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【講演3】
脳卒中後のリハビリテーションについて
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豊田: 豊田章宏  さあ、それでは入院して治療してとなると、リハビリテーションをしっかりやっていかなきゃいけませんね。 どんな病気でもリハビリテーションは必要なのですが、とくに脳卒中の場合は、なるべく早い時期からきっちりと行って、 なるだけ後遺症を少なくしたいのです。そのためには救急車で運ばれた急性期病院での治療と並行して始まり、 それからリハビリテーションを専門に行う回復期リハビリテーション病院で時間をかけて行います。 そして、お家に帰ってからも機能を維持するために続けていきます。
 手足の運動麻痺と違って、人から見てなかなか分からない障害というのもあります。例えば感覚障害とかは人が見ても分からないものですから、 理解してもらえないことがあります。高次脳機能障害といって、集中力が低下するとか、 物事の手順がわからなくなるとかいう症状もまたわかりづらい症状でしょう。そうした障害もちゃんと理解して、対応できること、 周りにも説明をして適切な配慮をお願いできること。それが社会生活のうえでは必要となります。家庭だけでなくて仕事に戻ったときには特に大切です。
 実はリハビリテーションは機能訓練だけではなく、そういった社会復帰のためのあらゆる手段を含んでいます。 だって、病院から退院することがゴールではないでしょう、元の生活になるべく近づくことが目標です。
 それでは、呉の代表的な回復期リハビリテーション病院のひとつでもあります、マッターホルンリハビリテーション病院の理学療法士、 吉田先生から脳卒中後のリハビリテーションのお話を伺いたいと思います。
 先ほど外のホワイエで運動指導をやっていましたよね。広島県理学療法士協会の呉支部もこの会をサポートしてくれていますので、 その中の代表という立場でお話を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)


写真・吉田康兵さん 吉田 康兵 さん
マッターホルンリハビリテーション病院 理学療法士



 はい。ご紹介ありがとうございます。あらためまして、呉市にあるマッターホルンリハビリテーション病院の理学療法士をしております吉田と申します。 今日はよろしくお願いいたします。(拍手)
 タイトルは脳卒中後のリハビリテーションとなっているのですが、もちろん栄養管理とか、血圧管理とか、こういったところも重要なんですけれども、 まずは回復期病院というものがどういったものなのかっていうところと、呉市はかなり高齢化が進んでおりますので、入院する期間、 さきほど半年と言われておりましたけれども、それがどんどん短くなっております。短くなっていく中で次にどうつなげていくか、 運動の重要性といったところも伝えていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
図1:本日の流れ
図1:本日の流れ
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 本日の流れとしましては、脳卒中のリハビリの流れ、そして回復期病院とは、呉市の回復期病院てどこにあるんだろう、うちは回復期病院なので、 ひとつの例として、当院の入院時の流れ、退院後のリハビリの重要性、運動の重要性とも言えます。あとは聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、 「いきいき百歳体操」というのが今、呉市のほうでもやられています。当院のほうでもこれはリハビリの一環として進めていきたいと思っておりますので、 せっかくなので実践のほうもしていきたいと思います。
図2:脳卒中のリハビリの流れ
図2:脳卒中のリハビリの流れ
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 まず、脳卒中後のリハビリの流れなんですが、おさらいにもなるんですけれども、まず急性期病院というものがあります。中国労災病院とか、済生会病院とか、 共済病院とか、そこではさきほど言われたように、症状安静というところも出てきますし、積極的なリハビリというところが、まだ難しい時期であるので、 廃用症候群というところの予防なんですが、要は安静によって筋力低下とか、そういったものが起きることを防ぐことが重要になってきます。 あとはできる限り身の回りの生活、トイレとか、清容とか、そういったものの早期自立を進めていきます。
 次に回復期病床というものは、最大限の機能回復、麻痺をしてしまうと、なかなか動かなかったりとか、歩けなかったりするので、そういった腕が動きやすい、 歩きやすいといったろころまで機能を高めていきながら、ADLというのが後から出てきますけれども、日常生活、歩く、トイレに行く、立ち上がる、 そういったものにつなげていって、最終的に社会復帰を目指す方は社会復帰をしていきたいというところです。そのあと維持期等もありますが、 今回はこの回復病床を中心に話をしていきます。
図3:回復期病院とは
図3:回復期病院とは
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 回復期病院とは、まず患者様とご家族がいらっしゃいます。それらを取り巻く医師、薬剤師、看護師、言語聴覚士というのもあります。 臨床検査技師、放射線技師、要は多職種で、集中的なリハビリテーション、集中的な運動、自宅復帰を目指して、社会復帰を目指していくという病院です。
図4:ADL(日常生活動作)食べる
図4:ADL(日常生活動作)食べる
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 さきほども言いましたが、日常生活動作、ADLというものなんですが、食べる、これは皆さん当たり前のように日々3食、もしくはそれ以上摂っていると思いますが、 こういった食べる動作の中でも、たとえば片麻痺が右腕にあったりすると難しいところもあります。食べる動作の中でも、お箸、スプーンをまず掴んで、 米をそれで挟んで、肘と肩を使って、口元に運びますよね。意外と当たり前にしてるようで、麻痺があると、肩が上がらなかったりとか、手が使えなかったりとか、 そういった動作があるので、こういった、とくに箸を掴む動作っていうのはかなり難しくなってきます。腕の力が弱い、麻痺があると、 スプーンで取ったのはいいんだけど、それを口に運ぶことができない、なので頭から手に向かっていくという動作をする方もいらっしゃいます。 それは腕の運動麻痺とか、手の運動麻痺によるんですが、今度は咀嚼する、口に運んだあとに噛む、飲み込む、これは嚥下するというんですが、 その口の中にも麻痺が出てきます。なので、噛めなくてよだれがタラタラ垂れたりとか、食べこぼしがあったりとか、また噛めるんだけど、それを飲み込めない、 飲み込んじゃうと食道に入るんじゃなくて、気道に入ってしまって、むせるとか、それを繰り返すと誤嚥性肺炎と言ってクセづいちゃうと、熱が長引いたりだとか、 それこそ運動が出来なくなるので、リハビリが出来なくなってきます。
図5:ADL(日常生活動作)歩く
図5:ADL(日常生活動作)歩く
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 次に歩く。今日も杖をつかれている方が何人かいらっしゃいましたが、歩くことにもかなり影響を及ぼしてきます。歩くというのは、 まず立たないと歩けないですね。そのあとに前に行こうと思うと、重心を前に持っていかないと前に足が出ません。足を出すということは、 片足立ちをしないといけない。その状態で重心を前に出さないと足が出せない。もっと言えば、足を上げるときは、みんなこうやって歩かないですよね。 膝を曲げてから歩きますよね。そういったいろんな動作が組み合わされたものが歩くということになってます。なので立たないといけないし、 重心を自分で制御していかないといけないし、片足で立ってバランスをとらないといけない、しかも片足の状態で足を前に出さないといけない、 膝も曲げないといけないていう動作が組み合わさってるので、意外と当たり前のように歩けている方でも、片麻痺を呈すとまったく歩けなくなったり、 歩く歩様が全然変わってきたりとか、ていう風になります。こういったところを改善するのが理学療法士の役目であって、リハビリ職の作業療法士の役目でもあります。
図6:ADL(日常生活動作)
図6:ADL(日常生活動作)
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 そのほかにも、朝起きますよね。トイレにも行きます。お風呂にも入ります。起きるっていうのは寝返りをしないと起きれないし、 トイレに行くというのは両手を離した状態でズボンを脱がないといけない。お風呂に入るときは跨がないといけない。 というような日常生活で当たり前にしていることが多いのですが、いろんな動作が組み合わさって意外と難しい動作になってきます。
図7:ADL(日常生活動作)
図7:ADL(日常生活動作)
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 こういったADL、起きる、食べる、歩く、トイレに行く、お風呂に入る、こういうことなどを、先ほど出した図のように患者さんとご家族の周り、 多職種がたくさんいて、一番下に書いてますけれども、これらがチームとなって各担当が入院後すぐに、 そのADLに積極的な働きかけで改善をはかって家庭復帰を進めていく。これが回復期病院の役割となります。
図8:呉市の回復期病院
図8:呉市の回復期病院
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 じゃあ、どこにあるのかということなんですが。地図です。ここが郷原なんですけど、ここが呉駅、広駅、3つあります。まず郷原のほうに呉記念病院。 多分、広の方だったら行く方も多いんじゃないかなとは思うんですが、もう1つは呉中通病院。その近くに、当院、 マッターホルンリハビリテーション病院というのがあります。主にこの3つが呉の回復期病院と言われています。
図9:当院入院中の流れ
図9:当院入院中の流れ
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 当院に入院してからの流れなんですが、まず、インフォームドコンセントというのは患者さんもしくはご家族に、当院のリハビリの方針はこうですよ、 あなたの病態はこうですよ、こういうリスクがありますよ、じゃあこれから先、こういうリハビリをしていきましょうね、で、 患者さんが納得をして同意をするということが一番初めに行われます。これはドクターからされることが多いです。
 次に検査測定。運動機能、生活能力というものがあるんですが、要は麻痺の腕が動くか動かないか、動かないんだったら、今度はトイレに行けるかどうかとか。 腕が動くか動かないかっていうのが運動機能。トイレに行けるか行けないか、そういった大きな生活範囲の中のものが生活能力なんですが、 そこの検査をしていくのに、まず認知機能。高齢の方が多いので、ちょっと物忘れがあったりとか、そういったところっていうのは、 リハビリに少し支障をきたすこともあります。あとは重要なのは麻痺の程度。全然動かないのか、少しは曲げたり伸ばしたりできるのか、 腕が曲がって伸ばしても手が動いているのか、そういったものを見ていきます。あとは足の力。足の力がちゃんと入るのか。 立って足を地面につけてしっかり支持できるのか。で、歩く力。歩く力はどれくらいの速さで歩けるのか。6分間歩行試験というのがあるのですが、 6分間すーっと10mコースをぐるぐる回ってもらいます。全力で。どのくらいの距離を歩けたかによって、その人の能力が分かります。 あとは各日常生活の動作能力。さきほど言ったトイレとか、入浴とか、食事とか、清容、髪の毛を触ったり、お化粧したりといったところも見ていきます。
 あとは問診です。聞いていろいろ確かめるんですが。まず予後予測として重要なものとしては、発症前の活動範囲とか移動状況、 要は発症前の能力というところが言われています。あとはリハビリを進めていくうえで、どれも重要なんですが、自宅内での役割。 これが今後できるかどうかというゴール設定というか、目標設定に中で重要なものになります。たとえば役割というと、家事をするかどうか。 男性でも最近家事をされてる方多いので、どのくらいの家事をしないといけないのか、選択をたたむぐらいでいいのか、 洗濯機につめて干すところまでやらないといけないのか、あとは畑を持ってる方も多いので、そういった役割っていうのも重要になります。 麻痺が改善したら畑ができるかどうかていうところも将来的に見ていくのが私たちの役割です。あと、生活動作のスタイル。 簡単に言えば入浴動作のひとつをとると、シャワーだけで済む方と、ちゃんと浴槽に浸かりたい方といらっしゃるので、個人によってまた変わってきます。 なので、一概に入浴というわけではなくて、シャワーだけなのか、入浴もしたいのか、そういったところも確認していきます。あとは意外と、自宅内の段差、 皆さんのご自宅も多いとは思いますが、1cm違うだけで、つまづく方がどんどん出てきます。 もしかしたら皆さんの中にもそういったところ自覚されている方もいらっしゃるかも知れませんが、麻痺があるとつま先が上がってこないので、 その1cmを上げることがすごく大変な場合がよくあります。それにつながって階段がどれだけあるのか。家に手すりはどれだけあるのか。間取りはどうなのか。 ベッドから食事をするところまで、もしくはベッドからトイレまで、そういった動線の長さはどうなのか。そういったところを細かく見ていくので、 皆さんからすると、そんな情報までなぜ教えないといけないのかという方がたまにいらっしゃるんですが、こういったところを知ってこそ、 これからの目標設定ができるので、その辺は教えて頂きたいところです。
図10:ゴール設定
図10:ゴール設定
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 なので、発症前の生活レベル、または急性期での回復状況、これらも重要だと言われています。あとは入院時の、先ほど言った、身体機能、能力、自宅の屋内状況、 手すりがあるかないか、あとは、大事なのは本人の希望、ご家族の希望、こういった多くの情報をもとに、今後の機能改善、麻痺がどれだけ改善するか、 そういった予後予測を私たちが立てて、どこまで生活的にレベルが目指せるのか、そういったところを担当者が推測していきます。ま、チームで推測していきます。 それらをもとに退院時の、および退院後のゴール設定、目標設定を行います。この人のレベルだったら屋外スタスタ歩けるところまでいけるよね、 だからちょっと買い物とかも試してみようかとか、ちょっと麻痺が強くて難しいので、車椅子の方向性になるんじゃないかなとか、そうすると、 さっきの家事の役割とか、その辺はどうしていこう。立ったら難しいから、車椅子でもできる方法を考えていこうっていう風に、 患者さんと一緒に考えながらリハビリを進めてまいります。
図11:チームカンファレンス
図11:チームカンファレンス
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 その時に重要になるのがチームカンファレンスと言って、いま言ったような目標設定とか、運動機能っていうのを、さきほど言った多職種、看護師さんだったり、 栄養士さんだったり、違うリハビリ職だったり、そういった人たちと共有していきます。で、それぞれの職種の中で、視点が変わってきたりするので、 そういうのをうまくまとめながら、じゃあ私からはこの患者さんに対して、チームとして何をしていこう、っていうところを、方針を立てます。 こういうのは入院時すぐにやったり、随時ですね、何か変化があればちょっと集まってみよう。何か困ったことがあったら集まってみよう。
図12:チームカンファレンス(参加者)
図12:チームカンファレンス(参加者)
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 あとは退院前のカンファレンスてのがあります。どんな内容を話すかというと、参加者はまずは、各医療職、さっきの多職種、あとは患者様、ご家族、 必要によっては他事業所のスタッフ、要は退院したあとにデイケア、デイサービスを利用する場合、ケアマネージャーという方とか、そこの担当療法士とか、 そういった次につなげる申し送りっていうのができるので、そういった方が参加することもあります。
図13:チームカンファレンス(内容)
図13:チームカンファレンス(内容)
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 何を話すかというと、時期によって変わってくるんですが、入院時からの変化点、機能が上がったり、能力が上がってくると目標設定のレベルも変わってくるので、 そういったところを随時方向性を見直しながらやってます。あとはリハビリだけではのでリハビリの方針と、それに向けた多職種の方針の照らし合わせ、家族の希望、 あとは不安があるかないか。はじめなかったとしても退院が近づいてくると現実味が帯びてきて、やっぱりこのあいだ不安でしたっていうことが多いので、 その辺を随時聴取していきたいところです。あとは入院中の生活、および問題点の伝達、退院後に向けての話ですね。あとは退院後に考えられる問題点の伝達。 回復期病院は2ヶ月間、もしくは3ヶ月間入院できるので、一番医療として携わっている時間が多い場所なんです。なので、 その方のキャラクターとか能力的な問題点とか、一番把握している病院だと思うので、その辺を次につなげるために、 こういったことを次の担当者に申し送ることができます。
図14:リハビリテーション
図14:リハビリテーション
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 次にリハビリテーションなんですが、これはうちのリハビリテーション室なんですけれども、まず365日やってます。正月も盆もやってます。 ゴールデンウィークもやってます。なので、患者さんからすると、日曜日もあるので、とても大変だと思うのですが、それだけ集中的なリハビリをしていかないと、 運動機能は上がらないということなので、365日、休みがないと思ってください。1日3時間、リハビリあります。 体力がある方は一気に3時間する方もいらっしゃいます。午前2時間、昼1時間分ける方もいらっしゃいます。 それは担当者とのスケジュール関係でいろいろ変わったりするんですが、意外と大変だと思うので、あのう(半笑い)皆さん来られた時には、分かってください。 皆さんのためにリハビリを進めているので、3時間はやります。
図15:理学療法士(PT)
図15:理学療法士(PT)
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 私、理学療法士です。他にもリハビ職として作業療法士と言語聴覚士とのがあります。それらがどういう役割を担うのかということを今から話していくんですが、 理学療法士は基本動作、と言ってもピンとこないと思うんですが、寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩く、ていうようなところに対して、 機能回復をサポートする専門家です。こういうような歩行練習をしていますが、そういった風景を見ることが多いと思います。
図16:作業療法士(OT)
図16:作業療法士(OT)
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 作業療法士っていうのは、どちらかというと日常生活、基本動作は理学療法士がやって、運動機能が上がってきたら、それをどう日常生活に組み込んでいくか、 入浴動作とか、食事とか、日常生活の動作というもの、あとは手とか腕のほうが強い専門家なので、手芸関係とか作業、作業というと何がありますか。 たとえば洗濯ばさみを掴むとか、これも手作業にはなるんですが、そういったものが難しくなってくるので、そういったものを反復して練習していくとか、 そういったところにつなげていくのが作業療法士です。あと認知的なところとか精神面の支えもしてくれます。脳卒中になると、 精神的に落ち込む方がよくいらっしゃいます。たとえばうつ傾向になったりします。そういった方のサポートをしてくれるのが作業療法士です。
図17:言語聴覚士(ST)
図17:言語聴覚士(ST)
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 言語聴覚士、さきほど食事というスライドの中に食べる、嚥下とか、飲み込む、噛むという話をしましたが、それを見てくれるのが言語聴覚士です。 言葉と耳なんですが、話す、聞く、食べる、飲み込むことに対して、機能回復させるリハビリ専門職です。ここもですね作業療法士と同じように、 認知的なサポートとか、そういううつに対するサポートをしてくれます。なので、理学療法士は簡単に言うと立って、歩いてっていうようなことで、 作業療法士はそういった動作をどうやって日常生活に落とし込むか。もしくは手をどう使ってどう応用していけばいいか。言語聴覚士は言葉、飲み込む、噛む、 ていうような嚥下機能、そういったところのサポートをするのが仕事です。
図18:リハビリ以外の時間の過ごし方
図18:リハビリ以外の時間の過ごし方
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 リハビリの話をしたのでリハビリ以外の時間の過ごし方なんですが、イメージなんですが、看護師さんの役割、 できないことは助けてくれるていうような印象を持ってる方多いと思います。回復期病院ではこれは違います。できないことを自分でできるように支援してもらう、 それを支援するのが回復期病院の看護師の役割で、できないから助けてあげるではなくて、時間がかかっても自分でやってもらうていうのが役割です。 要は自立支援です。家に帰ってもらわないといけないので、自分たちに依存してもらうというよりかは自分で時間をかけてもやってもらう方向性になります。 あとはリハビリ1日3時間あると言ったんですが専門職から考えると1日3時間しかありません。いま入院期間もどんどん短くなってきています。 あとまた話しますけど、リハビリをしている時間帯以外の時間も運動に費やす時間が必要になってきます。そこでうちで行っているのは集団リハビリ体操と言って、 あとで出しますが「いきいき百歳体操」とか、立ち上がり訓練ていうのをしていきます。これをやるだけでも効果があるというのは最近では言われているので、 リハビリ、プラスそれ以外の時間にこれをやるというのは、多分さらに効果があるんじゃないかなと思ってます。 なので、日中の半分くらいは運動に費やされると思ってください。4時間から5時間くらい、もう仕事だと(半笑い)思ってもらってもいいと思います。
図19:麻痺の回復が見込まれる期間
図19:麻痺の回復が見込まれる期間
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 で、ここでなんですが、麻痺の回復が見込まれる期間ていうのが発症後6ヶ月見込まれるといわれています。 6ヶ月間は動かなかった手が動くようになる可能性があるていう風にいわれてます。ただ、これは全国の回復期病院の在棟日数、 入院してる期間を表した表なんですが、70日前後て書いてあるのが分かるんですが、だいたい2ヶ月前後で退院が決まります。
図20:その後のリハビリが重要
図20:その後のリハビリが重要
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 高齢化になっていけばいくほどこれが短くなっていくといわれています。とくにいま短い時期なんですが、 半年間機能回復が見込まれるのに入院は2ヶ月で終わっちゃうんです。そこはどうしようもないので、 あと4ヶ月間は機能回復が見込まれる可能性があるということを皆さん覚えておいて欲しいんですが、 ということはその後のリハビリが重要だってことは分かりますよね。
図21:その後のリハビリ
図21:その後のリハビリ
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 その後のリハビリとしては、外来リハビリであったり、訪問リハビリだったり、いま当院の訪問リハビリの写真もあるんですが、あとは通所リハビリ、 通所リハビリで集団体操をやったり、あとはこのあと出てくると思いますが、介護事業、多分、ここに介護予防教室と言われてる方、 私も顔を見たことがある方が何人もいらしたので、分かると思うんですが、集団で体操とかをやるものがあります。この時に呉氏が来てくれたんですけどね。 あとは聞いたこともあるかな、住民主体の通いの場というものが呉市の事業で取り組まれてます。これは、専門職の関わりというのはあまりなくして自分たち、 高齢者の人たちが主体的に自分たちで運動していくというものであって、これは昭和地区のほうなんですが、 自治会館借りて自分たちで高齢者で集まって自分たちが主体となってリハビリ、体操ですね、体操をやっている風景なんですが、 こういったところも効果はあります。
図22:退院1週間から1ヶ月で能力が低下
図22:退院1週間から1ヶ月で能力が低下
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 リハビリ病院を退院したあとのリハビリは重要という話をしましたが、その中でも退院後1週間から1ヶ月で能力が低下するものもあるといわれています。 なので、退院後1週間空いてしまうと次のリハビリまでの引継ぎもなく1週間おいてしまうと、能力が下がる場合もあるし、 1か月後にはかなり下がってるという報告もあります。いまの現状なんですが、 だいたい7日以上次のリハビリもしくは次の運動に対して引き継げてないというものが7割、 入院した患者さんの中から7割の方が1週間以上遅れてるということがいわれてます。
図23:早期の継続
図23:早期の継続
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 なので、回復期病院を退院した場合は、できるかぎり早期、1週間以内にリハビリテーションの継続が必要だということです。よくいらっしゃるのが、 病院退院したからもう治ったとか、退院したからもういいやっていう風に、ちょっと楽観的にとらえている方もいるんですが、 先ほども言ったようにまだ4ヶ月間機能回復の猶予はあります。そかも1週間以内に何かをしていかないと能力がどんどん落ちていくことが言われています。 なので、回復期病院を退院した時に、そこで終わりと思わずに、いろいろそこからリハビリを続けていくことが重要なんだということを今日覚えて頂けたらいいかなと思います。
図24:いきいき百歳体操
図24:いきいき百歳体操
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 最後にですね、「いきいき百歳体操」を一緒にしてみましょう。・・・ちょっと動画を流したいんですが・・・ (動画がうまく再生されない。スタッフが駆け寄り、もしもの時の裏技を試している)

(事務局より)この「いきいき百歳体操」は、いろんな自治体が動画をアップされていますので、YouTubeなどの動画サイトで「いきいき百歳体操」で検索してみるとやり方がわかると思います。

 これはですね。「いきいき百歳体操」というのは、またあとで話が出てくるかと思うんですが、高知県から始まった体操です。
(なんとかぎこちなく再生が始まる)
 はじめ紹介程度に流していきます。
 この体操が呉市の事業でも取り組まれています。・・・まず深呼吸から。お隣の方にぶつからないようにやってみてください。 (会場の皆さんが立ち上がって体操を始めています)・・・動画が止まってしまいますね。(動画再生専用ソフトではないので、映像が時折止まってしまします) ・・・動画は気にせずやっていきましょう(笑)
 この中でも結構キツイ体操があるんですが、椅子からの立ち上がり運動をやってみましょう。(立ち上がり運動の動画を再生する)・・・ まだ座っておいてくださいね。・・・ゆっくりです。・・・はい、立ちましょう。ゆーっくりです。・・・1、・・・2、・・・3、・・・4、・・・5、 ・・・6、・・・7、・・・8。・・・この時にですね、早く立ち上がりすぎると足の力を使っていないので、(吉田さん中腰にかがんだまま)ゆっくり、 この位置を長く保つようにしてください。ちょっと浮いてるぐらい。1回一緒にやってみましょうか。
写真・吉田康兵さん  はい、(会場が一斉に動きます)・・・1、・・・2、止めてください・・・3、そっからゆっくり・・・4、下がります・・・5、・・・6、 (ギブアップ者が何人か…)まだ座らないでくださいね、ここで止めてくださいね。この辺が硬くなってますよね前側が。そこを鍛える運動です。 はい、これをまた動画を流してやっていきますが。(動画開始)いまのを踏まえて。・・・次から立ち上がりです。 (カウントを始めたところで動画が止まった)うまくきかないですね。なかなか。・・・まあ、という運動があります。これがですね、 10セットぐらい繰り返されます。10セットめには、僕たちもしんどいくらい負荷がかかっているので、変に重りとかを使わなくても、 こういった運動だけで筋力が上がってくる方もいらっしゃいますし、これを紹介されるときによくあるのが、90歳のはじめは全然歩けなかった高齢者の方が、 最終的に杖で歩けるようになる動画があったりします。これから多分耳にすることが多くなってくると思うので、こういった運動、 体操があるということは知っといてください。
 それでは私の発表を終わります。ありがとうございました。(拍手)

豊田:  ありがとうございました。いま伺った中で、脳卒中の運動麻痺とかの症状は半年ぐらいまでは元に戻る可能性があるので、 しっかりリハビリテーションをやらないともったいない。しかしながら、回復期病院でも入院できる日数がだんだん短くなってきているといったお話がありました。 これは地域の病院のベッド配分にも問題があるので、いま国では急性期のベッドを減らして回復期リハビリテーション病床を増やしていこうとか、 そういったコントロールをしているところですので、いまから地域の適正な配置が進んでいくのだろうと思います。
 ところで、しゃがんだり立ったりの運動ですが、結構キツイですね。
吉田:  キツイです。
豊田:  思えば、昔僕らは和式便所を普通に使っていましたよね。いまの子供たちは、あのしゃがむ姿勢が出来ない子が多いそうですね。 和式トイレ使わせると後ろに転んでしまうのです。我々知らないうちに下半身を鍛えられたのでしょうね(笑)。
 吉田先生の病院では、24時間、365日、もうコンビニエンスストアのようにリハビリテーションを頑張ってくれていますが、 やられるほうもたまには休みたいということはないのでしょうか(笑)。それだけ一生懸命やるべきなのでしょうか。
吉田: 写真・吉田康兵さん  そうですね。脳卒中の方は、ちょっと専門的な話になるんですが、脳の問題で手が動かないので、 脳が手の動かし方を忘れてるというイメージを持ってもらったらいいんですが、そういったときに、何回も何回も反復して練習することが大事といわれています。 これは運動学習という風に言われてるんですが。なので、病院に入ってくると例えばベッドから椅子までこうやって移りなおす運動。 こういったところも足の踏み替えもありますし、足の踏み替える位置とかもありますので、そういったことを何回も何回もやらされます。 なんでこんなことをやらされるんかということもよく言われたりするんですが、そういったことが重要だってことは知っておいていただけたら助かります。
豊田:  ありがとうございます。吉田先生も言われたように、骨折などのケガのリハビリテーションとは違うところがありますよね。脳が原因で手が動かない、 手が悪いわけじゃなくて、脳からの指令がうまくいっていないのですから、それを思い出させる。周りの脳が頑張るようにするという意味で反復練習や、 言葉は変ですけど「動け、動け」と念じながら、右左とも同じように動かすことで反対側の脳が活性化することもあるでしょう。
 あきらめるのはいつでもできることですので、是非ともリハビリテーションを継続されるのが一番大事かと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
吉田:  ありがとうございました。(拍手)
豊田:  それでは、いまから休憩時間を10分ぐらいとりますので、外の体操コーナーまだやっていますから、よろしかったら覗いてみてください。 3時15分から後半の2題を始めたいと思います。今日はトイレも寒いですからね、十分気をつけてください。
講演当時のものです)
 
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