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【講演4】 地域包括ケアシステムとは
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豊田: 豊田章宏  さて、いよいよ今日最後の演題になります。本日のメインのテーマでもあります「地域包括ケアシステム」についてのお話です。 地域○○という色々な言葉がたくさん出てきましたね。われわれも区別が難しいことがあるのですが、要はみんなで医療も介護も地域の住民も一緒になって、 いい地域を連携して作っていこうという取り組みです。広島県は他県と比べても先駆的で、県で独自に地域包括ケア推進センターという組織を持っています。 今日はそのセンターから、芳谷さんにお越しいただいております。包括ケアシステムとは一体どういう構想なのか、 それを作り上げて行くためにはどうすればいいのかなど、お話しいただければと思っております。それでは芳谷さん、よろしくお願いいたします。(拍手)

写真・芳谷伸二さん 芳谷伸二 さん
   広島県地域包括ケア推進センター 次長



 どうも、ありがとうございます。いまご紹介いただきました、広島県地域包括ケア推進センターの芳谷です。今日は「地域包括ケア」についてご紹介します。 今日も何度かこの言葉が出ましたが、「地域包括ケアとはこういうことか」ということを理解いただければと思います。 また併せて地域包括ケアを作っていくために大切な「地域リハビリテーションの力」についても、お配りしていますパンフレットを見ながらご紹介したいと思います。
図1:地域包括ケアシステム
図1:地域包括ケアシステム
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 「地域包括ケアシステム」とは、このスライドに書かせていただきましたように、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができる、 そういう人づくり、街づくり、コミュニティーづくりです。

図2:広島県の人口推計
図2:広島県の人口推計
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 どうして今、そのようなことを言うかといいますと、みなさんもご存知のように、高齢化が非常に速い勢いで進んでるからです。 全国的には団塊の世代が75歳を迎える2025年が注目されていますが、広島県では65歳以上の人口は2020年に向けて上昇していき、若い人の人口は、 どんどん少なくなっていきます。

図3:呉市の人口推計
図3:呉市の人口推計
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 呉市はすでに高齢者人口は増加のピークを迎えていて、今からは総人口が大きく減っていく時代を迎えます。

図4:広島県の高齢化予測
図4:広島県の高齢化予測
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 高齢化の予測では、広島県は2025年には3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上ということになります。

図5:呉市の高齢化予測
図5:呉市の高齢化予測
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 呉市は、実はもうすでに3人に1人が65歳以上で、2025年には75歳以上の人が5人に1人とか、4人に1人という時代になります。

図6:2025年に向けて
図6:2025年に向けて
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 これからは本当に長寿の時代です。長く生きると医療や介護の必要性も高まりますが、若い人の働く人の数が少なくなりますので、 これからは、医療や介護に従事する人もですが、働いて国の財源を支える人が少なくなります。このことは国を挙げての大きな課題になっています。
図7:医療・介護総合確保推進法
図7:医療・介護総合確保推進法
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 そのような状況の中で、今年の6月に医療・介護総合確保推進法という法律ができました。 これは急性期の医療から在宅の医療、介護まで、一連のサービスをそれぞれの地域できちんと確保できることを目的として、ひとつは医療の確保、 それからもうひとつは地域包括ケアシステムをつくることを目標として掲げられています。

図8:医療提供体制の構築
図8:医療提供体制の構築
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 医療の確保ということでは、地域の状況に合った必要な医療の種類と量、具体的には急性期の患者さんを受け入れる数がどれくらい必要か。 集中的なリハビリが必要な人を受け入れる数がどれくらい必要か、長期療養が必要な人を受け入れる数がどれくらい必要かを推計して、 今ある医療機関をどのように使えばそれが実現できるかを計画して組み直そうというものです。 これからはそれらをそれぞれの地域が責任をもって行うようにと取組みが始められたところです。
図9:地域包括ケアシステムの構築
図9:地域包括ケアシステムの構築
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 介護についても、今までの介護保険では全国一律、同じルールで行われてきましたが、それぞれ市町の状況には違いがあり、 重点的にやらなければならないことも違うので、市町が独自にできる地域支援事業の範囲が拡大されました。認知症の政策の充実もそのひとつ。 要支援者の介護予防も市町独自が計画して実施することになります。
 特別養護老人ホームの入所も、介護が必要になって在宅での生活が難しくなったときに利用できるように、対象の範囲も要介護3以上の人となります。
 また介護保険のサービスの自己負担額も、ある一定以上の所得のある人は1割負担から2割負担にすることも予定されています。
図10:包括ケアシステム
図9:地域包括ケアシステム
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 このように財源の基盤の整え、地域の状況にあった取り組みの枠組みができました。
 そして、地域包括ケアシステムとして「住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために」ということを目標に、中学校区をひとつの単位として、 医療と介護の専門職が協力しながら働ける環境づくり、地域住民や地域のお店や企業が助け合える環境づくり、 そしてみんなが健康に過ごせる仕組みを地域包括支援センターと市町が中心になって、みんなで協力しながら作っていく取り組みが進められています。

図11:自分らしく
図11:自分らしく
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 広島県内でもいろいろな取り組みがされています。たとえばある医療・介護の資源が非常に少ない地域でも、安心した生活を支えるために、医療介護の専門職の顔の見える関係を作り、 また地域の人もお互い様の意識で協力し合える関係を作っています。その中で、この町をどのような町にすればよいか、課題を検討したり、 ビジョンを話し合ったりして進められています。
 その町の強さを生かし、最後の最後まで自分たちの町でなんとか生活できる、そういう仕組みを作っていこうという取組みが、県内いろいろなところで始まっています。
 「住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために」は、そのような地域包括ケアシステムを作り、ここだったら安心だと思える仕組みがあることが大切ですが、  それと併せて自分自身も「自分の力」を発揮することが大切です。
図12:自分の力を発揮するために
図12:自分の力を発揮するために
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 ここで自分の力を発揮し、安心して暮らし続けるために準備しておきたいことを5つご紹介します。
 一つは自分の将来のことを考えておく、そしてそれを誰かに伝えておくことです。
 自分が病気になって最期を迎える時、どこでどのように迎えたいかを考えておき、誰かに伝えておくことはとても大切です。)
 自分らしい最期を迎えたいと思っていたけど、最後の最後で自分の気持ちを伝えられなかったということがあります。 自分はこれからをどう生きて、どういう最期を迎えたいかということをご家族や子供さんたちと話をしておくことは大切なことです。
 誰かに伝えておくということでは、ある地域では一人暮らしの人が救急車を呼ばないといけないようなことがあっても、 自分のことを正しくわかってもらえるように、緊急時に必要な情報をペットボトルに入れて冷蔵庫に入れておく取り組みが行われています。 1年に2人〜3人はこのペットボトルのおかげで早く病院に繋がっているそうです。
 また、認知症になり、自分の思いをうまく伝えられないために、周りから誤解されてしまうこともよくあります。 自分の思いをうまく伝えられなくても自分のことをわかってもらうことは大切です。自分のプロフィールや好きなこと、嫌いなことなどをまとめておいて、 いざというときに介護してくれる人に手渡すことができれば、自分の求める介護が受けられます。
 ですから今から少しずつ将来のことを考える時間を持ち、必要なことは誰かに伝えておきましょう。
 二つめは相談できる人を持つということです。
 今日はじめに話がありました地域包括支援センターは、どこに相談したらよいかわからない時に、まず相談してほしいところです。 これからどうしたらよいかわからない時にすごく力になります。
 医療の面ではかかりつけ医を持つことも大切です。自分の病気とうまく付き合っていくためにも、自分の病気のことをよく知ってくれている、 病気に関して気軽に相談できるかかりつけ医を持っておくことは大切です。
図13:健康寿命を伸ばす
図13:健康寿命を伸ばす
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 三つめは健康や介護、福祉についての知識を持つことです。しっかり勉強するところまででなくても、 今からそのようなことに対して少しずつ関心を持っておきましょう。
 四つめは、終の棲家を意識した住まいを考えておくことと、ある程度の経済的な貯えも大切です。  できれば自分の寿命のギリギリまで健康でありたいですよね。そのために健康寿命を伸ばすことは大切です。

写真:パンフレット
写真:パンフレット
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 「健康寿命を延ばすためにできること」ということで、みなさんに今日お配りしていますパンフレット「生活リハビリテーションの力」広島県地域包括ケア推進センターのホームページに紹介されています)を1枚開いてみてください。 ここの右側のページに、今日から始められることが載っていますのであとでチェックしてみてください。 今日は特に年々増えつつある大腿骨頚部骨折に気を付けるということについてご紹介します。

写真・芳谷伸二さん
図14:できることは何?
図14:できることは何?
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 健康寿命を伸ばすために、こけない生活をしようということです。こけてしりもちをつくと、すぐ足の付け根の骨を折ってしまう。
 ですからこけないための体操をしたり、しっかり栄養を取ることなどは大切です。そしてそれと併せてこけない環境づくりも大切です。 家の中にはこけそうなところがたくさんあります。これからの季節はこたつを使う季節になりますが、 めくれた敷布団やこたつのコードなどでも足がひっかかってしまいます。 こけない生活をするというのも、健康寿命を伸ばすために大切だという事を知っておいてください。

図15:閉じこもらない生活
図15:閉じこもらない生活
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 それでは、病気やけがをしてしまったらもうだめか。そんなことはありません。
 いろいろと予防をしても脳卒中になるかも知れません。転んで大腿骨頚部骨折がおきるかもしれません。病気やけがをして多少動きにくくなっても、 自分らしく元気で生活できます。
 よく脳卒中になって麻痺してしまったら何も出来ない。自分で動けないので、介護が必要になると思われているようですが、 脳卒中になっても自分らしく元気で生活されてる人はたくさんおられます。

写真:パンフレット
写真:パンフレット
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 その人たちは、パンフレットの3ページに書いてあります「閉じこもりを防ぐ」ことを意識して生活をされています。
 閉じこもった生活がよくないということは、みなさんはよくご存知だと思いますが、閉じこもった生活がどんなに怖いかについては、あまりご存じないと思います。
 以前、ある都市で閉じこもりの実態調査が行われたのですが、そこで分かったことは、 半年間あまり家から外へ出ない生活をしていると階段で2階に上がることが難しくなる。それくらいの体力低下がおきる。 それからもう半年家から外へ出ない生活をしていると、お風呂に入るときの浴槽のまたぎ越しや、玄関の上がりがまちを降りることなどが難しくなります。 そのような変化は家から外へ出ない生活を続けているとおきます。ですから「閉じこもらない生活」が、自分らしい生活を保つために大切なことで、 体力を維持するためには、1週間に3日以上は外に出る必要があるといわれています。
 それともうひとつ、けがや病気をして体が動きにくくなっても、生活の中に目標があることは大切です。
図16:車いすでマラソン参加
図16:車いすでマラソン参加
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 広島で11月に開催される国際平和マラソンに、最近はよく脳卒中になられた方が出場されてます。 車いすを麻痺のない側の手足で漕がれる人もありますし、電動の車椅子で出場される人もあります。 「あの大会に出る」ということが、1年のリハビリの目標になっている人もおられます。
 今日ここでご紹介するこの車椅子(製品名:プロファンド)ですが、これは自転車のペダルのようなものを踏んで車いすを動かします。 片足でもペダルを動かせます。自転車のような感覚で進み、方向は手元のレバーでコントロールします。 自転車ほどではないですが、ヒューッと漕げますので、すごく快適で気持ちよく動けます。 こういう車いすを使い自分の趣味として車いすでサイクリングを行い、1年後に平和マラソンに出るということはすごくいいリハビリにもなるんじゃないかと思います。
 そのように何かのイベントに参加する、何かの大会に出る、旅行に行くということはとてもよいリハビリの目標になります。
図17:車いす介助道具
図17:車いす介助道具
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 それともう一つ、今度は車いすを介助する道具(製品名:JINRIKI)をご紹介します。 車いすの先にリヤカーの柄のようなものをつける、その柄です。これ付けると車いすで移動するときにいつも前輪を浮かしておくことができるので、 地面に多少段差があっても動くことができます。もともとは災害非難用に開発されたようですが、旅行に行って紅葉狩りをするときに、これを付けて、 ちょうど人力車に乗せてもらってるような感じで紅葉狩りもできます。 こういう道具を活用して、いろいろなことが出来るということも知っておいていただきたいと思います。

図18:今の元気を保つために
図18:今の元気を保つために
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 最後になりますが、今リハビリを行っている人に、今の元気を保つために、これだけは知っておいてくださいということをご紹介します。
 まず今歩いている人はできれば歩き続けましょう。当たり前のことですが、ついついいろいろな場面で車椅子の誘いがきます。 「大変そうだからどうですか」「車椅子に乗りませんか」「デイサービスの玄関から送りましょうか」「トイレに行くのに車椅子に乗ったらどうですか」 など車椅子の誘いが来ます。せっかく言われるからとどっしりと座ると、どんどん動けなくなります。ですから歩ける人はぜひ歩き続けましょう。
 歩くのは難しいという人で立てる人は立ち続けましょう。面倒だとか、しんどいと思わずに、1回でも多く立ちましょう。 ある人は、ごはんをとぐことを自分の仕事として毎日実践されています。長く立っておれないので、何度も立ち上がる。 それがその人の足の力を強くしてくれて元気を回復されました。立つ力は多くの人が保つことができます。1回でも多く、面倒がらずに立ちましょう。
図19:排泄の自立
図19:排泄の自立
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 それも難しくなったら、座り続けましょう。座り続けていれば、寝たきりにはなりません。 「うちにはリハビリの療法士も来ないし、なかなか出来ない」と思われる人もありますが、まずは一日に三回の食事の時、トイレに行く時に座ってみてください。 食事と排泄で3時間から4時間は座ることができます。脳卒中になったから何も出来ない。 体が動きにくいからできないということではないということを知っておいていただきたいと思います。自分の力は目標があれば引き出されます。 少なくとも今の力は維持できるということです。
図20:地域の中での仕組みづくり
図20:地域の中での仕組みづくり
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 今、地域の中で暮らし続けるために、地域の中で介護予防の取組みやいろいろな社会参加を支える仕組み作りが行われています。 リハビリに関しても、地域リハビリテーション広域支援センターを中心に仕組みづくりを考えています。呉の地域では中国労災病院が指定されています。 地域の中でのリハビリを通じて、皆さんの元気づくりや社会参加を支える、そういう仕組みを作っていきます。
 地域包括ケアというと、行政がやるものとか、専門職がやるものとかと思ってしまいますが、これからは地域総ぐるみで進めていかないとできません。 私たちの町が住みやすい町になるよう、私たちができる、まずは今日ご紹介したことを一緒に取り組みながら、進めていきたいと思いますので、一緒に参加していただければと思います。
 どうぞよろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。(拍手)

豊田: 写真・豊田章宏  ありがとうございました。
 確かに、何か目標作っておかないとダメですね。私も先日、出張に行くために新幹線に遅れそうになって階段を走ったら、えらい息が切れたのを覚えています。 やっぱり歩くと走るは違いますね。だんだん年齢とともに体力が落ちてきますので。確かに旅行に行くことを目標に持って頑張るというのは意味があると思います。
 みなさんも、今日のお話を聞いて、是非とも何かひとつ目標を持って生活していただければありがたいですね。 例えば来年もこのフォーラムに来るぞというのも目標にしていただきたいものですね。お邪魔でなければまた案内葉書を送らせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 さて、今日は本当に分かりやすいお話ありがとうございました。もう一度芳谷さんに拍手をお願いいたします。(拍手)
芳谷:  どうもありがとうございました。
豊田:  時間が経つのははやいもので、今日のプログラムはこれで終わりになります。 今日は会場の外でセラバンド体操をやっていただいたのは広島県理学療法士会のボランティアでしたし、街の保健室は広島県看護協会のボランティアでした。 また会場の設営などは中国労災病院から多くのボランティアスタッフにお手伝いいただきました。 もう一度、ちょっと大きな拍手をお願いいただければ励みになります。(拍手)ありがとうございました。
 それではみなさん、お気をつけて、どうか転ばないように(笑)、お帰りいただきたいと思います。本当に長い時間ありがとうございました。
講演当時のものです)
 
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