び、当呉地区におきましても、主要幹線道路やJR呉線が土砂災害のために、通行不能となり、呉市が陸の孤島になるぐらいの影響が出ました。その後、各組織のBCP(business continuity plan)の策定が進み、当院もライフラインの供給システム自身の見直しや新たなルートの確保など進めて参りました。(独)労働者健康安全機構そのものが、「災害に強い地域づくりを目指す労災病院」をミッションとして各種対応を進めて参りました。改めて今年一年がこれ以上の自然災害と人災に見舞われないよう強く祈念致します。
さて当院の診療の4本柱の一つである、高度専門的医療の中に内視鏡手術支援ロボットhinotori™による手術があります。令和4年(2022年)7月に呉圏域において最初に手術支援ロボットを導入しました。先行する機種に比べ対象疾患に制限がありましたが、腎泌尿器外科領域で前立腺癌摘除術を確実に進めてきました。昨年(令和5年、2023年)秋から直腸癌に対する切除術にも拡大し規定の症例数に達しています。そしてこの4月から腎泌尿器外科と外科と合わせて週4日ロボット手術ができることとなりました。世界の工業用ロボットの6割が日本製です。その実績を生かして更に術者に優しくより精緻な動きができる純国産のhinotori™を用いた各種手術を安全に確実に進めていきます。
4月より腎泌尿器外科でロボット手術の資格を持った先生が赴任されます。また外科領域におきまして肝胆膵外科と上部消化管手術を得意とする先生が着任します。そして、数年間脳神経血管内手術専門医の資格をもった脳神経外科医が欠員でしたが、4月から着任されます。脳神経外科領域でも血管内治療が可能となり、神経内視鏡の技術認定資格も合わせてお持ちですので、より低侵襲で有効な脳神経外科治療が可能になります。消化器内科においても全消化管の内視鏡検査や手術に幅広く対応できる専門医が着任されます。内視鏡診断・治療センターの更なる活用が期待されます。このように高度専門的医療を系統的に進めて参ります。
当院は、労災疾病等医学研究を行っています。当院の藤原久也副院長が主任研究員となって、広島大学医系科学研究科公衆衛生学と共同で、時間栄養学の観点から妊婦さんの栄養や体重が出生児の体重に及ぼす影響を、妊婦さんの協力を頂いて研究しています。昨年広島で開催されたG7の国々の中で、出生時体重が最も低いのは日本です。また、核家族化が進んでいる共働き世代において育児が大変なため、出産後にも仕事を継続しているのは約半分です。母性看護専門看護師を中心にした育児外来、助産師外来で、妊娠・分娩・育児と仕事の両立支援を実施しています。将来の生活習慣病の予防効果も期待されており、積極的に進めています。
この4月から第8次の保健医療計画が開始されます。この一年間関係各方面と検討を重ね計画書案を作成し最終的に広島県全体としてまとめ上げました。日本全体で少子高齢化が進んでいますが、呉地区は日本の平均の10年先を行っていると言われています。限られた医療人を含めた医療資源を如何に有効に配置して健康寿命を維持しながら住み慣れた地域で健康的に生活できるか、改めて考え直さないといけません。
私が着任してから、日本病院会会長の相澤孝夫先生による「日常生活圏を基盤とした医療圏」という概念を導入しました。呉市東部・東広島市南部(黒瀬町・安芸津町)・竹原市のいわゆる芸南地区からの患者さんが当院の受診(外来・入院・救急)の85%を占めています。残りが呉市西部、江田島市、熊野町などです。通院時間が30分からせいぜい1時間以内で、急性期から回復期、生活期の医療や制度が該当地域に提供できれば、住み慣れた土地で、世界に誇る均質化された高度の日本の医療や介護を受けることができる、そのような社会を目指しています。
コロナ禍で直接地域の市町の皆さんに様々な医療情報をお伝えする市民公開講座が頓挫しておりました。今年度は阿賀・広地区を中心にしながらも、それぞれの市町に伺って地道に啓発活動を続けていきます。過日、公的病院がない竹原市の福祉保健部を訪問し、竹原市の健康リテラシー啓発活動を共催する旨をお伝えしてきました。竹原市も非常に喜ばれて前向きに検討されるとのことでした。受診人数が多い呉市昭和地区、郷原地区、東広島市黒瀬地区、安芸津地区でも具体的に進めていきます。
4月から各種職業の働き方改革が具体的に進みます。よりメリハリのきいた勤務と余暇の考え方が基本的に重要になってきます。今年の1月4日に開催した当院の「仕事始め式」においても、メリハリの利いた勤務と余暇の利用で、「人生生き生き計画を立てましょう!」と職員に伝えました。(独)労働者健康安全機構の労災病院であるからこそ、率先して働き方と、それも含めた生き生きとした人生の過ごし方を実践していきたいと願っています。
社会は空前の株価の高値で賃上げ闘争において過去に例をみないほどの給与の上昇が提示されています。しかし、毎年のように天災が各地で発災し、人災も後を絶ちません。本来の今年の干支である甲辰のように、「成功への努力が種子の中で育ち将来に向けて発芽する準備を整え」、また天空を泳ぐ龍(辰)の如く、天空を制覇する勢いで、困難な現状を打破しつつ一歩でも進めていけたら、と思っています。
引き続き、今年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。
独立行政法人労働者健康安全機構 中国労災病院
院長 栗栖 薫