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【講演】 脳卒中の現状と治療
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島 部長 島 健  中国労災病院脳神経外科部長

 脳卒中は1995年まで日本人の死亡原因の第1位だったが、現在は悪性新生物に次いで第2位となっている。 それでも脳卒中の死亡率は、厚生省の調べで34.6%(平成元年)、当院のICU入室患者数で見ても38%(1986〜1996年)と高い割合となっている。
 脳卒中の原因別では、大きく出血性疾患(脳出血)と虚血性疾患(脳梗塞)と分類される。 1960年代は脳出血が多かったが、高血圧の治療や予防が進みその割合は減ってきた。 逆に食生活の欧米化が進んだことによって1990年以降は脳梗塞の割合が増えている。  出血性疾患はいわゆる脳出血とクモ膜下出血とに分けられるが、出血する部位によって症状や後遺症、 予後といったものが左右される。生命維持にとって重要な脳幹部での出血は症状も重く予後も悪い。 脳の底の部分にはウイリス動脈輪という環状の血管がある。ここで起こる出血がクモ膜下出血である。
 虚血性疾患は、動脈硬化によって血管がつまる脳梗塞と、心疾患の病巣からの血栓が脳血管につまり障害を起こす脳塞栓に分けられる。
 脳卒中の治療は、その原因が出血性か虚血性かを診断することから始まる。 その後の治療が正反対になるため大変重要である。現在はCTスキャンという検査で一目瞭然に分かるようになった。 さらに詳しく調べたい場合はMRI検査を行うことになる。これで診断がつけばその原因を取り除くための治療、 場合によっては手術を行うわけである。  脳内出血は、出血した血液を吸い取るための小さな穴を開けるだけでできるようになった。 動脈硬化などで血管が狭窄しているような場合はバイパス手術を行っている。 食生活の欧米化が進み、頚動脈血管が狭窄する例が増えている。 クモ膜下出血は、顕微鏡下で破裂した動脈瘤に小さなクリップすることで簡単に止血できる。 最近では健康診断などで動脈瘤の未破裂例が見つかるようになった。 未破裂例を治療成績は非常によい。脳ドックでの早期発見が重要になっている所以である。
講演当時の役職です)

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