痛みを和らげたい!肩関節

変形性肩関節症(へんけいせいかたかんせつしょう)とは?

肩の関節は腕の上腕骨(じょうわんこつ)、肩甲骨、鎖骨から成ります。上腕骨の球状の部分である上腕骨頭(じょうわんこっとう)と肩甲骨の受け皿状の部分である関節窩(かんせつか)から構成されるのが、肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)であり、これを一般的に肩関節と呼びます。滑らかに関節が動くように、関節の表面は軟骨で覆われています。この関節軟骨がすり減って、徐々に変形してしまった状態が変形性肩関節症です。


正常


変形性肩関節症

人工肩関節置換術


人工肩関節

変形性肩関節症に対して痛み止めの飲み薬や関節注射(ステロイド、ヒアルロン酸など)、リハビリテーションなどの保存治療を行っても効果がなく、痛みや運動障害のために日常生活に支障がある場合は手術が選択肢となります。軟骨のすり減り・関節の変形が強く、腱板が残っている方には人工肩関節置換術の適応があります。人工肩関節置換術は上腕骨頭を球状の金属に置き換え、肩甲骨関節窩の表面をプラスチックに置き換えることで、関節の滑らかな動きを再現する手術です。

腱板断裂性関節症


腱板断裂性関節症:
上腕骨頭が上方に移動して、関節が変形しています。

大きな腱板断裂(けんばんだんれつ)を長期間そのままにすると、上腕骨頭が上方に移動して上腕骨と肩甲骨の適合が正常ではなくなり関節が変形していきます。 このように腱板断裂に続発した変形性肩関節症を腱板断裂性関節症といいます。この状態にうまく適応して、痛みはなく肩も挙がることも多いため、必ず治療が必要なわけではありません。しかし、肩関節の痛みや肩が挙がらない症状が続き、痛み止めの飲み薬、関節注射、リハビリテーションなどの保存治療の効果がない場合は手術適応となります。しかし、前述の従来の人工肩関節置換術は腱板の機能が破綻した肩関節には適応ではありません。

リバース型人工肩関節置換術


リバース型人工肩関節

2014年から日本国内での使用が認可された比較的新しいリバース型人工関節置換術があります。従来の人工肩関節とは反対に上腕骨側を受け皿状に置き換え、肩甲骨関節側を半球状の金属に置き換えるため‘リバース型’と呼ばれます。球状の部分と受け皿の部分を逆転させることによって肩の回転中心が内側と下方に移動し、かつ三角筋(さんかくきん)が伸びることで、腱板がなくても三角筋の力だけで肩が挙がるようになります。このため腱板断裂性関節症や修復できないくらい大きな腱板断裂によって肩が挙がらない患者さんが対象となります。

術前から術後のながれ

手術の前日(手術前日が休日の場合は3日前)に入院し、全身麻酔についての説明やリハビリ室で術前評価を受けていただきます。
手術は全身麻酔で行い、肩の前方の皮膚を約10㎝切開します。手術時間は約2時間で、手術室に入ってから病室に戻るまでが3-4時間です。
手術中に出血した血液を回収・洗浄してご自身に戻す自己血輸血を行っています。それでも貧血が強い場合は他人の血液(同種血)の輸血が必要になることもあります。
術後は三角巾とバンドで腕を固定します。傷の中に血液がたまらないようにする管(ドレーン)を1~3日間入っていますが、手術翌日には歩行が可能になり、肘や手を動かすリハビリを開始します。術後1週間から肩の振り子運動(肩の力を抜いて身体を揺らして腕を振り子のように動かす運動)を開始して、術後3週間で三角巾を外して自動運動(自力による運動)を開始します。入院期間は3~4週間です。
退院後は外来でリハビリを行い、2~3ヶ月かけて日常生活に支障がないレベルに持って行きます。
人工関節には耐久性の問題があるため、重いものを持ち上げるのを繰り返すことや強い衝撃がかかるスポーツは避けるのが理想的です。