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【講演】 脳卒中と動脈硬化
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大屋敏秀 大屋 敏秀  中国労災病院内科 医師

 高脂血症というのは、コレステロ−ルの値が高い高コレステロ−ル血症と 中性脂肪の値が高い高中性脂肪血症を合わせていいます。
 人が家を建てているところを思い描いてみましょう。人間の身体というのは切り刻んでいくと 最後は細胞の塊になっています。ばらばらにすれば一つ一つの細胞から成り立っています。 その家を細胞のひとつだと思ってください。皆さんは、コレステロ−ルと聞くと悪者のような イメ−ジを持っておられるのではないかと思うのですが、コレステロ−ルは人間にとって必須であり 大切なものなのです。家が今、細胞だと言いましたが、ひとつの細胞の中で コレステロ−ルというのは柱の役割をしており、これがないと、細胞というのは潰れてしまって、 それぞれの機能を果たすことができません。コレステロ−ルには、 まず第一にそのような役割があります。第二に、これは主に肝臓で行われているのですが、 コレステロ−ルからいろいろなものが作られています。一番代表的なものが、 あの副腎皮質ホルモンというなくてはならない物質です。第三にビリルビンなどの老廃物が 運ばれる時、胆汁酸というものが必要なのですが、これもコレステロ−ルから作られているのです。
 コレステロ−ルの70〜90%は肝臓で合成され、その残りは直接食物から吸収して利用されています。 新聞その他で、善玉、悪玉コレステロ−ルとよく載っているのをみかけます。 これはコレステロ−ルを運ぶリポ蛋白のことで何種類かあります。 コレステロ−ルには何ら違いはないのですが、血中での存在形態により、役割が違っています。 具体的にいえばLDLというのが悪玉、HDLというのが善玉のコレステロ−ルのことです。
 では、コレステロ−ルが高いと、何故、動脈硬化等が起こってくるかということですが、 悪玉のコレステロ−ル(LDL)は、血管の一番内側の膜の中にも簡単に入ることができ、 LDLが血管の中に入ってくると酸化LDLといって本来のLDLではないものになってしまいます。 そうすると人間の身体というのは、異物が入ってくるとその異物を殺そうという、 身体を守る側の免疫が働いてしまいます。単球といいますが、血液中のマクロファ−ジが その異物を殺し、泡沫細胞となって沈着してしまいます。 そして、血管の中側からどんどん細胞が増殖して、より血管の中を細くしてしまいます。 そういう風に悪循環がどんどん重なって、血管が詰まってしまうのです。
 動脈硬化を進める因子として、年齢的なこと、危険な因子を受け継ぐ遺伝的なこと (家族歴)等は、どうすることもできません。しかし、高コレステロ−ル、高血圧、 喫煙等の危険因子は、自分たちの努力、管理で改善することができます。それでは、 これからどうすればよいのかというと、肝臓で合成されているコレステロ−ルの値は 変わらないのですから、第一に、食物から摂るコレステロ−ルの率を減らすことです。 総コレステロ−ルの値を220以下に保つことが必要なのですが、 これは善玉、悪玉コレステロ−ルの値を合わせたものです。ですから、 悪玉コレステロ−ル(LDL)の値がいくらかということを気を付けてください。 悪玉コレステロ−ル(LDL)の値は140以下が目標値で望ましいのですが、本人、 あるいは親族の方で心筋梗塞等の危険因子、素因を持っておられる方は120以下を 目標値としてください。
 今、マスコミ等でこれがいい、あれがいいといろいろと騒がれていますが、 それだけに固執するのではなく、コレステロ−ルの摂取量を考えて、 バランスよく摂取することが大切です。第二に、運動療法です。運動をすることによって、 中性脂肪の値を下げ、約一割程度ですが、善玉コレステロ−ル(HDL)の値を増やすという 利点があります。そして、これらのことでどうしてもコントロ−ルできなかった時、 第三として、薬物療法を行ないます。これも、継続して飲む必要があります。
講演当時の役職です)

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