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【講演1】
救急車を呼ぶとき
トップページ第22回講演会>【講演1】救急車を呼ぶとき

豊田: 豊田章宏  それではですね、今日最初のお話を承りたいと思います。
 このすぐお隣に、我々がいつもお世話になっております呉市東消防署がございますが、そこの救急司令官、遠北さんからお話を伺いたいと思います。
皆さんは救急車呼んだ経験がありますか?(場内、遠慮がちにパラパラと手が挙がる) あります? じゃあ呼んだことないひと?(同じくパラパラと手が挙がる。ちょっと増えた感じ)では乗ったことのある人?(挙手に慣れてきたのか4分の1くらい手が挙がる) お世話になった方も結構いらっしゃいますね。 実際に救急車を呼ぶときにはどうしたらいいのかとか、いまの救急事情はどうなっているのか、そういったお話をお伺いしたいと思います。
 遠北さん、お忙しい中、今日はありがとうございます。それではご講演をよろしくお願いいたします。(拍手)

写真・遠北克弘さん 遠北 克弘 さん
   呉市東消防署 救急司令官



 こんにちは、呉市東消防署の遠北と言います。脳卒中フォーラムにお招きくださり、ありがとうございます。
 今日は脳卒中のお話なのですが、脳卒中を発病されたとき、多くの人が119番通報して救急車を呼ぶと思います。 そのため、消防の立場から、呉市における救急の現状と救急車の呼び方のお話をさせていただきます。
図1:呉市の消防署
図1:呉市の消防署
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 呉市は、353平方キロメートルの面積があり、22万7千人の人が暮らしています。平成28年には、全国46番目の中核市になりました。 広島県3位の人口がいますが、海や山の自然に恵まれ、市街地がその自然により分けられています。 消防署は本部が1、大きな消防署が3、出張所と呼ばれる小さな消防署が11あります。そして、多くの119番通報は、呉市中央3丁目にある呉市消防局の通信指令室につながるようになっています。
図2:呉市の救急隊
図2:呉市の救急隊
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 呉市には、全ての消防署や出張所に14隊の救急隊がおり、365日24時間体制で活動しています。 呉市の消防署や救急車の数は、国が定める基準より、かなり手厚いものとなっています。また、離島があるため救急艇も配備しています。
図3:救急件数
図3:救急件数
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 救急件数は、平成の大合併があった平成17年に年間の救急出動が1万件を超えて、昨年は11,209件と過去最高を記録しました。 一日平均では31件、47分に1回出動した計算となり、一回の出動が平均60分位なので、いつも救急車が出動していることとなります。 また、搬送人員は10,142人と、市民の23人に1人が搬送された計算になります。前年に比べ、救急件数は678件増加、搬送人員も482人増加しています。
 ちなみに、平成元年の救急件数は4,500件で、30年間で2.5倍に増えています。今後も救急出動は、微増か横這いの状態がしばらくの間続くと思われます。
 なお、全国の救急出動は、おおよそ605万件で5秒に1回出動して、国民の23人に1人の548万人が運ばれています。
図4:出動種別
図4:出動種別
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 救急出動の種別は、1番多かったのが病気になって呼ばれる急病で、全体の61.7パーセント、2番目が怪我をしてよばれる一般負傷16.5パーセント、 3番目は病人などを病院から病院に運ぶ転院搬送10.7パーセント、4番目が交通事故により怪我をした6.8パーセントと続いています。
図5:出動ランキング
図5:出動ランキング
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 一年間で最も出動した救急隊は、西本署救急隊の2,510件、2位が東本署救急隊の1,638件、3位が昭和救急隊の1,065件と続いています。
図6:救急車の到着時間
図6:救急車の到着時間
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 救急車が現場に到着する平均時間をご存じですか?どなたか答えて頂ける方おられますか? (会場から自信なさげに答えた方がいらしたのですが声が小さく届かなかった)ちょっと聞こえにくいですけど、
 全国平均で8.6分、
 県内平均は8.2分、
 呉市の平均は7.5分となっており、呉市はかなり到着時間が早い方です。
 しかし、5年前の平均到着時間が6.8分ですから、0.7分、約42秒も遅くなって、年々遅くなっています。 近くの救急隊が出動中は、別の救急隊が出動する体制となっていますが、遠くの消防署から出動するため、更に到着が遅くなります。
図7:日本人の死亡原因
図7:日本人の死亡原因
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 日本人の死亡原因の1位は悪性新生物、ガンと呼ばれるものです。2位は心疾患、心筋梗塞などで、3位は肺炎・気管支炎などの呼吸器疾患、 4位脳出血・脳梗塞などの脳血管障害、5位交通事故やけがの不慮の事故と続いています。心疾患、脳血管障害、不慮の事故などは、 早期に治療を開始することにより、その後の体調が良くなるものが多くあります。また、心肺停止患者も、 早期に処置を開始することにより社会復帰できることがあります。このようなときには、遠慮なく救急車を呼んでください。
図8:脳の病気
図8:脳の病気
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 今日は22回を迎えた脳卒中フォーラムと言うことで、脳のことを中心にお話しします。
 先ほども述べたとおり、平成29年は11,209件の救急件数がありました。その内、61.7パーセントが急病で、8.3パーセントの575件が、 脳卒中などの脳の病気と診断されました。
図9:脳卒中
図9:脳卒中
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 脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血やくも膜下出血があります。
図10:こんな症状の時119番
図10:こんな症状の時119番
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 それではどのようなときに、救急車を呼んだら良いでしょうか。
  •  頭の症状では、バットで殴られた様な痛み、今まで経験したことのないような頭痛などの突然の激しい頭痛。
  •  急にふらついて、立っていられないようなふらつき。
  •  顔の症状では、急に顔の半分が動きにくくなったり、しびれる。
  •  急にろれつが回らなくなり、しゃべりにくい。しゃべれなくなった。
  •  急に見える範囲が狭くなった。
  •  急にものが二重に見える。
  •  手足の症状では、急に片側の手足に力が入らなくなった。
  •  急に痺れが出た。
 こんな時には、躊躇なく救急車を呼んでください。
図11:迷ったら119番
図11:迷ったら119番
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 他にも、
  •  急に意識の状態が悪くなったり、意識がなくなった。
  •  けいれんが止まらないなどの症状があります。
 迷ったときには、救急車を呼んでください。
図12:高齢者以外でも
図12:高齢者以外でも
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 先ほど説明した高齢者の症状は、総務省消防庁のホームページに掲載されている救急車利用リーフレットに書いてあります。 他にも成人用や小児用もありますので、ご利用ください。
 繰り返しますが、急な症状で迷ったときは、救急車を呼んでください。
 高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈(心房細動)、 動脈硬化と診断されている人や肥満、喫煙習慣、過度な飲酒や運動不足の人も脳卒中を起こしやすいと言われています。 かかりつけ医に相談しながら、体調管理をしてください。
図13:早く治療開始すれば
図13:早く治療開始すれば
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 この病気でも、早く治療を開始することで、亡くなったり、後遺症を少なくすることができます。
 次に救急車の呼び方です。
 いまから聞いていただく音声は、呉消防が昨年度から始めた、小学校5年生を対象にした救急講習で使用している救急車の呼び方の音声です。


 この動画は外部サイトにアクセスしています。再生できないと表示された場合は事務局までご連絡ください。

 119番通報されたことがある方、おられますか?(パラパラと手が挙がる)はい、何人かおられますけど、こんなにスラスラと話ができましたか? 

図14:司令官員の質問に答えて
図14:司令官員の質問に答えて
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 なかなか難しいと思いますので、もし救急車を呼ぶときは、指令官員の質問に答えてください。
 内容は
  •  出動する場所の住所
  •  目標となる物
  •  患者さんの氏名、性別、年齢、生年月日
  •  患者さんの状態
  •  だれが、いつ頃から、どうしたか、話ができるか、まひや痺れはないかなど、今の状態
  •  電話している電話番号と通報している人の名前
 聴いた情報は、現場に向かう救急隊に連絡して、救急隊員は必要な資器材の準備をします。
図15:準備しておく物
図15:準備しておく物
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 次に、救急車が来るまでに準備して置く物です。
  •  お薬手帳や飲んでいる薬
  •  保険証
  •  お金
  •  くつなどの履き物
  •  家族や親戚がおられる方は、その連絡先

図16:救急車が来たら
図16:救急車が来たら
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 最後に、救急隊が到着したら、救急隊員の質問に答えてください。119番通報時の内容と重複することがあると思いますが、指令員と救急隊員は別の人間です。
  •  事故の状況、救急車が来るまでの患者の変化
  •  行った応急手当
  •  持病、かかりつけ病院
  •  飲んでいる薬や医師の指示
などの患者情報を知らせてください。
 救急隊員は、自分たちの聴いた情報と観察した結果で、搬送する病院を決めて、受入れの電話をして搬送します。
図17:呉氏からもお願い
図17:呉氏からもお願い
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 脳卒中を発症しないことが一番ですが、もし発症したら、早く治療を開始することで、亡くなったり、後遺症を少なくすること、普段と変わりない生活ができることがあります。
 救急隊や消防隊は、あなたの側に駆け付けます。
 救急車を適正に使ってクレと、呉氏も申しております。
 以上をもちまして、私の話は終わりたいと思います。
 ご静聴、ありがとうございました。(拍手)

豊田:  はい、遠北さん、ありがとうございました。
 消防の方々は随分と頑張ってくれていますね。呉市は特に対応が早いようですね。7分台といえば広島県の中でも優秀な早さですが、 呉市は坂道の街と呼ばれるくらい狭い坂道が多いですよね。救急車が入れないような場所ではどうされているんですか?
遠北: 写真・遠北克弘さん  救急車が入らない場所でも、救急隊は頑張っていますが、もしダメな場合、時間がかかる場合は、消防車と救急車が一緒に走ってるところを目撃された方がおられると思いますが、 救急隊支援出動と言って消防隊の人間に助けて頂いて、早く医療機関に搬送しようという方法を呉市は、県内では早い時期から始めています。
豊田:  ありがとうございます。車が入れないところも担架で人海戦術ですね。
遠北:  はい、そうです。
豊田:  そういった目に見えない皆さんのご苦労があって、短時間で運ばれるんですね。ありがたいことです。 冬になると、寒い地域だと雪が積もって、雪かきしないと入っていけないような家もあります。これも大変ですよね。
遠北:  そうですね。
 あともう1点。心肺停止の患者さんとか、重症外傷の患者さん、命にかかわるときには、 救急救命として救急車が到着する前に消防車を到着させる体制もとっています。呉市は住民の方に寄り添うような体制をとっていると言えると思います。
豊田:  はい、ありがとうございました。今後も市民のためによろしくお願いいたします。もう一度拍手をお願いいたします。(拍手)
 あの、先ほどの話にもありましたけど、救急車の呼び方ですよね。これはご自身だけわかっていても、倒れた時にどうにもなりませんので、 皆さんお帰りになったら、こんな症状があったら呼んでくれよと、お子さんとか、お孫さんとかに伝えてくださいね。
 講演でも小学校で授業をやったって話が出ましたけど、これはとても大事なことで、外国では小学校でこういうことやるんですよね。 命を守るのは小さいときの教育からです。 そして救急車で病院へ来られるときには、いろんな情報、保険証とか、お薬手帳とかそういったものがあると、受けた救急病院の医師も助かります。 それまでの治療によっては使えない薬があったりします。そして、できたらちゃんと判断のできる方が一緒についてきていただくと助かります。 緊急手術とか、処置をする場合に、お話をして同意を取れないこともありますので、 ご本人はせっかく来られたのに治療が始められないといったことのないように、その辺も普段からご準備いただけたらと思います。
講演当時のものです)
 
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