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【講演】 脳卒中について考える
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島 健 島 健  中国労災病院 副院長・脳神経外科

 脳卒中は脳出血と脳梗塞に大きく分かれます。3割が脳出血で高血圧性脳出血、くも膜下出血などがあり昔は高血圧性脳出血は出血量が多かったのですが、最近高血圧のコントロ−ル、糖尿病の治療が上手くいき、うまくコントロ−ルできています。この疾患はCTを撮るとすぐにわかり、冬になると増えます。しかし、くも膜下出血は今でも半数が手術も出来ず、当院でも社会復帰できるのは4割程度です。出血の程度、くも膜下出血後の血管が細くなるなど血管攣縮の問題があり、致命的な疾患です。現在医療が進歩し、MRIの1.5テスラの機種だと3〜4ミリの動脈瘤が解ります。
 7割が脳梗塞で、食生活の欧米化により動脈硬化が強くなり血栓性の病気が増加してきています。
 脳卒中の危険因子として、高血圧、糖尿病、高脂血症、弁膜症以外の心房細動などの疾患、喫煙、ストレスなど日頃の生活も大事です。
 前触れ、発作として脳出血は免疫を得ることがないので、右の脳が出血し、その後よくなり数年後に今度は左側が出血することもあります。両側に脳出血を起こすと非常に予後が悪いので、生活習慣を良くすることが大切です。くも膜下出血は事前に予防することが大事です。前兆はないので祖父、祖母が脳卒中だったという様な脳卒中家系の人は15〜20%は異常が見つかるので積極的に脳ドッグを受けることが大事です。 脳ドッグで見つかった動脈瘤はどうするか?見つかった病院で手術する必要はありません。セカンドオピニオンというのですが、MRIの写真、紹介状等を持って他の医療機関に行き、大きさ、場所などにより手術した方がいいか、どこで手術すればいいか専門医によく話しを聞き決断すればいいのです。当院では、今迄何例手術し、不幸にして亡くなられた例、後遺症の残った例をお話し、納得して頂いた後手術をします。
 脳梗塞で倒れたときには早急に治療を開始します。脳の虚血は6時間以内であれば脳の主幹動脈が詰まったとしても何とかなります。MRIを撮れば脳の虚血が可逆性のあるところを早く察知出来ます。血栓溶解剤、薬の治療法の進歩、血管内治療等手術、診断力のアップにより3分の1は助かります。
 手足の痺れなどの脱力発作等一過性脳虚血発作を繰り返す時には出来るだけ早く専門医に診て貰いMRIなどの精密検査を受けるべきです。現在超早期の診断が可能で、超早期脳塞栓の治療に取り組むべきことが指摘されています。
 緊急・病気カ−ドを携帯することも大事です。外で倒れた時どの病院に運ばれるかは救急車しだいです。運ばれる病院が脳卒中の専門医のいる病院とは限らないので、自分の疾患、薬、血液型などを記入したカ−ドを持つべきです。
 ストロ−クケアユニットという概念を取り入れている病院はないのですが、予防、治療、リハビリと継ぎ目のない医療、シ−ムレス医療に私達は取り組んでいます。医療の流れとして、臓器別医療で、脳卒中医というように内科医、外科医の区別なく患者さんに戦略的に医療を行う事を目指しています。
 大阪の循環器病センタ−を中心に2年前に日本脳卒中協会ができ年1回会合が開かれ、脳卒中から回復した患者さん本人の話や、この会と同じ様に医者の話があります。こうした草の根運動が厚生省を動かし医療に貢献することになります。
 突然発作が起こるという言葉としては、ハ−トアタック(心臓発作)、ブレインアタック(脳卒中)という言葉がよく使われますし、又チ−ム医療、集学的医療が提唱されています。21世紀は脳の世紀の1面もあり、少子・高齢化社会で高齢者を中心とした医療がより大切になってきます。医療行政もどんどん変わってきますので、医学的なことのみではなく我々医者、看護婦、他の医療従事者も日々いろいろと勉強して対応する必要があると考えています。
講演当時の役職です)

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