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【コラム】令和6年(2024年)新年のご挨拶~栗栖院長~
2024.01.04
(独)労働者健康安全機構 中国労災病院長 栗栖 薫
皆さん、明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
昨年(2023年)5月8日に、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ感染症)は感染症法上、2類相当から5類に移行されました。しかし、感染が治まったわけではなく、ウイルスの弱毒化はあるものの強い感染力のため、多くの感染者が出て対応を続けてきました。また、この数年間極端に減っていたインフルエンザ感染が昨年から猛威を振るい、中にはコロナ感染とインフルエンザの同時感染も経験しました。しかし何とか普段の日常生活を取り戻し、円安の影響もあってかコロナ前を越える勢いで海外からの観光客が来日することとなりました。
一方で、人類として最も愚かな行動の一つである戦争が治まるどころか、新たな地域で勃発し、こちらもいつ終戦を迎えるのか2023年末の段階ではわかっていません。2023年を表す漢字として一般では、税、が取り上げられました。医師専用のサイトでの投稿では、1番が戦、2番が税、3番が争、でした。「戦」や「争」に込められている思いは、勿論ロシアのウクライナ侵攻による戦争、ハマスとイスラエルとの戦争がありますが、3年以上にも及ぶコロナ感染との戦いの意味もありました。また、いい意味での「戦」はWBCにおける全日本チームの見事な戦いぶりを表すこととなり、大いに国民の心を揺さぶったものとなりました。
当院は、昨年は評価の年でもありました。5年に一度の病院機能評価を7月に受けました。ほぼ1年をかけ全職員が関係する部門や領域において必要な書類や資料を準備し、また面接や現場視察における対応などシミュレーションを行い、新しい評価基準での受審となりました。その結果は概ね好評価でしたが一部の指摘があり、改善策を提示し最終判断を待っているところです。9月には、(独)労働者健康安全機構の監事往査にて当院の運営・経営状況の評価を頂き、10月には一昨年に受審して資格を得た卒後臨床研修評価機構(JCEP)の中間評価が行われ、正式にその資格が計4年間(2025年㋈末まで)認められました。11月には中四国厚生局による施設基準等に関わる適時調査を受けました。コロナ禍で書類審査が主体であった昨年までの3年間に比べ、いわゆる現地調査が主体になった年でもありました。このように我々は、国民の皆さんに安定的に高い医療の質を担保しながら対応できるよう、医療のプロフェッショナルの自覚を持って評価受審と改善に取り組んでいます。
臨床面でも大きな進歩の年でもありました。高度専門的医療の一環である、内視鏡検査・治療センターにおいて、大腸の内視鏡検査が紹介を受けたその日に可能となりました。また、2022年10月から始まった内視鏡手術支援ロボットhinotori™使用による手術が、まず前立腺癌に対する前立腺摘除術から開始されました。順調に進み、より精緻で安全な手術が確実に行える体制と実績を生み出しました。また、昨年10月から直腸癌のロボット手術も開始となり、大腸全体の手術はhinotori™で行うところまで進んできました。呉圏域におけるロボット手術の先駆けとなり、地域の皆様に広島や福山まで行かなくてもその恩恵をうけることができるようになりました。
救急医療においてもコロナ禍でヒトの移動が制限され交通事故などによる高エネルギー外傷が減少していましたが、家庭や施設で転倒することにより骨折の患者さんが多く発生しました。その結果、多くの骨折患者さんを診療させていただいています。また、動かないことにより高血圧の管理が難しくなり高血圧による心不全の患者さんも増加しました。そのような患者さんを乗せて救急車が、一日平均で約10台来ますが、その応需率(救急車で来院された患者さんを受け入れて診療する率)は90%を超え、呉医療圏のみならず全国的にみても非常に高い水準を維持しています。「断らない救急受け入れ」を目指し、職員が夫々の職務において協力し対応しています。
周産期医療に関係して新しい臨床研究が始まりました。痩せ思考が強い最近の女性から低体重で産まれてくる新生児が多く、G7の中でも出生時体重は日本が最も低いというデータがあります。そこで、広島大学医学部の公衆衛生学と共同で、「勤労女性の妊娠時の食・生活習慣に関する時間栄養学的研究」を始めました。研究代表者は当院副院長・産婦人科主任部長の藤原久也 先生です。基本は時間栄養学という新しい捉え方に基づくものです。妊婦さんの栄養状態がよくなって元気で丈夫な赤ちゃんが生まれることが楽しみです。加えて広島県に2名しかいない母性看護専門看護師による育児外来を行い、妊娠・分娩・育児と仕事の両立を支援しています。
当院は労働者健康安全機構の病院ですので、まずは働く人のために、ということが大きな観点になります。勤労者が働きながらきちんと治療が継続出来て、元の仕事に復帰できることを目指しています。これを両立支援(仕事と治療の両立という意味です)と呼んでいます。これも入院患者さんで職に就かれている方々、お一人お一人に支援の件を説明し、医療ソーシャルワーカー(MSW)が中心となって支援していきます。
コロナ禍で色々な制限がありましたが、コロナ禍であっても進めなければならないこと、コロナ禍だからこそできることをこの数年実践してまいりました。とびしま四島を含む呉市東部、東広島市南部(黒瀬町、安芸津町)、竹原市の住民の方々(背景人口は約15万人)において、地元の皆さんに信用される中核病院としての使命を職員一人一人が自覚し、対応を心掛けています。本年こそ、平和で落ち着いた1年を過ごせますように祈念いたしまして、年頭のご挨拶にさせていただきます。
繰り返しになりますが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。