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【コラム】ペースメーカ患者さんが日常生活で安全に目的地に行くために~中央臨床工学部~
2023.12.08
皆様は下図の様な写真を目にしたことはありませんか?
この写真は電車、バス等の優先座席に掲示されてあるものです。こちらの写真中央上部と右下部に掲示されている『ハート・プラスマーク』のイラストをご覧になったことはあるかと思いますが、このマークは内部障がいをお持ちの方を表しています。その中には植え込み型心臓ペースメーカおよび植え込み型除細動器(以下心臓デバイス)を装着している方々も含まれ、携帯電話の電源を切るように優先座席付近ではルール化されています。
今回は心臓デバイスについてスポットを当てた日常生活(携帯電話・自家用車)における注意点を紹介させていただきます。
まず心臓デバイスに影響を及ぼす可能性がある主なものを以下に挙げさせてもらいます。
・通信機器(携帯電話、トランシーバなど) ・電位布団
・盗難防止ゲート ・電気自動車の充電器
・IH製品(電磁調理器、炊飯器など) ・マッサージチェア
・全自動麻雀卓 ・工業用電気機器 など
携帯電話についてですが2012年に第二世代(2G)のサービスが終了し、第3世代(3G)以降のサービスとなった事で心臓デバイスへの推奨隔離距離が2014年より22cmから15cmに変更となりました。それに伴い公共交通機関のルールも「優先座席付近では、携帯電話の電源をお切りください」から「優先座席付近では、混雑時には携帯電話の電源をお切りください」と変更となった地域もあります。JR西日本も2016年に変更されています。推奨隔離距離やルールは緩和傾向にありますが心臓デバイスを装着している方からすると携帯電話に対する心配が無くなったわけではないので改めて皆様にも周知して頂ければと思います。
続いて電気自動車使用における注意点について2点ほど紹介させていただきます。1点目は高速道路のサービスエリアや道の駅・商業施設に設置されている急速充電器の使用を控えること、2点目が普通充電器の場合も充電スタンドや充電ケーブルに密着するような体制をとらないといった点が挙げられています。
また自動車のスマートキーシステムでは心臓デバイス植え込み部をアンテナから22cm以上離すこと、駐車中の車に寄りかからないこと、携帯キーを車外に持ち出す状況で車内に残らないことが注意点として挙げられています。
2023年10月において日本のペースメーカ患者数は30~40万人とも報告されており、今年度の新規植え込み患者数は1~9月で34096人、当院のある広島県では861名で年々増加傾向にあると言われています。またペースメーカを必要とする患者さんの90%が65歳以上であり、現在の日本の65歳以上は3588万人(2023年現在)と65歳以上の約100人に1人がペースメーカを使用している事になります。その様な現状から心臓デバイスが意外と身近な存在になっているのが理解できるかと思います。我々中央臨床工学部は心臓デバイスの動作チェックを適宜行い、医療チーム一丸となり患者さんをサポートできるように取り組んでいます。
≪参考資料≫
1)加納 隆:心臓ペースメーカの電磁障害 第44回埼玉不整脈ペーシング研究会 vol.35 no.12 【2014】
2)細川 真紀 小田 強 鈴木 慎介 吾郷 美奈恵 山下 一也:島根県立中央病院におけるペースメーカ患者の背景 島根県中病医誌第42巻 【2016】
3)一般社団法人 日本不整脈デバイス工業会 :http://www.jadia.or.jp 【2023-11-27】
( 中央臨床工学部 )