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PRP/APS療法について
PRP(多血小板血漿)療法とは、私たちに本来備わっている「治る力」を活性化する新しい治療法です。
PRP療法は傷んだ組織を修復する治療法で、自己の血液中に含まれる血小板の成長因子を利用します。元来血小板は傷ついた場所に集まり、血を固める働きがありますが、同時に組織の修復を促進する多くの成長因子の働きによって治癒します。この自己の修復能を利用し、「自己の治癒力」を高めて患部の疼痛の軽減や、傷んだ組織を修復する治療法がPRP療法です。
自己の血液から取り出す成分で治療を行うため、重篤な副作用はなく、また身体の局所や関節内への成分の注入のため、手術のような身体への大きな負担はありません。海外では2000年以降、『“自己治癒力”をサポートする治療法 : バイオセラピー』として、主に早期復帰を目指すスポーツ選手に対して行われています。メジャーリーグの田中将大選手や大谷翔平選手が本治療を行ったことで、一般にも知られるようになりましたが、良好な治療結果が報告されています。
PRP/APS療法を動画で解説
次世代PRP療法のAPS療法
抽出されたPRPから、抗炎症成分(抗炎症サイトカインリッチ)など関節の安定性に関与する成分を高濃度に抽出したものがAPS(自己蛋白質溶液)と呼ばれる成分で、これを使用する治療がAPS療法です。この成分は、膝関節内で炎症を引き起こすタンパク質(各種の炎症性サイトカイン)の活動を阻害し、炎症を抑える効果があり、欧州での臨床試験では、1回の注入で最大24カ月間にわたり痛みと機能の改善がみられたと報告されています。
従来比較的症状が軽い変形性関節症では、主に運動療法や薬物治療が行われ、関節症の進行とともにヒアルロン酸注射などが行われてきましたが、関節内の環境を改善する治療法ではなく、関節症の進行とともに骨切り手術や人工関節置換手術が行われてきました。このAPS療法は、軽症から中等度の関節症に対して、関節内の環境改善が期待できる新しい治療法になると考えています。
治療の流れ
外来で患者さんから静脈血(約55ml)を採取し、遠心分離機にかけてPRPを抽出します。筋・腱・靱帯損傷では、抽出したこのPRPを約2ml局部に注射しますが、変形性関節症ではさらに遠心分離して抗炎症成分など関節の健康に関与する成分を取りだし、関節内へ注入します(下図)。この取り出した成分が自己蛋白質溶液(Autologous Protein Solution : APS)です。
自己の血液を使用するため安全は高く、また閉鎖式の血液成分分離キットを使用するようになり感染リスクも減少し、安全で再現性を持った必要成分の分離・抽出が可能となっています。アレルギーや感染の心配もなく、とくに重篤な合併症はみられませんが、関節内注射後の局所の痛みや腫れ、ときに発赤や灼熱感が一過性にみられます。
ただ、PRP療法、APS療法ともに現在のところ保険診療としては認められておらず、自由診療で行われています。当院ではつらい関節の痛みや活動の制限を抱えておられる患者さんの治療の一つの選択肢として、この治療法を採用しました(「再生医療等の安全性確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省への届出施設となっています)。
治療効果が期待される疾患
- 1
- 筋・腱・靱帯損傷(PRP=GPS療法)
上腕骨外上顆炎(テニス肘)、アキレス腱炎、膝蓋靱帯炎(ジャンパーズニー)、
足底腱膜炎、肘・膝靱帯損傷、肩腱板損傷、肉離れなど - 2
- 変形性関節症・関節炎(APS療法)
変形性(膝・股・肩)関節症、および関節炎
治療名 | APS療法 | GPSⅢ療法 | 一般的なPRP療法 |
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特徴 | 変形性関節症に特化した治療法 | 自然治癒力を高める治療法 | |
投与する回数 | 1回 | 1回 | 3~4回 |
痛み抑制期間 | 12~24カ月 | 6~12カ月 | ~4カ月 |
炎症抑制成分量 (抗炎症サイトカイン) |
多い | 中くらい | 少ない |
成長因子量 | 多い | 中くらい | 少ない |
改善期待値 | 期待大 | 期待できる | 期待できる |
治療費 | 300,000円 | 100,000円 | (当院では未施行) |