【実演】 もしも脳卒中になったら、その対処法 |
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松井 英俊 呉大学看護学部 看護学科教授* & 看護学生のみなさん 皆さんこんにちは!私たちが脳卒中出前講座を始めて35回を超えました。 おかげさまで、呉地域での講演は22地区となりました。脳卒中予防が地域に浸透するように今後も継続していきたいと考えています。 脳卒中予防出前講座を実施して、その講演を聞いておられた方が「手が麻痺した感じがする」とおっしゃって、すぐに脳卒中だと疑い病院に行かれたそうです。その後、2週間入院され自宅に帰られたそうです。 このように、早期に発見することが脳卒中症状を軽減させることにつながっています。おかしいな?と思ったら、早く病院を受診してみてください。 事例1 脳梗塞が起こった人の救急対応 道中庄助(仮名)さん 66歳 朝起きてトイレに行こうとしていた。少しフラついていたが、昨日のお酒が残っているんだろうと思っていた。 しかし、いつもと違い右手が重いような、しびれているような感覚がする。まだ手も指も動くがなんだかいつもと違う。おかしい! そして用をたしているとき突然右手が重くなった。右足に力が入らなくなった。倒れそうになるのを必死でこらえて妻のもとに行った。 …が、妻はまだ寝ている。 妻を呼ぼうとするが声が出ない。そうしているうちに体のバランスがとれなくなって倒れてしまった。ビックリして妻、目覚める。 「おとうちゃん…どうしたん…」 右手が動かない、声も出ない、しゃべろうとするが言葉になっていないようだ。 妻はどうしようかと慌てていたが、・・・そうか!と手をうつ。呉大学の講座で教えてもらった脳卒中の救急対応があることを思い出した。すぐに電話の前に行き「そうなったとき連絡表」をみて119番通報をした。 「そうなったときの連絡表」は第9回講演会「脳卒中の予防と対処法(松井英俊先生)」にあります。 (↑クリックすると、新しいページで開きます) “はい、こちら山の上消防! 火事ですか? 救急ですか?” 「もしもし、こちら道中です。夫が急に倒れて声が出ないんです。右手が動かないようで麻痺しているようです。すぐに来てください。」 “意識はありますか?” 「はい、あります。」 “口の中から泡や食べたものを吐いていませんか?” 「ないです。」 “そのままの状態で横になっておいてください。もし吐き気や意識がなくなってきたら身体を横にむけて顎を上げるようにして気道を確保してください。” 電話を置き、夫の肩に枕を入れて気道を確保する。そして、気道がしっかりとまっすぐになるような体位を整える。 (バスタオルや服など近くにあるものでなんでもいいので肩の下に入れます。写真ように顎を上げます。) 事例2 心臓疾患由来の脳塞栓の人の場合 山野 介護さん 56歳。 今日は一ヶ月ぶりのゴルフの日である。 久々のラウンドに気持ちが高ぶっていた。昨夜も興奮してあまり眠れていなかった。 少ししんどかったがゴルフができるということで気持ちはもうグリーンの上だった。そうこうしているうちに会社の人が迎えにきた。 外山さん:「山野さ〜ん、ゴルフ行きましょう!」 子ども持代を思い出すうれしい誘いである。 ここはすでにグリーンの上、まさに今からカップインというところであった。 急に動悸がしてきた。気分も悪くなり足元がおぼつかなくなった。そして、目の前が暗くなっていくような感じがしてその場にガクンと膝から落ちて前のめりに倒れてしまった。 会社のみんなは慌ててキャディさんに救急車を呼べと言ったり、一人でレストハウスに走っていき救援を呼ぼうとしている友人までいた。その中の一人の外山さんは、先週の脳卒中講座で救急看護を受講したばかりであった。 「大丈夫か?・・・歩けるか?」 とっさにとった行動は、山野さんの意識を確かめ、歩けるかどうかを確認した。意識はあった。そしてゆっくりながらも歩くことができたため木陰に横にならせた。上着のボタンをはずし、ズボンのベルトをゆるめ、楽な姿勢にさせ救急車の到着を持った。 「気分は悪くないか、のどは渇いていないか?」 救急車を持つ間、外山さんは気分不良やノドの渇きがないか聞いていた。 山野さんはノドが渇いたというので持っていたタオルに水を浸し、唇を潤す程度に押し当てた。うっかり飲ませると飲み込みが悪く気管に入ってしまう恐れかあるということを知っていたからだ。 救急車が到着した・・・ “どのような状況で倒れましたか?” 「急に胸に手をあててその場に膝から倒れこんで…顔色が悪かったんです。麻痺はなかったんですが、言葉はしゃべれてました・・・」 救急隊はすぐに脈をとり、血圧測定をすると同時に病院の手配をはじめた。 “脈は60回不整脈あり、血圧は上が80、下が40です。” 車内では心電図モニターが装着され、脳卒中診療所のドクターに電子転送された。心房細動による心臓内の血栓が脳にとんだことが疑われたため、すぐにこちらに搬送するよう指示がでた。 病院到着後、山野さんは左手がしびれだし、カが入らなくなっていた。運ばれてきた場所もはっきりわからなくなっていた。意識はあったが、ぼんやりした感じがしていると訴えていた。 搬送されたのちナースが意識状態や脳卒中の機能障害のレベルをみていた。 「ここがどこかわかりますか? 名前はいえますか? 手を握ってください。 ちょっと目をみせてください。」 発見後、緊急対応がよかったことやすぐに救急車を呼んだことが幸いし、山野さんは6時間後には麻痺もしびれも改善していた。様子観察のため1週間入院するが、後遺症もなく退院することができた。 事例3 脳出血の人の場合 ヤブサカ 伝の助さん 45歳。 ちょっと太りぎみな体型を少し気にしていたが、相変わらずの暴飲暴食、喫煙、不摂生きわまりない生活を送っていた。 仕事はパソコンに向かってのデスクワークを行っている。ストレスがたまるばかりで、食べてストレスを解消していた。 妻や娘たちも、父の肥満には文句を言っていた。それもまたストレスとなった。 ヤブサカさんはストレス解消と肥満解消をねらって週に1度スポーツジムに通いはじめた。 なんという心地よい汗をかくものだと、ジムに通いはじめたことを喜んでいる。普段は運動をしないヤブサカさんは次から次へとメニューをこなしていった。 ある日、ランニングマシンをしていた同年代の人をみていたら自分はもっと長時間走れるだろうと思い、ランニングマシンに乗った。 ピッチを上げているとき、急に頭が痛くなり、そして頭の中が真っ白になり、足元のローラーベルトに膝を落としてしまった。その後、左手が麻痺し、動かなくなった。 それをみたスタッフがすぐに駆け寄り、意識を確かめた。目は閉じていた。呼びかけるが返答がない。 すぐに携帯から119番通報した。スタッフは呉大学の学生であり、救急看護の講座を受けていた。 “はい、こちら山の上消防 火事ですか、救急ですか?” 「もしもし、こちらスポーツジムリカバリーです。お客さんの意識がなくなっています。 どうしてそうなったかわからないんですが、見たときには膝が床について手足がだらりとなっていました、すぐにきてください。」 “口の中から泡や食べたものを吐いていませんか?” 「ないです。」 “そのままの状態にして動かさないようにしてください。もし吐き気や意識がなくなったら身体を横にむけて顎をあげるようにして気道を確保してください。” 「わかりました、あ、あぁ、吐き出しました。何か水みたいなものをゴボゴボと…。」 “すぐに身体を横にむけてください。そして顎をあげて気道確保をしてください。” このように膝を立てて、腕をお復の上に置いて膝と肩を支えて体を横に向けます。そして顎を上げて気道を確保します。 スタッフは血圧を測っておこうと測ってみると上が230下が150であった。 救急隊到着。救急センターにホットラインをいれた。ストレッチャーで搬送され病院に到着した。 病院ではナースがヤブサカさんの意識を確かめ、脳卒中重症度評価を行い脳卒中の程度を観察していた。 「ここがどこかわかりますか? 病院ですよ! 名前いえますか? 手を握ってください。 指を追ってください。 目を見ますよ〜」 その後、ヤブサカきんは血圧を下げる薬を投与された。麻痺は軽度で済み、リハビリが開始され、順調に退院し職場復帰に至った。 ヤブサカさん:「もう酒もタバコもやめた!みんなさんも一緒にやめましょう。」 事例4 くも膜下出血の人の場合 茶花 かおるさん 女性60歳。 毎日朝早くから起きて、ラジオ体操からはじまり、犬の散歩をして、そのあと孫と息子と嫁の弁当を作ることが毎朝の日課であった。 2級ヘルパーの資格を持っているため昼間は近所のヘルパーステーションでヘルパーの仕事をしていた。 夜は週3回、ヨサコイ踊りの稽古に余念がなかった。 さらに、空いた時間には、お華を教えているなど、超いそがしく超幅広い活躍をしていた。 そして、健康には人一倍気をつけており、食生活は3度3度きっちりと食べ、酒もタバコもたしまなかった。 しかし・・・ ある日、頭が痛いと思っていたが頭痛薬を飲んで仕事をこなしていた。介護しているおじいさん宅で食事介助をしていたときであった。 突然頭をカナヅチで殴られたかのような痛みがはしった。その後、頭を抱え吐き気を催し、その場に倒れてしまった。 しかし意識はあったので何とか連絡しなきゃと思った。訪問の仕事にきていたのでその場には、茶花さんとおじいさんの二人だけ。 介護の必要なおじいさんは車椅子だったため電話がかけられない状態であった。茶花さんは力を振り絞り携帯電話で救急車を要請した。 茶花さんは、これはくも膜下出血であると直感した。以前脳ドッグで脳の血管に動脈瘤があるから血圧コントロールや無茶な行動は慎んだほうがよいといわれたことを思い出した。 「救急車をお願いします。」 声もしぼりだすくらいの声であった。 “どうされましたか?” 「頭が、頭が割れそうに痛いんです。すぐに来てください」 “了解、すぐに出動します” 救急隊が到着したときには意識がもうろうとしていた。 「脳外科にかかっているんです。かかりつけの病院のブレイン先生のところに連れていてください。」 救急隊はその病院に連絡した。 病院では主治医のブレイン先生が手術適応ありと判断して準備をしていた。 カルテには以前、動脈瘤があるためくも膜下出血の可能性が高いと記載があった。このたびは動脈瘤が破れてしまっただろうと予測し最善の準備に余念がなかった。 無事手術も終わり、茶花さんは3週間入院し、麻痺、後遺症もなく退院することができた。今はまた前と同じような生活パターンを過ごしているが、激しい踊りは控えている。
「脳卒中予防10カ条」を会場全員で唱和しました
この寸劇は呉大学看護学部学生の皆さんが演じていらっしゃいます。脳卒中予防と対処法の講演をご希望の方は、呉大学看護学部松井までご連絡下さい。 hidemomo@kure-u.ac.jp まで ※メールアドレス収集防止目的でアットマーク(@)を全角文字にしています。ご注意ください。 (*講演当時の役職です)
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