外科
研修プログラム
外科後期臨床研修プログラムは,日本外科学会の外科専門医修練カリキュラムに準じており、外科専門医取得のための到達目標を達成することを第一の目的とする。
- 後期臨床研修医の資格について
日本国医師国家試験合格者で、2年間の卒後初期臨床研修を修了した者とする。
- 研修内容について
- (1)
- 医の倫理を体得し、かつ、高度の外科専門的知識と技術を修得した外科専門医を育成することを目的とする。
- (2)
- 初期臨床研修のカリキュラムによる内科、小児科、産婦人科、救急医学などのローテーションを修了した上で,各関連外科(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科といったサブスペシャルティ)の基礎部分(共通総論)を包含したものとする。
- (3)
- 卒後初期臨床研修での救急医学より、さらに外科的内容に重点をおいた救命・救急医療を必修とする。
- 研修期間について
- (1)
- 外科専門医受験資格としては、後述する修練カリキュラムにおける到達目標の達成度が重視され、外科専門医制度修練施設(以下、指定施設)における5年以上の修練期間が必要であるとされている。このため2年間の初期臨床研修終了後の3年間を後期臨床研修期間とする。
- (2)
- 後期臨床研修開始後満2年を経た段階で、外科専門医予備試験となる筆記試験の受験が可能となる。
- (3)
- 3年間の後期臨床研修を修了した予備試験合格者は、到達目標3に示された最低手術症例数を充足した上で、外科専門医認定試験となる面接試験を受験することとなる。
研修到達目標
一般目標 |
一般目標1(総論的)
国民のニーズにこたえるべく,レベルの高い均質な、包括的で全人的な外科診療を実践できる専門医を養成するため、以下の4項目を到達目標として、段階的に進む研修を実施する。研修期間は初期臨床研修修了後の3年間とする。
- 外科専門医として、適切な外科の臨床的判断能力と問題解決能力を修得する。
- 手術を適切に実施できる能力を修得する。
- 医の倫理に配慮し、外科診療を行う上での適切な態度と習慣を身に付ける。
- 外科学の進歩に合わせた生涯学習を行うための方略の基本を修得する。
一般目標2(各論的)
初期臨床研修を修了した後,外科学総論、基本的手術手技および一般外科診療に必要な外科診療技術を修得する。
- 外科総合カリキュラムとして学習する。
- 外科サブスペシャルティ(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科等)に共通する外科の基本的問題解決に必要な基礎的知識、技能および態度を修得する。
注1 基礎的知識とは外科に必要な局所解剖、病理・腫瘍学、病態生理、輸液・輸血、血液凝固と線溶現象、栄養・代謝学、感染症、免疫学、創傷治癒、術後疼痛管理を含む周術期管理、麻酔学、集中治療、救命・救急医療(外傷・熱傷)などすべてを包括する。
- 座学としてではなく,実地臨床症例を教師とし,体験から自己学習を促進する。
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到達目標 |
到達目標1
外科診療に必要な下記の基礎的知識を習熟し、臨床応用できる。
- 局所解剖
手術をはじめとする外科診療上で必要な局所解剖について述べることができる。
- 胸部X線、心電図、ホルター心電図、負荷心電図、呼吸循環機能検査等の適応を決定し、結果を病理学
外科病理学の基礎を理解している。
- 腫瘍学
- a.
- 発癌、転移形成およびTNM 分類について述べることができる。
- b.
- 手術、化学療法および放射線療法の適応を述べることができる。
- c.
- 抗癌剤と放射線療法の合併症について理解している。
- 病態生理
- a.
- 周術期管理などに必要な病態生理を理解している。
- b.
- 手術侵襲の大きさと手術のリスクを判断することができる。
- 輸液・輸血
周術期・外傷患者に対する輸液・輸血について述べることができる。
- 血液凝固と線溶現象
- a.
- 出血傾向を鑑別できる。
- b.
- 血栓症の予防,診断および治療の方法について述べることができる。
- 栄養・代謝学
- a.
- 病態や疾患に応じた必要熱量を計算し、適切な経腸、経静脈栄養剤の投与、管理について述べることができる。
- b.
- 外傷、手術などの侵襲に対する生体反応と代謝の変化を理解できる。
- 感染症
- a.
- 臓器特有、あるいは疾病特有の細菌の知識を持ち、抗生物質を適切に選択することができる。
- b.
- 術後発熱の鑑別診断ができる。
- c.
- 抗生物質による有害事象(合併症)を理解できる。
- d.
- 破傷風トキソイドと破傷風免疫ヒトグロブリンの適応を述べることができる。
- 免疫学
- a.
- アナフィラキシーショックを理解できる。
- b.
- GVHDの予防、診断および治療方法について述べることができる。
- c.
- 組織適合と拒絶反応について述べることができる。
- 創傷治癒
創傷治癒の基本を述べることができる。
- 周術期の管理
病態別の検査計画,治療計画を立てることができる。
- 麻酔学
- a.
- 局所・浸潤麻酔の原理と局所麻酔薬の極量を述べることができる。
- b.
- 脊椎麻酔の原理を述べることができる。
- c.
- 気管内挿管による全身麻酔の原理を述べることができる。
- d.
- 硬膜外麻酔の原理を述べることができる。
- 集中治療
- a.
- 集中治療について述べることができる。
- b.
- レスピレータの基本的な管理について述べることができる。
- c.
- DICとMOFを理解できる。
- 救命・救急医療
- a.
- 蘇生術について述べることができる。
- b.
- ショックを理解できる。
- c.
- 重度外傷を理解できる。
- d.
- 重度熱傷を理解できる。
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到達目標2
外科診療に必要な検査・処置・麻酔手技に習熟し、それらの臨床応用ができる。
- 下記の検査手技ができる。
- a.
- 超音波診断
自身で実施し,病態を診断できる。
- b.
- エックス線単純撮影、CT、MRI
適応を決定し,読影することができる。
- c.
- 上・下部消化管造影、血管造影等
適応を決定し,読影することができる。
- d.
- 内視鏡検査
上・下部消化管内視鏡検査、気管支内視鏡検査、術中胆道鏡検査、ERCP等の必要性を判断することができる。
- e.
- 心臓カテーテルおよびシネアンギオグラフィー
必要性を判断することができる。
- f.
- 食道内圧検査、食道24時間pH モニター検査、直腸内圧検査、デフェコグラムなどの消化管機能検査
適応を決定し、結果を解釈できる。
- g.
- 呼吸機能検査の適応を決定し、結果を解釈できる。
- 周術期管理ができる。
- a.
- 術後疼痛管理の重要性を理解し、これを行うことができる。
- b.
- 周術期の補正輸液と維持療法を行うことができる。
- c.
- 輸血量を決定し、成分輸血を指示できる。
- d.
- 出血傾向に対処できる。
- e.
- 血栓症の治療について述べることができる。
- f.
- 経腸栄養の投与と管理ができる。
- g.
- 抗菌性抗生物質の適正な使用ができる。
- h.
- 抗菌性抗生物質の有害事象に対処できる。
- i.
- デブリードマン、切開およびドレナージを適切にできる。
- 次の麻酔手技を安全に行うことができる。
- a.
- 局所・浸潤麻酔
- b.
- 脊椎麻酔
- c.
- 硬膜外麻酔
- d.
- 気管内挿管による全身麻酔
- 外傷の診断・治療ができる
- a.
- すべての専門領域の外傷の初期治療ができる。
- b.
- 多発外傷における治療の優先度を判断し、トリアージを行うことができる。
- c.
- 緊急手術の適応を判断し、それに対処することができる。
- 以下の手技を含む外科的クリティカルケアができる。
- a.
- 心肺蘇生法―ALS(気管内挿管,直流除細動を含む)
- b.
- 動脈穿刺
- c.
- 中心静脈カテーテルおよびSwan-Ganz カテーテルの挿入とそれによる循環管理
- d.
- レスピレータによる呼吸管理
- e.
- 熱傷初期輸液療法)
- f.
- 経腸栄養の投与と管理ができる。
- g.
- 心穿刺
- h.
- 胸腔ドレナージ
- i.
- ショックの診断と原因別治療(輸液、輸血、成分輸血、薬物療法を含む
- j.
- DIC、SIRS、CARS、MOF の診断と治療
- k.
- 抗癌剤と放射線療法の有害事象に対処することができる。
- 外科系サブスペシャルティの分野の初期治療ができ、かつ、専門医への転送の必要性を判断することができる。
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到達目標3
一定レベルの手術を適切に実施できる能力を修得し、その臨床応用ができる。
一般外科に包含される下記領域の手術を実施することができる。
初期臨床研修期間を含めた研修期間中に術者または助手として、手術350例以上を経験する。
そのなかで術者としての手術120例以上を経験する。
以下の領域別分野の最低症例数を、術者または助手として経験する。
- 消化管および腹部内臓 10例
- 乳腺 10例
- 呼吸器 10例
- 頭頸部・体表・内分泌外科(皮膚、軟部組織、甲状腺、上皮小体、副腎など) 10例
- 小児外科 10例
- 各臓器の外傷(多発外傷を含む) 10例
- 鏡視下手術(腹腔鏡・胸腔鏡を含む:上記のうち、各分野における各種手術) 10例
- 心臓・大血管(10例)および末梢血管(頭蓋内血管を除く)の手術に関しては、当院心臓血管外科の手術 10例に助手として参加することとする。
後期臨床研修で習得すべき主な手術手技
初期臨床研修2年目
甲状腺部分切除術、胸腔ドレナージ、開腹術、虫垂切除術、腹腔ドレナージ、鼡径ヘルニア根治術、痔核根治術、痔瘻根治術
後期臨床研修1年目
甲状腺片葉切除術、乳腺腫瘍摘出術、開胸術、肺部分切除術(開胸下および胸腔鏡下)、胆嚢摘出術(開腹下および腹腔鏡下)、胃十二指腸潰瘍穿孔閉鎖術、胃瘻造設術、腸瘻造設術、イレウス解除術、小腸切除術、回盲部切除術、人工肛門造設術、腹壁ヘルニア修復術
後期臨床研修2年目
胸筋温存乳房切除術、乳房温存術、肺葉切除術、食道裂孔ヘルニア修復術、 胆管切開術、胆管腸管吻合術、胃亜全摘術、胃全摘術、結腸切除術、直腸切除術、腹会陰式直腸切断術、肝部分切除術、膵体尾部切除術、脾摘出術、副腎摘出術
後期臨床研修3年目
食道切除再建術、腹腔鏡補助下胃切除術、腹腔鏡補助下結腸切除術、肝区域切除術、膵頭十二指腸切除術
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到達目標4
外科診療を行う上で、医の倫理に基づいた適切な態度と習慣を身に付ける。
- 指導医とともにon the job training に参加することにより、協調による外科グループ診療を行うことができる。
- コメディカルスタッフと協調・協力してチーム医療を実践することができる。
- 外科診療における適切なインフォームド・コンセントを得ることができる。
- ターミナルケアを適切に行うことができる。
- 研修医や学生などに、外科診療の指導をすることができる。
- 確実な知識と不確実なものを明確に識別し、知識が不確実なときや判断に迷うときには、指導医や文献などの教育資源を活用することができる。
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到達目標5
外科学の進歩に合わせた生涯学習を行う方略の基本を習得し実行できる。
- カンファレンス、その他の学術集会に出席し、積極的に討論に参加することができる。
- 専門の学術出版物や研究発表に接し、批判的吟味をすることができる。
- 学術集会や学術出版物に、症例報告や臨床研究の結果を発表することができる。
(年2回以上の学会発表と年1編以上の論文作成)
- 学術研究の目的で、または症例の直面している問題解決のため、資料の収集や文献検索を独力で行うことができる。
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外科専門医の取得およびその後の研修
- 初期臨床研修の2年間と外科後期臨床研修のうちの2年間の、合計満4年以上経過した時点で外科専門医予備試験となる筆記試験を受験することができる。
- 初期臨床研修の2年間と外科後期臨床研修3年間の、合計満5年以上経過した時点で、予備試験に合格かつ到達目標3に示された最低手術症例数を充足した者は,外科専門医面接試験を受験することができる。
- 3年間の後期臨床研修(3年目が広島大学付属病院第2外科の場合)を修了した後は、関連病院で勤務しながら広島大学大学院に進学し、3年ないし4年間で学位の取得が可能である。大学院修了後の進路は海外留学、関連病院勤務、医局スタッフなどであり、卒後10年をめどに外科関連学会の専門医の取得を目指すこととなる。
消化器外科専門医(7年)、呼吸器外科専門医(7年)、日本乳癌学会認定医(5年)、乳腺専門医(8年)、日本大腸肛門病学会専門医(9年)、透析専門医(7年)、肝臓専門医(7年)
カッコ内の数字は、いずれも当該学会に入会後の最短年数を示す。
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