食道・胃
診療科の特色
患者さん中心の医療をモットーとし、積極的拡大手術からより優しい低侵襲手術まで、それぞれの患者さんに現状で一番適した医療を提供する努力をしています。
手術的治療、抗癌剤治療、放射線治療(RT、IVR)をあわせた集学的治療、内視鏡を用いた低侵襲手術、積極的治療が困難となった場合の緩和医療を、患者さんの状態にあわせて選択し提供しております。
診療内容
食道 | 食道癌、食道胃逆流症、食道裂孔ヘルニア、食道アカラシア、食道静脈瘤など |
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胃・十二指腸 | 胃癌、消化管間葉系腫瘍(GIST)、十二指腸乳頭部癌、胃十二指腸潰瘍穿孔など |
小腸 | 小腸腫瘍、癒着性イレウス、メッケル憩室炎など |
大腸・肛門 | 結腸癌、直腸癌、大腸憩室炎による狭窄・穿孔、直腸脱、急性虫垂炎、痔核、肛門周囲膿瘍など |
副腎・脾 | 副腎腫瘍、脾腫瘍など |
上部消化管
主に胃がん・食道がんの手術に対応しています。
食道がんとは
食道がんは60歳以上の喫煙(ヘビースモーカー)・大酒家の男性に多く、多発/重複することがあります。周囲の重要な臓器(心臓・肺・気管・大血管など)に浸潤したり、リンパ節や他臓器に転移しやすい病気のため、早期発見が求められます。
症状
早期は無症状ですが、進行するとつかえ感・狭窄感・嚥下困難・異物感など嚥下に関する症状が出るため、食事量が減り体重減少を伴うようになります。さらに気管や肺に浸潤すると、咳や血痰、呼吸困難が出たり、リンパ節転移によって声がかすれるようになることもあります。上部消化管内視鏡・食道造影検査・CT・PET/CTなどの検査で確定診断を行います。
治療
治療方法として内視鏡・手術・化学放射線療法があり、食道癌診療ガイドラインに沿いつつ、様々な要素を総合的に判断したうえで治療方針を決定します。早期の食道がんは内視鏡切除が可能ですが、StageI-IIIの食道がんは外科手術を中心に考えていくことになります。患者本人の状態によっても様々な選択肢があるので、しっかりと話し合った上で治療方針を決定していくことになります。当院では術後の創の疼痛軽減や呼吸器合併症の低減が期待できる腹臥位胸腔鏡・腹腔鏡下食道亜全摘術を行っています。StageIVと診断された場合は、まれに根治を目指せるケースもあるものの、多くは根治を目指すことは難しく、症状緩和の意味合いも含め化学療法や化学放射線療法を行います。
実際の当院手術(腹臥位胸腔鏡・腹腔鏡下食道亜全摘術)


胃がんとは
胃がんは胃の粘膜より発生するがんで、少し前までは極めて高い罹患率・死亡率となっていましたが、近年はヘリコバクター・ピロリ菌の除菌率上昇や検診での早期発見により、男女とも大きく改善してきています。一方で、高齢者患者や食道-胃のがん(胃食道接合部がん)が増加してきていることが注目されています。

国立研究開発法人国立がん研究センター
症状
発症早期では症状が出ることは少なく、進行しても無症状のことがあります。特徴的な症状は無く、嘔気・嘔吐、食欲不振、胃もたれ、胸やけ、腹部膨満感、腹痛、黒色便などの症状が出ることもありますが、これらの症状は胃潰瘍や胃炎などでも出現するため、上部消化管内視鏡やCTなどで検査しなければ確定診断はできません。
治療
胃がん治療は、内視鏡治療、手術、化学療法の3つが中心であり、治療法はその進行度により決まります。
当院においても、日本胃癌学会で作成された治療ガイドラインに沿いつつ、内視鏡治療適応外である胃がん(早期がんだけでなく進行がんも)に対し、低侵襲である腹腔鏡下胃切除術を積極的に行っています。残胃癌や拡大手術が必要な病態、患者個々の状態によっては、安全面を考慮し、開腹手術を行うこともあります。
主な術式/再建
病変の部位や進行度により、切除範囲や再建方法などが異なります。
① 幽門側胃切除術:胃体部-下部


② 胃全摘術:胃上部/多発胃がんなど

③ 噴門側胃切除:胃上部/胃食道接合部癌


さいごに
質の高い胃癌治療を広く社会に提供する目的で2023年に発足した日本胃癌学会の施設認定制度において、当院は日本胃癌学会認定施設(B)に認定されました。引き続き、地域の胃がん治療の中核病院として、患者さんの体に優しく根治性の高い治療を提供していきます。